《 29日 》

C.1(4800m) 〜 C.2(5350m)

   7月29日、6時半に起床。 昨夜は夕食の消化が悪かったのか、お腹が張って脈が70台から下がらず、熟睡出来なかった。 起床後のSPO2と脈拍は78と68とあまり良くなく、鼻も詰まっている。 少し軟便だったので、初めて胃薬を飲んだ。 ようやく雪は止んで早朝から快晴の天気となり、キャンプサイトから初めて純白のチョピカルキの西面が眼前に大きく見え、ワンドイ、ピスコ、チャクララフなどの山々がモルゲンロートに染まり始めていた。 夢中で写真を撮っていると、アグリがそれらのピークの間から僅かに顔を覗かせているアルテソンラフ(6025m)、カラツ(6025m)、タウリラフ(5830m)などの頂を一つ一つ丁寧に教えてくれた。   

   素晴らしい展望を愛でながら朝食をテントの外で食べ、8時半にC.1を出発する。 C.1には私達の隊以外に20張ほどのテントが見られたが、下山する隊が殆どでこれから登る隊はなさそうだった。 大きな岩が堆積するモレーンの中を、ワスカランとのコルを目指して登っていく。 登りながらダリオと雑談を交わすと、彼は元々ラフティングのガイドをしていたらしく、音楽の作詞や作曲も趣味でやっているというユニークな人だった。 

   C.1から1時間ほど登った所で氷河への取り付きがあり、テントを撤収してから登ってくるスタッフ達を待つ。 風もなく穏やかな登山日和だが、昨日までの雨や雪のせいで早くも雲が湧き始めた。 結局、取り付きで後続のスタッフ達を1時間近く待つことになってしまったが、間近に迫るチョピカルキやワスカランの雄姿を仰ぎ見ながらのんびり寛ぐ。 アグリから、昨日山頂まで登れたのはスイス隊のみで、明日もアタックするのは恐らく私達だけなので、ラウルとマヌエルをラッセル要員としてアタックのメンバーに投入するという思いがけない話があった。

   明日のアタックと同じパーティー編成で私と妻がアグリと、西廣さん夫妻がダリオとそれぞれアンザイレンして氷河を登り始める。 チョピカルキの頂稜部と雪庇の発達した南西稜が頭上に良く見え、明日登るルートのイメージが大雑把に掴めた。 氷河に印されたトレースは意外と浅く、C.2まではそれほど新雪が積もらなかったことが分かって安堵した。 間もなく昨日B.Cを先に発った男女3人のオーストラリア隊が下ってきたが、降雪のため予定していたC.2からではなくC.1からの出発となり、時間切れで登頂出来なかったとのことだった。 昨日の若い男女のパーティーと同様に、登頂を祈ってますと笑顔でエールを送られ泣けてきた。 C.2への氷河は比較的緩やかで広いが、大きなセラックやクレヴァスが沢山あるので、トレースが無かったりホワイトアウトすると、正しいルートを見つけるのが非常に難しいように思えた。 

   途中一度休憩をしただけで、取り付きから先行したスタッフ達がテントを設営している所に着いた。 高度計は5350mを表示し、ガイドブックに記されたC.2(5600m)の位置より250mも低かった。 アグリから、以前はC.2を稜線のコル付近としていたが、風が強いため昨今ではこの辺りをC.2としているとの説明があった。 ここから山頂までの標高差は1000mほどとなるのでそれなりにキツイが、これから明日のアタックに向けて体を休めるには楽な高さだ。 スタッフ達が作ってくれた雪のテーブルとイスに座り、炒ったトウモロコシやチーズ、そして暖かいスープをいただく。 

   天気はまだ安定してないようで、昼過ぎからは灰色に濁った雲が湧き、個人用テントの中で日記などを書いて過ごす。 テントが傾いているためあまり快適ではないが、夜中にはもう山頂へのアタックに出発だ。 夕方にはSPO2が80、脈拍はなぜか62と非常に良くなった。 アグリの予想どおり私達の後からC.2に登ってくる隊はなく、日没前にアグリから明日の出発は1時と告げられた。 夕食は日本から持参したフリーズドライの山菜おこわとポタージュスープを自炊して食べた。


C.1から見た朝焼けのワンドイ


C.1から見た朝焼けのチャクララフ


C.1から見たチョピカルキの西面


C.1の個人用テント


素晴らしい展望を愛でながら朝食を外で食べる


C.1から見たワンドイ


C.1から見たチャクララフ


C.1から見たピスコ西峰(中央)とピスコ東峰(中央右)


C.1を出発する


大きな岩が堆積するモレーンの中を、ワスカランとのコルを目指して登っていく


チョピカルキの西面


氷河への取り付きから見たワスカラン南峰


氷河への取り付きから見たワスカラン北峰


氷河への取り付きで後続のスタッフ達を1時間近く待つ


氷河に印されたトレースは意外と浅かったく


昨日B.Cを先に発ったオーストラリア隊とすれ違う


頭上にチョピカルキの頂稜部と雪庇の発達した南西稜が良く見えた


氷河上には大きなセラックが沢山あった


ワスカラン南峰


ワスカラン北峰


ワンドイ


C.2への氷河の登高


C.2への氷河の登高


チョピカルキの頂稜部


C.2への氷河の登高


C.2への氷河の登高


貸し切りのC.2に着く


C.2から見た南西稜のコル方面


スタッフ達が作ってくれた雪のテーブルとイスで寛ぐ


残照のC.2


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