《 8月2日 》

C.1(4700m)

   8月2日、4時に起床。 雪は弱いながらも降り続き、セルゲイから5時に再度起きて天気をチェックするという指示があった。 5時になっても雪は降りやまず、セルゲイから7時に再度起きて天気をチェックするという指示があった。 7時になっても雪は降りやまなかったが、セルゲイからは何も指示がなかった。 この天気では今日はもう出発しないということだろうか。 朝食のカップラーメンと昨日の行動食の余りを食べていると、セルゲイからC.2付近でワディムの隊の女性が足を骨折したため、これからそのレスキューに行かなければならず、一緒にC.2に上がることが出来なくなったという話しがあった。 もちろん私達が寝袋や共同装備の食料などを担げばC.2に上がることは可能だが、天気も悪いので無理をせず今日はC.1に停滞することにした。 今までのペルーやネパールでの登山の成功は、スタッフ達の手厚いサポートのお蔭であったことが今更ながらに良く分かった。 

   10時になるとようやく雪から変わった雨が止み、セルゲイとアンドリューがレスキューに出掛けていった。 SPO2と脈拍は88と70で、体調は良いが脈が高い。 曇天で陽射しがないので、テントの中にいることが苦痛にならないのが救いだ。 昼前にはびっしょり濡れていた寝袋も乾いたが、正午を過ぎると再び小雨が降ってきた。 昼食はラーメンと温めた馬肉の缶詰だったが、カザフスタンでは馬肉が一般的なようで、これがとても美味しかった。 午後からは三人の話題も尽き、退屈な時間を過ごす。 2時頃に一瞬の雲の切れ目をついてヘリが飛んできた。 昨日出発出来なかったAツアー社のメンバーもようやくB.Cを脱出出来たことだろう。 夕方になって久しぶりに上空に青空が見えるようになり、周囲の山々やハン・テングリの神々しい頂が見えた。 失いつつあった登頂へのモチベーションも一気に高まった。 SPO2と脈拍は90と59になり、体調も数値どおりに良いのが嬉しい。 5時半にようやく足を骨折した女性がワディムとセルゲイ、そしてアンドリューに付き添われてC.1に下ってきた。 女性の顏には笑顔も見えたので安堵した。 

   平岡さんの話では天気予報は少し変わったようで、6日の好天の予報は不明だが、当初危惧していた明日からの天気の大きな崩れはなくなったとのこと。 夕食はフリーズドライの白米にいわしと馬肉の缶詰だったが、体調は良く美味しく完食することが出来た。 大食漢の平岡さんは別として、田路さんは相変わらず食欲が旺盛で、常に私の1.5倍以上を食べている。 食欲は全ての力の源だからこの差は大きい。 私と反対に高所に強い体質だということがあらためて分かり、さすがセブンサミッターは凄いと羨ましく思った。 7時に下のC.1まで骨折した女性を下ろしたセルゲイとアンドリューが帰ってきた。 さすがに彼らも相当疲れたようで、明日は7時に起床して8時に出発するとの指示があった。


悪天候と負傷者のレスキューのためC.1で停滞する


C.1の3人用のテント


前回に比べて体調は良かった


昼食のラーメン


夕方になって久しぶりに上空に青空が見えるようになった


C.1から見たハン・テングリ


足を骨折した女性がワディムらに付き添われてC.1に下ってきた


美味しかった夕食の馬肉の缶詰


夕陽に染まる神々しいハン・テングリの頂


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ハン・テングリ