《 24日 》
ハウアコーチャ(4050m) 〜 マンカン峠(4580m) 〜 ポクパ(3470m) ⇒ チキアン(3400m)
7月24日、早いもので、ワイワッシュ山群に入山してから今日で12日目となった。 今日はハウアコーチャのキャンプ地からマンカン峠(4580m)を越えて今回のアルパイン・サーキットのゴールとしたポクパ村(3470m)へ下り、そこからエージェントのバスで最初に泊まったチキアン(3400m)のホテルに向かう。
少し朝寝坊し、朝食のパンケーキを美味しくいただく。 8時半前にロンドイ(5870m)の山頂からのご来光となり、その直後にキャンプ地を出発した。 すぐに上のソルテラコーチャ(湖)から流れ出す沢の渡渉ポイントがあったが、ホセとメシアスがキャンプ地の撤収の手を休め、石を集めて即席の橋を作ってくれた。 沢を渡ってハウアコーチャ(湖)の湖尻に向かって歩いていくと、先日辿ってきたラサック谷の向こうにラサックやラサック・チコが見えてきた。 ここから見たラサックはカミソリの刃のようにシャープで、カラマーカ湖の畔から仰ぎ見た姿とはまるで違うユニークな山容だった。 ハウアコーチャ(湖)の湖尻に着くと、ラサックの奥にイェルパハやイェルパハ・チコも望まれるようになり、あらためて今回のアルパイン・サーキットの景観の素晴らしさを感じた。 湖尻からはハウアコーチャの湖畔に沿って平坦な道を歩いていくが、湖は氷河と直接接していないためかどことなく牧歌的で、湖面の色合いも他の湖と比べて地味だった。 湖は下流にいくほど水温が高くなるのか、カモやシギ類の水鳥の姿があちこちに見られるようになった。 反対側の湖尻には整備されたキャンプ地があり、看板には麓のリャマック村が管理していると記されていた。 キャンプ地からはラサック・イェルパハ・イェルパハ・チコ・ヒリシャンカ・ロンドイが屏風のように一望され、逆光ながらここからの景色も正にグラン・ビスタだった。
ハウアコーチャ(湖)を過ぎると長閑な牧草地となり、草を食む牛たちの姿が見えた。 ハウアコーチャ(湖)から流れ出す川に沿ってしばらく平坦な道を歩いていくと、石を積んだカルカの先でリャマック(3250m)に通じる道と分かれ、マンカン峠(4580m)への広い谷の登りとなった。 目標を失った身に登りは辛いが、前山に隠れてしまったラサックが再び見えるようになっていくのが嬉しい。 順応しているのか、里心がついたのか、皆の登るペースが速くてついていけない。 下からは峠に見えた場所は平坦地となっていただけで、そこでゆっくり一休みする。 平坦地からはトラバース気味に緩やかな登りが続き、途中から馬のタクシーに伊丹さんとOさんが運ばれていった。 道は次第に埃っぽくなり、12時半にマンカン峠に着いた。 今回のアルパイン・サーキットの最後の峠となるマンカン峠は、そのフィナーレに相応しいグラン・ビスタで、盟主のイェルパハの眺めが特に素晴らしかったが、私にはその傍らに寄り添うラサックの姿が愛おしかった。
マンカン峠で最後のグラン・ビスタを目に焼き付け、もう二度と訪れることは叶わないワイワッシュ山群に別れを告げて峠を越える。 峠からは眼下にポクパの集落が小さく見えた。 峠から少し下った陽当たりの良い所で昼食を食べ、乾燥した埃っぽい道をポクパの集落に向かって一目散に下る。 強い陽射しでとても暑く、僅かな木々の日陰でも嬉しく思えた。 所々に珍しい植物やサボテンが見られ、植物にも詳しいアグリが何でも詳しく説明してくれた。 峠からの標高差1100mを休まず一気に下り、3時半に車道が通じるポクパの集落に降り立った。
すでにスタッフ達も全員到着していたので、事前の打ち合わせどおりスタッフ達にチップを手渡すセレモニーを平岡さんの音頭で行う。 アグリがトレッキングと登山の総評をコメントした後にロドリゴが続き、ガイドから馬方まで一人一人がそのすべき役割をきちんと果たしたことが今回の登頂の成功につながったというコメントを披露し、メンバー一同その話しに聞き入っていた。 マックスがいなくなったペルーにも、ガイディングのみならず人間的にも素晴らしいガイドがいたことが頼もしく思えた。 私達もアグリにスペイン語の通訳をお願いし、個々に拙い英語で感謝の気持ちを込めてスタッフ達にお礼を言った。
数日後にワラスで再会することを約し、スタッフ達と別れてエージェントの用意したワゴン車に乗り込む。 酸素の濃さと疲れですぐに睡魔に襲われ、気が付いた時にはもうチキアンの町に着いていた。 夕食時には地元のビールやワインで乾杯し、久々のホテルの夕食を美味しく食べた。 長いようで短かったワイワッシュ山群のツアーを終え、山も登れて皆良い笑顔だった。