《 7月27日 》

C.1(4700m) 〜 C.2(5450m)

   7月27日、4時に起床。 意外にも夜中に頭痛はなく、何とか安眠することが出来た。 起床後のSPO2と脈拍は80と62で、数値もそれなりだった。 昨日からの雪は朝には止んでいたので、5時半前にC.1を出発した。 朝焼けの山々が綺麗だが、上空には寒々しい雲が見られ、今日も良い天気になりそうな気配はない。 C.1からすぐにフィックスロープの登りとなったが、意外にもC.2まで全てフィックスロープを登ることになった。 

   先導する平岡さんの後に続いて私から登り始めるが、順応していない割には足が動いてくれたので助かった。 一方、昨夜の降雪でトレースは無くなり、フィックスロープは凍りついているか、その反対に濡れているかで、フィックスロープを登るには最悪の状況だった。 風も少しあり、順応とはいえ嫌な感じだ。 昨日のセルゲイからの指示どおり、傾斜が緩い所を除いては基本的に1本のフィックスロープにつき1人が登るようにしたため、まるで岩場での順番待ちのようになり、途中から登高は遅々として捗らなくなった。 C.2へのルートとなる顕著な尾根は終始急斜面だったのみならず、足元の雪が凍っていたり、逆にぐずぐずで脆かったりで、階段上のトレースが付いているような所は全く無かった。 休むこともままならず、ひたすら目の前のフィックスロープにしがみつく。 オーバー手袋をしていてもインナー手袋が濡れてしまうのが辛い。 最初のうちはまずまずのペースで登れたが、負荷が掛かる登りの連続で次第に足が重くなってきた。

   悪天の予報が出ている明日に向けて天気は下り坂のようで、上に行けば行くほど天気は悪くなり、風も強くなった。 先行する平岡さんのトレースは、風で運ばれた雪でかき消され、先頭を登るのと同じような状態になってしまう。 間もなく後から出発したセルゲイが追い越していった。 下のC.1から出発した他隊のパーティーが田路さんと割石さんを追い抜いて私の後を登るようになり、二人との間隔が開いてしまったので、C.1から3時間ほど登った中間点辺りで平岡さんが二人を待つことになり、セルゲイと二人で先行する。 下からも良く見えた顕著な岩場の通過は、天気が悪いことも手伝って緊張を強いられた。

   岩場を通過してC.2が頭上に見えてきた所でセルゲイも後続のメンバーを待つことになったので、ここからは私が先頭で登ることになった。 急いで登る必要は全くないので、ゆっくり登って体力の消耗を防ごうとするが、急斜面のフィックスロープはそれを許してくれなかった。 C.1からC.2までは5時間くらいを目安にしていたが、結局7時間近くを要して正午に待望のC.2に着いた。 予想外の厳しい登りの連続で、もう足が前に進まなかった。 C.2はC.1とは全く違い、居心地が良さそうな広くて平らな場所だった。 すでに10張以上のテントが見られ、一番奥にエージェントのテントが2張あった。 天気は冴えないが、ハン・テングリの山頂が間近に迫り、C.3のあるウエストサドル(5850m)のコルも良く見えるようになった。 C.2の標高は、高度計の数字が5210mだったので、実際には5450mほどだろう。 

   30分ほど後に到着した平岡さんとテントを設営し、田路さんと割石さんの到着を待たずにエージェントのテントに入った。 今日はポーター役のアンドリューと一緒だ。 行動食を殆ど食べることが出来なかったので、ボロボロに砕けたポテトチップを夢中で食べた。 アンドリューにお湯を沸かしてもらい、水分補給により脈を下げることに努める。 アンドリューとお互いに片言の英語で色々な話しをした。 意外にも彼はベジタリアンとのことだった。 昼過ぎのSPO2と脈拍は78と67で、昨日のような頭痛や気分が悪いということはなかった。

   2時くらいに田路さんがテントに着いたようで声が聞こえてきた。 割石さんはカーリィー・タウで痛めた足の状態が良くないのか、まだ着いてないようだ。 5時過ぎから雪が降り始め、一時的に激しく降ることもあった。 明日は下山するにしても厳しい状況になってしまうだろう。 セルゲイから、明日は4時に起床し、その時点で雪が止んでいれば5時に出発するという指示があった。 チャパエフ・ノースに登るのか、C.1に下るのかは判然としなかったが、いずれにしてもC.2に留まることはないようだった。 C.2に一泊しただけで順応が終わりでは7000mの山は登れない。 どうやら登る山の選択を誤ったようだ。 夕食のフリーズドライの赤飯と魚肉ソーセージをだましだまし食べた。 夕食後のSPO2と脈拍は81と71で、標高の割には良かった。


昨日からの雪は朝には止んだ


5時半前にC.1を出発する


朝焼けの山々


朝焼けの山々


上のC.1


先導する平岡さん


後続の田路さんと割石さん


傾斜が緩い所を除いては基本的に1本のフィックスロープにつき1人が登る


後から出発したセルゲイが追い越していった


下のC.1から出発した他隊のパーティーが田路さんと割石さんを追い抜いて私の後を登るようになった


下からも良く見えた顕著な岩場の通過は、天気が悪いことも手伝って緊張を強いられた


岩場を登るセルゲイ


岩場を通過するとC.2(右上)が頭上に見えた


後続のメンバーを待つセルゲイ


C.2直下を先頭で登る


C.2の端から見たバヤンコール ・ Mt.カザフスタン ・ カーリィー・タウ ・ ムラモルナヤステナ(左から)


C.2は広くて平らだった


C.2の一番奥のエージェントのテント


C.2からチャパエフ・ノースの山頂へ向かうパーティー


C.2から見たハン・テングリの山頂とC.3のあるウエストサドルのコル(右)


ポーター役のアンドリュー


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ハン・テングリ