《 21日 》

C.1(4800m) 〜 C.2(5500m)

   7月21日、6時に起床。 ハウアコーチャのB.Cでは順応はほぼ完璧だと思っていたが、夜中に一度軽い動悸で目が覚めた。 それでも起床前のSPO2は80、脈拍は60で、この高度にしてはまずまずだった。 昨夜の降雪が嘘のように天気は素晴らしく、朝焼けの空と逆光ながら眼前にロンドイ、ヒリシャンカ、イェルパハ・チコ、そしてイェルパハがすっきりとキャンプサイトから望まれ、早朝から久々のグラン・ビスタとなった。 遠くブランカ山群のワンサン(6395m)の頂も雲海の上に浮かんで見えた。 意外にも雪はテントの上だけに残っていて、地面には殆ど積もっていなかった。 次第に明るさを増す山々を眺めながらキッチンテントの脇で車座になって朝食を食べる。 8時過ぎにヒリシャンカの山頂からのご来光となった。

   8時半にC.1を出発し、最終キャンプ地のC.2(5500m)へ向かう。 昨日に続き、イェルパハ西氷河の左岸のサイドモレーンを登る。 C.1からしばらくの間は傾斜が緩く、踏み跡も意外と明瞭だった。 風もなく暖かい絶好の登山日和で、C.2へは全く問題なく行けそうな気がするが、反面あまり天気が良すぎて、今日がアタック日なら良かったとついつい思ってしまう。 氷河の取り付き地点は予想以上にC.1から遠く、ガレ場や岩場を繰り返しながら延々と氷河の脇を登ることになった。 それだけ氷河の後退が近年著しいということだろう。 イェルパハが間近に迫り、まるでこれからイェルパハに登るかのような錯覚を覚える。 C.1から2時間半ほどでようやく氷河と出合ったが、ぎりぎりまで氷河に沿ってサイドモレーンを登り続けた。 地形的にこの辺りはもうラサックの稜線の側壁と言えるかもしれない。 結局C.1から3時間以上登ってようやく氷河の取り付きに着いた。

   取り付きでアイゼンとハーネスを着け、正午過ぎに二組に分かれてアンザイレンしてイェルパハ西氷河を登り始める。 取り付き付近には荒々しいセラックやクレヴァスが見られたが、イェルパハ西氷河は予想以上に傾斜が緩やかで、昨日の新雪で美しく輝いていた。 所々で先頭のアグリに声を掛け、周囲の山々の写真を撮らせてもらう。 ヒリシャンカのアンデス襞が芸術的だ。 間もなく氷河の奥に狭いコルが見え、コルの右上にはラサックの山頂らしき所が見えたが、数日前に見た神々しい山容とはまるで違う形に違和感を覚えた。 

   氷河の取り付きから2時間足らずで待望のC.2(5500m)に着いた。 眼前には巨大なイェルパハの雪壁が衝立のように屹立し威容を誇っているが、肝心のラサックは赤茶けたその側壁を見せているだけだった。 スタッフが作ってくれた雪のテーブルでティータイムを楽しんでいると、ラウルが最終キャンプ地には似合わない大きな鍋にトゥルーチャの煮込みを入れて持ってきた。 思わぬラウルからの差し入れに仰天し、興奮しながら夢中で柔らかく煮込んだトゥルーチャを頬張った。

   山頂へのルートの下見に行ったロドリゴから、フィックスロープを何本か取り付けてきたという報告を受け、急遽ユマール(登高器)の練習をすることになった。 元々フィックスロープを登ることは考えてなかったので、ユマールは隊の共同装備の中から借りることになったが、私の分まで無かったので、明日はロープマンで代用することになった。

   明日のアタックの出発時間は1時ということになり、6時前に個人用テントでフリーズドライのご飯を食 べて横になった。 妻共々体調は良く、夕食後のSPO2は83、脈拍は63と申し分ない。 あとは明日の好天を願うばかりだ。


C.1から見た早朝のヒリシャンカ(右)とロンドイ


C.1から見た早朝のイェルパハ(右)とイェルパハ・チコ(左)


ブランカ山群のワンサン(6395m)の頂が雲海の上に浮かんで見えた


雪は殆ど積もっていなかった


車座になって朝食を食べる


ヒリシャンカの山頂からのご来光


C.1を出発する


出発直後のC.1


風もなく暖かい絶好の登山日和となった


C.1からしばらくの間は傾斜が緩く、踏み跡も意外と明瞭だった


ガレ場や岩場を繰り返しながら登る


イェルパハが間近に迫る


氷河の取り付き地点は予想以上にC.1から遠かった


ラサックの側壁の岩場を登る


イェルパハ西氷河と出合う


イェルパハ西氷河への取り付き


イェルパハ西氷河に取り付く


取り付き付近には荒々しいセラックが見られた


イェルパハ西氷河の本流に乗る


イェルパハ西氷河は予想以上に傾斜が緩やかだった


イェルパハ西氷河から見たイェルパハ・チコ


イェルパハ西氷河から見たイェルパハ


イェルパハ西氷河から見たヒリシャンカ


氷河の奥に狭いコルが見え、コルの右上にはラサックの山頂らしき所が見えた


C.2の手前


待望のC.2に着く


C.2からは巨大なイェルパハの雪壁が衝立のように屹立していた


スタッフが作ってくれた雪のテーブルでティータイムを楽しむ


皆を驚かせたトゥルーチャの煮込み


急遽ユマール(登高器)の練習をすることになった


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