《 8月19日 》

C.1(4400m)

   8月19日、登頂を逃した悔しさで一晩中眠れないかと思ったが、色々と余計なことを考えているうちに朝まで一度も目覚めることなく熟睡した。 早朝から予報よりも良い快晴の天気で、純白のレーニン・ピークが澄みきった青空に良く映える。 稜線には雪煙は見られず、強い風は吹いていないようで、奇しくも一昨年のハン・テングリの時と全く同じように、アタック日が滞在中で一番良い天気となった。 再び悔しさや空しさがこみ上げてきたが、これは運命だと受け容れるしかない。 昨日とは逆にレーニン・ピークの写真を何枚も何枚も撮り続けた。 朝食後のSPO2と脈拍は87と58で、肉体的な疲労感は全くなかった。  時間はたっぷりあるので、シュラフを干したり靴を洗ったりしながら、いつもはB.Cでやるような登山用品の細かい片付けや整理をする。 そろそろシーズンが終了になるため、エージェントのスタッフ達も使われていないテントを解体したりして撤収の方向に動いていた。 昼を過ぎても雲一つない快晴の天気が続いていたので、私達の隊の登頂は間違いないと思われた。

   夕方の昼寝から目覚め、そろそろ7時の夕食の時間になろうとした時、隣の平岡さんの個人用テントから何やらゴソゴソと音が聞こえてきた。 テント荒らしかと思い、声を掛けながらテントを開けると、当の平岡さんの姿があったので驚いた。 登頂後にC.1に下ってくるには早過ぎるし、この天気で登頂していないことは考えられない。 不思議に思いつつ話を伺うと、昨日と同じように夜中の風が強く、今朝5時半にようやくアタックを開始したが、結局強い風は吹き止まず、2時間ほど登ったところで登頂を断念しC.3に引き返したとのことだった。 田路さん達はまだこれからビシュヌと一緒に下ってくるとのことで、氷河の取り付きに向かって迎えに行くことにした。 間もなく出会った田路さんと山本さんを労い、さらに歩いていくと、ビシュヌと一緒にこちらに向かってくる工藤さんの姿が見えた。 登頂こそしていないものの、6100mのC.3に2泊したことで消耗している感じが見て取れた。 思いもよらぬことで、皆と夕食の席を共にすることになった。 予備日はまだ3日残っているが、この状況で再度アタックすることは事実上無理なので、今回のレーニン・ピークへの登頂は隊としても不成功に終わった。


C.1から見た早朝のレーニン・ピーク


C.1から見たラズレルヤナ・ピーク


昼を過ぎても雲一つない快晴の天気が続いていた


昼食のデザートのスイカ


C.3から下山してきた田路さんと山本さん


C.3から下山してきた工藤さんとビシュヌ


皆と夕食の席を共にする


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