《 9月28日 》

C.1 ( 6 4 0 0 m ) ⇒ C.2 ( 7 1 3 0 m )

   9月28日、5時半に起床。 起床前のSPO2と脈拍は67と67だった。 昨夜は2時間毎に尿意で目が覚めたものの、眠りが浅かったせいか不思議と頭痛はなかった。 晴れてはいるが天気は昨日よりも少し悪く、風も少し吹いていた。 朝食のカップ麺を食べ、8時の出発予定よりも少し遅くC.1を出発。 今日は明後日の山頂アタックに向けてC.2(7000m)に向かう。 

   慣れない酸素ボンベとマスクの装着には時間が掛かるため、平岡さんを先頭に柴田さんとるみちゃんは少し前に出発していった。 C.1の各隊もほぼ同じ時間帯に出発していく。 C.2までの所要時間を6時間と予想し、酸素の流量を3リッターに設定する。 他の荷物もそれなりに重いので、酸素ボンベの重さはそれほど気にならなかった。 C.1から酸素を吸って登っている私の姿は、各隊のメンバーからは奇異に見られたに違いない。 度重なる降雪にもかかわらず、トレースの状態は前回と変わらなかった。 

   出発してすぐには酸素の効果は実感出来なかったが、普通のスピードで歩いてさえいれば息が切れるということはなく、何よりも絶大な安心感があった。 出発して間もなくるみちゃんと一緒に行動していた平岡さんに追いついたので、自分では気が付かないが、いつもより速いペースで登っていることが分かった。 るみちゃん達を追い越すと、今度は柴田さんの後ろ姿も視野に入ってきた。 最初の平坦地で休憩していた柴田さんに追いついたが、風が少し強くなってきたので休まず先へ進んだ。 快速の柴田さんを追い越したことで登高ペースが客観的にも速いことが分かり、酸素の効果をさらに実感したが、一方で天気が悪いとザックを下ろすことはもちろん、酸素マスクを外して飲んだり食べたりすることが煩わしく、ついつい我慢してしまうという欠点も見えてきた。 前回はC.1から3時間近くを要した6700m弱の二つ目の平坦地に2時間足らずで着いた。 

   平坦地でザックを下ろして少し休憩し、眼前のセラック帯を左から迂回しながら登る。 ルートは急斜面のみならず、フィックスロープの張り方が悪く非常に登りにくい。 あともう少しでセラック帯の上に出られそうになった所で、下降用の別のフィックスロープをくぐったところ、レギュレターがロープと奇妙に絡んでしまい、自力でロープを外すことが出来なくなってしまった。 仕方がないので後ろから登ってくる人を待ってロープを外してもらったが、この時のトラウマが山頂アタックの時に影響することになった。 トラブルがあったこともあり、セラック帯の通過には1時間近くを要した。 セラック帯の先は予想どおり緩やかで広い斜面となっていたが、天気は上の方ほど悪くなり、C.2付近はホアイトアウトしていた。


C.1 ⇒ C.2


C.1から酸素を吸ってC.2へ登る


C.1の各隊もほぼ同じ時間帯に出発していった


C.1の上から見たC.1


出発して間もなくるみちゃんと一緒に行動していた平岡さんに追いつく


先行する柴田さん(中央)


最初の平坦地から見た山頂(右上)とC.2(中央上)


最初の平坦地で休憩していた柴田さんに追いつく


6700m弱の二つ目の平坦地


セラック帯を左から迂回しながら登る


セラック帯の上に出た所


セラック帯の先は予想どおり緩やかで広い斜面となっていた


   核心部のセラック帯を登り終えたので少し休もうと思ったが、相変らず風が収まらないので休まずに歩き続けた。 しばらく緩やかな斜面を登っていくと、キャンプ地として相応しいかなり広い平坦地があり、テントが3張あった。 もしかしたらここがC.2なのかと思ったが、高度計の数字はまだ6800mを少し超えたばかりだった。 平坦地の周辺にはフィックスロープがなく、赤い小さな旗が所々に立てられているだけだった。 風が運んでくる雪が先行者のトレースを消してしまうため思わぬラッセルを強いられ、あらためて酸素のありがたみを痛感した。 遥か前方に点々と見える先行者の姿と微かに雪面に残る足跡だけを頼りに黙々と登り続ける。 ルートのすぐ脇にはクレバスがあるが、フィックスロープは所々で途切れていたので怖かった。 後ろから登ってくる人影も見えなくなり、今後の天気次第では無事C.2に辿り着けるのか心配になってきたので、酸素の流量を3リッターから2リッターに減らす。 予想どおり上に行けば行くほど視界が悪くなり、とうとう完全にホワイトアウトしてしまった。 高度計の数字がすでに7000mを超えていたのが唯一の救いだ。 しばらくすると、雲の切れ目からC.2と思われる平坦地が見え、C.1から5時間半を要して1時半過ぎに待望のC.2に着いた。 天気が悪いので留守番のスタッフもテントの中にいた。

   C.2のテントの数はC.1の半分ほどしかなく、まだこれから建設する隊が多いようだ。 途中で殆ど休憩せずに登り続けてきたので、テントの中で行動食を頬張りながらゆっくり寛ぐ。 C.2に着いてから酸素を吸わないでいると、SPO2と脈拍は68と76になった。 柴田さんは私より1時間半ほど遅い3時に、平岡さんに続いてるみちゃんも3時半に無時C.2に着いた。 高度計の数字は7060m、柴田さんのGPSでは7130mだった。 水作りを始めると今日の睡眠用の酸素がスタッフから届けられた。 風は一向に収まらず、テントがバタついて落ち着かない。

   夕方になって平岡さんから、明日の天気も今日と同じようなので、明日はC.2に滞在し、明後日ここから一気に山頂を目指すという説明があった。 C.2からC.3の間で吸う酸素の量は当初3リッターだったが、スケジュールの変更に伴い、明後日のアタック日はC.2からC.3の間もC.3から山頂までの間と同じ4リッターの酸素を吸えることになったが、逆に今日と明日の睡眠用として吸う酸素の量を予定していた1リッターから0.5リッターに減らすことになった。 夕食はフリーズドライの味噌汁にカレーと白米だったが、残念ながら一人前を完食することが出来なかった。


6800mを少し超えた所にキャンプ地として相応しい広い平坦地があり、テントが3張あった


平坦地の周辺にはフィックスロープがなく、赤い小さな旗が所々に立てられているだけだった


遥か前方に点々と見える先行者の姿と微かに雪面に残る足跡だけを頼りに登る


上に行けば行くほど視界が悪くなった


C.2直下では完全にホワイトアウトしてしまった


C.1から5時間半を要して1時半過ぎに待望のC.2に着いた


C.2のテントの数はC.1の半分ほどしかなかった


C.2のテントサイト


C.2から見た山頂方面


C.2に着いたるみちゃん


睡眠用の酸素を吸う柴田さん


夕食のフリーズドライの味噌汁とカレーと白米


B A C K  ←  《 9月27日 》

N E X T  ⇒  《 9月29日 》


チ ョ ・ オ ユ ー    ・    山 行 の 報 告    ・    T O P