《 10月24日 》

パンボチェ( 3 9 3 0 m ) 〜 B.C( 4 6 0 0 m )

   10月24日、今日も午後から天気が下り坂という予報が嘘のような快晴の天気だ。 起床前のSPO2は86、脈拍は56で体調は相変わらず良かったが、寒さのせいか鼻が少し詰まっていた。 今日はいよいよアマ・ダブラムのB.Cへ入る。 

   朝食を食べて8時過ぎにロッジを出発。 エベレスト街道から標識のない分岐を右に曲り、イムジャ・コーラ(川)沿いの道を緩やかに河原まで下って古い鉄製の橋で川を渡る。 対岸の道はB.Cの近くに新しいロッジが出来たためか、道幅が拡幅されて歩き易くなっていた。 B.Cへの道の記憶は新しく、5年間の歳月を全く感じない。 パンボチェの村を背後に見ながら急斜面をひと登りすると、アマ・ダブラムの裾野の広い草原に出た。 草原からはこれから辿る前方の広い尾根の途中に団体のトレッカーの姿が見えた。 アマ・ダブラムのB.Cを訪ね、今日は新しいロッジに泊まるのだろうか。 沢山の踏み跡が交錯する広い尾根の末端まで登ると、眼前にアマ・ダブラムが遮るものなく望まれるようになり一息入れる。 団体のトレッカーの後に続き勾配の緩い尾根を登っていくと再び広い草原に出た。 草原からはプモ・リが見えるようになり、エベレストの山頂も近くなった。 残念ながら初めて訪れた前回のような感動は得られなかったが、次第に近づいてくる神々しいアマ・ダブラムの写真を何枚も撮り続けた。


パンボチェからアマ・ダブラムへ


パンボチェからアマ・ダブラムのB.Cへ


イムジャ・コーラ(川)沿いの道を緩やかに河原まで下る


対岸の道は道幅が拡幅されて歩き易くなっていた


広い尾根の末端から見たアマ・ダブラム


草原から見たエベレストの山頂(中央奥)とローツェ(右)


草原から見たプモ・リ


草原から見たアマ・ダブラム


草原から見たタウツェ


   昨日の順応の効果があったのか、予定よりも早く11時過ぎに待望のB.Cに着いた。 前回はB.Cにかなり残雪があったが、今回は一片の雪もなくC.1へのルートも黒々としていた。 各隊のテントの数は前回と比べて明らかに少なく、各隊が順調にスケジュールをこなしていることが分かった。 私達のエージェントのテントサイトはB.Cの中ほどの小沢を渡った先ですぐに分かった。 今回は小型のダイニングテントを同じエージェントのスイス隊の4人とシェアすることになっていたが、スイス隊は昨日からアタックに入ったということで、彼らがB.Cに戻ってくるまでは私達だけで使うことになった。 こういうシステムが確立され、またそれを倉岡さんやエージェントが巧みにアレンジしているため、今回のようなマンツーマンの登山が可能になったということだ。 ちなみにキッチンはさらにアメリカ隊ともシェアしているとのこと。 ダイニングテントは年々豪華になり、床にはウレタンマットのみならず絨毯も敷かれ、前室の入口には洗面台があった。 コックはアンプルバという名前で、日本食がとても上手いとのことだった。 お楽しみの昼食は椎茸が入った蕎麦、インゲンとカリフラワーの胡麻和え、フライドポテト、生ハム、缶詰の鰯でどれもとても美味しかった。

   昼食後は個人用テントにカトマンドゥから直送された荷物を合わせて搬入し、荷物の整理とレイアウトをする。 SPO2は84、脈拍は67で、初めて軽い頭痛がした。 少し昼寝をしてからダイニングテントに行くと、ガスストーブで暖かいテントの中に私と同じ年代の女性が読書をしていた。 挨拶を交わすと彼女はイングリッドという名前のドイツ人で、スイス隊のメンバーの一人であることが分かった。 間もなく倉岡さんがテントに入ってくると、意外にも二人は顔見知りのようだった。 倉岡さんから、イングリッドは外科医で、今年のエベレストで同じエージェントの隊員としてセブンサミッツを達成されたという紹介があった。 倉岡さんがイングリッドに話を聞くと、スイス隊はB.Cに来る前にゴーキョのトレッキングやロブチェへの登山を比較的短期間で行ったため、メンバーの中で一番年上の彼女は消耗してしまい、今回のアタックではC.2への途中でギブアップを余儀なくされたということだった。 昼過ぎにルクラで別れた同じエージェントのアメリカ隊が到着した。

   夕食はトンカツに豆腐とほうれん草のおひたし、生野菜、そしてワカメの味噌汁で、デザートは缶詰の桃という豪華なものだった。 ご飯は日本の米ではないが、とても丁寧に炊きあげられていて、コックのアンプルバの腕前と料理に対する愛情が分かった。 もちろん、スイス隊にも専属のコックがいるためイングリッドは洋食だ。 トンカツを勧めると、美味しいと言いながら食べていた。 順応がほぼ出来ていたので、抑え気味にすることなくお腹一杯になるまで食べた。 夕食後のSPO2は78、脈拍は64だった。


B.Cから見たアマ・ダブラム


私達のエージェントのテントサイトはB.Cの中ほどの小沢を渡った先にあった


ダイニングテント


個人用テント


個人用テントの内部


同じエージェントのアメリカ隊


昼食の椎茸が入った蕎麦


ダイニングテントの内部


夕食のトンカツ


B A C K  ←  《 10月23日 》

N E X T  ⇒  《 10月25日 》

アマ・ダブラム