《 7月26日 》

B.C(4050m) 〜 C.1(4700m)

   7月26日、4時に起床。 昨夜は寝袋のファスナーが壊れ、寝ている間に開いてしまったので寒かった。 食堂に用意されていたゆで卵とインスタントのうどんを食べ、5時過ぎにB.Cを出発。 残念ながら今朝もあまり良い天気ではない。 ガイドはカーリィー・タウの後、ワディムからセルゲイに変わったようで、セルゲイに先導されて北イニルチェク氷河を横断する。 B.Cから対岸のハン・テングリの取り付きまでは40分ほどだった。 

   取り付きでアイゼンやハーネスを着け、ハン・テングリのC.1に向けてチャパエフ・ノース(6120m)を登り始める。 急斜面やクレヴァスがある所にはフィックスロープがあるため、基本的にロープは結ばないようだ。 当初予想していた岩と雪がミックスした左側のリッジではなく、正面の雪のフェースを登る。 単独者が先行していったので、ルートのイメージが少し分かった。 斜面の傾斜はそこそこあるが、トレースがジグザグにつけられているので登り易い。 最初のうちは昨夜のイラン人のアドバイスどおりだったが、斜面の傾斜は次第に急になり、トレースもそれに比例して薄くなった。 雨で溶けた雪が凍っている所もしばしばで、下りではロープが欲しくなるような(必要な)登りが続き、のっけから緊張を強いられる。 途中、セルゲイが滑落した時のピッケルでの制動方法を動作を交えて説明してくれたが、ここならその可能性も充分あり得そうに思えた。 間もなく今回からポーター役となるアンドリューが追い付いてきた。

   取り付きから1時間ほど登った所で最初の休憩となり、その少し先からフィックスロープが見られるようになった。 フィックスロープは傾斜が緩い所では安物の白いナイロンのロープが、急な所では登攀用のロープが使われていた。 セルゲイから、明らかに傾斜が緩い所を除いては、基本的に1本のフィックスロープにつき1人が登るようにとの指示があった。 C.1直下の所では傾斜が急だったのみならず、足元の雪が脆かったので苦労した。 ユマールを使うのが初めてだと登るのが厳しいだろう。 二本の長いフィックスロープを喘ぎながら登り終えると、その終了点が待望のC.1だった。 予想よりも早く、取り付きから3時間足らずでC.1に着くことが出来たが、最後尾の平岡さんが到着するまでにはさらに30分ほどを要した。 

   C.1はチャパエフ・ノースの山頂へ突き上げる急峻な尾根の末端のような所で、尾根の隅の雪のない岩場を均した所がテントサイトになっていた。 少し傾斜のあるC.1は予想していたよりも快適な場所ではなく、100mほど上にも数張のテントが見えた。 エージェントのガイド達が前もって設営したテントも上のキャンプ地にあるとのことで、今日は平岡さん・割石さん・田路さんの三人はここに、私はセルゲイ達と一緒に上のキャンプ地のテントに泊まることになった。 

   下のC.1でテントを設営し、一息入れてから上のC.1に向かう。 フィックスロープを30分ほど登り、11時半に上のC.1に着くと、エージェントのテントは一番立地条件の悪い岩場の末端にあった。 テントを設営しなくて済むのはありがたいが、二人用の古くて小さなテントは、ルートを整備するための荷物置場として使われていたので、その空いているスペースに一人で入った。 岩場の末端にある上のC.1では、テントのすぐ近くでしか用を足せないため、テントの周りはとても臭かった。

   到着後のSPO2と脈拍は89と74で数値だけは良いが、カーリィー・タウでの順応の効果は見られず、頭が少し痛く気分も少し悪かった。 上のC.1の標高は、高度計の数字が4433mだったので、実際には4700mほどだろう。 天気は次第に良くなり、北イニルチェク氷河を挟んで眼前にセメヨノーブ(5816m)とバヤンコール(5841m)が大きく迫り、右奥にはMt.カザフスタン(5761m)とカーリィー・タウ(5350m)、そしてムラモルナヤステナ(6400m)が並んで見え、氷河の下流となる左方向には5000m級の山々の連なりが一望出来た。 

   私のテントにはコンロがないので、隣のテントのアンドリューにお湯を沸かしてもらい、チキンラーメンを食べる。 食後はSPO2が80前後に下がり、脈拍も80以上になったので、水分補給により脈を下げることに努める。 気分の悪さはなくなったが、顔がむくんでいる感じで、頭痛はまだ治らなかった。 いつものように天気は変わり易く、先ほどまでの晴天が嘘のようにしばらくすると雨が降り始めた。 3時になると上の一番良いテントサイトが空いたので、急遽下のC.1にいた三人が登ってきて、そこにテントを設営することになった。  夕方から雨は雪に変わって寒くなった。 SPO2は80後半まで上がり、脈拍も60前半まで下がったが、軽い頭痛がなおも続いて不快だった。 夕食はフリーズドライのピラフとシーチキンの缶詰だった。 体調が万全ではないので食べるのが怖かったが、意外にも美味しく完食することが出来た。 セルゲイから、明日は4時に起床し、その時点で雪が止んでいれば5時に出発するとの指示があった。


5時過ぎにB.Cを出発する


B.Cから北イニルチェク氷河を横断する


ハン・テングリ(チャパエフ・ノース)の取り付き


取り付きから見たハン・テングリ


取り付きから見たチャパエフ・ノース


取り付きから見たセメヨノーブ(5816m)


取り付きから見たバヤンコール(5841m)


取り付きからしばらくはトレースがジグザグにつけられていたので登り易かった 


C.1への登りから見たアデンナツアーチ(5437m)


最初の短いフィックスロープ


斜面の傾斜は次第に急になり、トレースもそれに比例して薄くなった


C.1直下の二本の長いフィックスロープ(一本目)


C.1直下の二本の長いフィックスロープ(一本目)


フィックスロープを補修するガイドのワディムとナカムラ


C.1直下の二本の長いフィックスロープ(二本目)


C.1直下の二本の長いフィックスロープ(二本目)


二本の長いフィックスロープを喘ぎながら登り終えると、その終了点が待望のC.1だった


下のC.1から見た北イニルチェク氷河の下流の5000m級の山々の連なり


下のC.1でテントを設営する


下のC.1では尾根の隅の雪のない岩場を均した所がテントサイトになっていた


上のC.1へのフィックスロープ


上のC.1への登りから見たC.2方面へのルート


上のC.1のテントは岩場の末端に設営されていた


一番立地条件の悪い岩場の末端にあったエージェントのテント


上のC.1から見た下のC.1


北イニルチェク氷河越しに見たカーリィー・タウ(中央) ・ Mt.カザフスタン(左) ・ ムラモルナヤステナ(右)


北イニルチェク氷河越しに見たセメヨノーブ


北イニルチェク氷河越しに見たバヤンコール


上のC.1から見たハン・テングリ


今日の夕食と明日の朝食


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ハン・テングリ