《 8月3日 》

C.1(4700m) 〜 C.2(5450m)

   8月3日、皆よりも少し早く6時に起床。 B.Cを出発する前は悪天候という予報だったが、珍しく早朝から青空を背景にハン・テングリの頂が見え、今のところ雨や雪の心配はなさそうだ。 カップ蕎麦を食べ、ゆっくり準備を整えて8時過ぎにC.1を出発する。 疲れもなく体調は良いはずだったが、何となく足が重たい感じがしたので、田路さんに先行してもらう。 しばらくすると体が温まって血行も良くなり、足が上がるようになってきたので安堵した。

   前回の順応ステージでのルートの記憶は新しく、いくつかの難所を通過するコツも学習出来ているので精神的な不安はないが、C.2までは殆どが急斜面で足場の悪いフィックスロープの登攀なので、ゆっくり登っても手足の疲れと体力の消耗を強いられる。 また、一昨日からの雨や雪で濡れたフィックスロープを掴むので、一組しかない予備のオーバー手袋とその下のインナー手袋まで濡れてしまう。 唯一好天が予想されている6日にアタック日の照準を合わせているためか、私達以外にC.1からC.2に登る人影は全くなかった。 次第に先行する田路さんとのペースが合わなくなってきたので、途中にある唯一の休憩ポイントで田路さんと入れ替わって先行する。 

   最後の岩場を登り、2時前に待望のC.2に這い上がる。 前回はまるでアタック日のように疲れ果ててしまったが、順応が進んだことで今日はそれなりの労力で登れた。 また、前回は7時間近くを要したC.1からC.2の間を、今日は6時間以内で登ることが出来た。 20センチほど積雪が増したC.2には前回よりも多くのテントの花が咲いていたが、各隊ともここを一番の拠点としている(中間点なので)ため、半分以上は無人で、最終キャンプ地のC.3に上がって停滞しているか、B.Cで静養しているようだった。 平岡さんが数えたテントの数は23張だったとのこと。 C.2から見たチャパエフ・ノースへのトレースは相変わらず薄かった。 C.1と同様にテントが設営してあるので楽だったが、テントの真ん中が凹んでいたので、生地の上から足で踏んだり手で叩いたりして整地するのに苦労した。 意外にも田路さんは私よりも1時間ほど後にテントに着いた。 4時になるとまたいつものように小雪が舞ってきた。 

   平岡さんにお湯を作ってもらい、水分の補給に努めていると、到着後は80台だった脈拍もようやく下がり、夕方にはSPO2と脈拍は91と65で数値だけ異常に良くなったが、これが後で仇になるとは知る由もなかった。 夕食はフリーズドライの白米と鯖の水煮の缶詰だったが、味もさることながら美味しく食べれたことが嬉しかった。 順応は前回よりも着実に進んでいることを実感し、後は明日からの天気次第だと思えた。 

   夕食後はようやくハン・テングリの頂が間近に見えるようになり、ここぞとばかり何枚も写真を撮った。 セルゲイから、明日は6時に起床して7時に出発するとの指示があった。 また、C.2の私達のテントをC.3に上げるため、明日は私達の寝袋を担げないという話しがあり、C.3用に用意したテントをC.2に持ってこなかったことがこの時点で判明した。 今回は7泊8日と異例の長丁場となってしまった(当初の計画では5泊6日)ことがその要因かもしれない。

   就寝前のSPO2は80台半ばで嬉しかったが、就寝後にふくらはぎと足先が冷たくなり、寝袋のファスナーがまた壊れたのかと疑いたくなった。 いつものようにいびきをかいて寝ている田路さんが羨ましい。 高所ではありがちな体調の急変だが、まさかこのタイミングでくるとは思わなかった。 やはり順応ステージを計画どおりこなしてなかった(チャパエフ・ノースに登っていない)ツケが回ってきてしまった。 脈も上がったのか、結局朝まで全く眠ることが出来なかった。 一方、雪は弱いが降り続いていたので、明日の出発が中止になることを寝袋の中で祈り続けた。


珍しく早朝から青空を背景にハン・テングリの頂が見えた


C.1から見たカーリィ・タウ(中央)


何となく足が重たい感じがしたので、田路さんに先行してもらう


C.1からC.2へのフィックスロープの登攀


C.1からC.2へのフィックスロープの登攀


C.1からC.2へのフィックスロープの登攀


C.1からC.2へのフィックスロープの登攀


途中にある唯一の休憩ポイントで田路さんと入れ替わって先行する


私達以外にC.1からC.2に登る人影は全くなかった


20センチほど積雪が増したC.2には前回よりも多くのテントの花が咲いていた


私達の隊のテントサイト


C.2から見たチャパエフ・ノースへのトレースは相変わらず薄かった


夕食の鯖の水煮の缶詰


C.2からはハン・テングリの頂が間近に見えるようになった


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ハン・テングリ