《 4月20日 》

シガール(4320m) ⇒ B.C(5150m)

   4月20日、前日までの傾向から今までで一番良い眠りになると思っていたが、夕食の食べ過ぎと便秘気味なお腹の調子で眠りが浅く、朝方まで殆ど熟睡することが出来なかった。 これだけの環境が用意されていながら、一週間で体調を万全にしてB.C入りすることが出来なかったことが情けない。  起床後のSPO2と脈拍は88と70で、再び脈が高くなってしまった。

   今日はいよいよB.C入りだ。 ロシア隊よりも一足早く9時半にホテルを出発する。 時計を現地の時間に近いネパールの時間に合わせて2時間15分戻す。 すぐに検問所があり、車から降りてパスポートのチェックを受ける。 間もなくパン・ラ(峠)越えの道へ左折すると国立公園の入口の大きな門があり、ここから緩やかな九十九折れの道となったが、この道は2008年の北京オリンピックの時に聖火ランナーが走った道ということで、舗装の状態がとても良かった。 B.Cと同じ標高のパン・ラ(峠/5150m)はエベレストを始め、チョ・オユーなどの山々が望める展望台でもあるが、あいにく山々には雲が纏わりつき、本命のエベレストを望むことが出来なかった。


シガール(Shelkar)からエベレストB.Cへ


朝食のコンチネンタル・ブレックファースト


チョモランマ国立公園の入口のゲート


B.Cと同じ標高のパン・ラ(峠/5150m)


   峠からは麓のタシゾンの集落(4170m)まで標高差で1000mほどを一気に下る。 タシゾンから先も所々に小さな集落があり、再び緩やかに高度を上げていくと、新しく出来た検問所がありパスポートのチェックを受ける。 外国人観光客の一般ビザで入れるリミットとなるロンボク寺からは、ようやく雲間に神々しいエベレストが微かに望まれた。 ロンボク寺には立ち寄らず、なおも続く舗装された道をしばらく走ると、九十九折れの急坂になった所から未舗装となり、1時に待望のエベレストB.Cに着いた。 GPSでの標高は5148mだった。 B.Cは予想以上に広かったが、それ以上にテントサイトのすぐ脇まで車で乗り付けたことに違和感を覚えた。


ロンボク寺


エベレストB.Cの入口


待望のエベレストB.Cに着く


   さっそく大所帯のK&P社のテントサイトを管理しているマネージャーのディンリと私達の隊のサーダーのミンマ、そしてキッチンスタッフからの歓迎を受ける。 これまでお世話になった案内役のクサンとドライバーのテンジンに別れを告げ、ディンリからダイニングテント・個人用テント・トイレ・シャワールームなどの使い方を教えてもらう。 キッチンテントには昨年の秋のアマ・ダブラムの時にお世話になったアンプルバの顔があった。 キッチンスタッフは他にタシとプチリというチベット人が二人いた。


案内役のクサンとドライバーのテンジンに別れを告げる


マネージャーのディンリ(右)とサーダーのミンマ(左)


コックのアンプルバ


シャワールーム


トイレテント


トイレ


   これから1か月ほど滞在することになるB.Cの個人用テントは、一般的なドーム型ではなくより広く天井が高いハウス型で、内部の広さは4畳ほどで前室も2畳ほどあり、とても快適そうだった。 室内には絨毯が敷かれ、ベッドのマットレスは10センチほどの厚みがあり、電気ストーブも置かれていた。 天井には電灯があり、電気のコンセントも備わっていたので、テントではなく部屋と呼ぶのがふさわしい感じだ。 断熱素材で覆われた天井の高いドーム型のダイニングテント(ルーム)には絨毯が敷かれ、二重になっている入口には洗面台も備わっていた。 年々エベレストへの登山者が増えているのは、こうした環境が整っていることも大きな要因だろう。


B.Cの個人用テント


個人用テント(部屋)の内部


電気ストーブ


ドーム型のダイニングテント(ルーム)


ダイニングルームの内部


ダイニングルームの入口の洗面台


   昼食はララ・ヌードル(インスタントラーメン)と野菜炒めなどで、まだ下界の酸素が体内に残っていたため、美味しく食べられた。 昼食後は先にB.C入りしていた会長のカーリーから、睡眠酸素の“オン・デマンド方式”による器具の使い方についてレクチャーを受ける。 オン・デマンド方式とは、医療用には一般的に用いられている方式で、酸素マスクや混合器を使わずに酸素ボンベから特殊な装置を介して直接鼻にチューブを入れるため、毎分0.5Lの酸素でもその倍の1L以上の吸入が出来るとのことだった。

   昼食後は陸路で運ばれてきた荷物の整理と部屋のレイアウトを行う。 予想どおり少しずつ頭痛が始まり、SPO2と脈拍は84と73だったが、ラサに着いた時よりも少し重い感じがした。 このままずっと悪い方向に行くと思ったが、しばらくすると頭痛は徐々に回復し、夕方には奇跡的に頭痛がなくなった。 夕食前にようやく神々しいエベレストの山頂がはっきり見えて嬉しかった。 夕食はトンカツとほうれん草のおひたしなどで、見た目どおりとても美味しかったが、まだ初日なので腹八分目に抑えた。

   夕食後は部屋で倉岡さんに酸素ボンベとオン・デマンド用の装置のセッティングをしてもらい、毎分0.5Lのエキストラの酸素を吸ってみると、数分でSPO2が90台まで上がり、その効果が絶大であることが分かった。


昼食の野菜炒め


カーリーからオン・デマンド方式による器具の使い方についてレクチャーを受ける


夕食前にようやく神々しいエベレストの山頂がはっきり見えた


夕食のトンカツ


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