《 4月29日 》

I.R.C(5800m) 〜 A.B.C(6400m)

   4月29日、昨日のオン・デマンド方式の後遺症か、鼻腔が痛くて話をするのが辛い。 この方式は確かに効率は良いが、鼻の粘膜の弱い私には合っていないように思われた。 今日は昨日とほぼ同じ標高差(約600m)でI.R.CからA.B.Cへ向かうが、高度が増すため昨日よりも大変なアルバイトを強いられることが想定された。

   昨日よりも早く8時にI.R.Cを出発。 相変わらず小さなアップダウンを繰り返しながらモレーンの背の踏み跡を辿る。 夜中に酸素を吸った割には足取りが重くてもどかしいが、昨日と同じように1時間に1回程度の休憩を取りながらスローペースで進む。 標高6000mを超えるとまるで迷路のような回廊の両脇に巨大なブロック氷河が見られた。 今日も良い天気で有り難い。 行動食のおにぎりを食べた後はどんどんペースが落ちると思われたが、体感的にはそれほどペースダウンすることはなかった。 それでも私達の到着があまりにも遅いので、シェルパ達がA.B.Cからミルクティーが入ったティーポットを携えて迎えにきてくれた。 そこからまだ2ピッチほどを要して待望のA.B.Cに4時前に着いた。


I.R.CからA.B.Cへ


I.R.Cから見たエベレスト


8時にI.R.Cを出発する


I.R.CからA.B.Cへ


1時間に1回程度の休憩を取りながらスローペースで進む


まるで迷路のような回廊の両脇に巨大なブロック氷河が見られた


I.R.CからA.B.Cへ


シェルパ達がA.B.Cからティーポットを携えて迎えにきてくれた


I.R.CからA.B.Cへ


待望のA.B.Cに4時前に着いた


   A.B.Cはそれなりに広くて平らなテントサイトがあると思っていたが、意外にも各隊が凸凹の地形に工夫を凝らしてテントを設営し、私達のテントサイトはどちらかといえば手前の方だった。 さっそくキッチンスタッフが作ってくれたララ・ヌードルをダイニングテントで頬張る。 環境抜群のB.Cほどではないが、A.B.Cのダイニングテントは一昔前のB.Cと同じほど広く快適だった。 個人用テントはドーム型になったが、建付けも良くとても快適そうだった。 朝方の鼻腔の痛みは不思議と治まり、夕食は美味しく食べられた。

   夜は疲労回復のためオン・デマンド方式に代えて酸素マスクで酸素を毎分0.5L吸って寝たが、寝始めてから間もなく鼻の中の粘膜がそそけ立ち、鼻で呼吸することが出来なくなってしまった。 口で呼吸することは出来たが、これが上部キャンプで起きたらゾッとするし、命の危険すら感じる。 未明になってから鼻がもげるほど勢いよく何度も鼻をかむと、おびただしい出血を伴ってパチンコ玉ほどの鼻糞が両方の鼻から立て続けに飛び出した。 その直後の鼻の空気の通りは、未だかつて経験したことのないほどの快感だった。


A.B.Cのダイニングテント


ララ・ヌードル


A.B.Cの個人用テント


個人用テントの内部


オン・デマンド方式に代えて酸素マスクで酸素を吸って寝た


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エベレスト