《 17日 》
クタタンボ(4265m) 〜 セリア峠(5097m) 〜 カラマーカ湖(4575m)
7月17日、昨夜は寝るのが10時となり、3時くらいまで熟睡したが、その後は鼻が詰まって良く眠れなかった。 起床後のSPO2と脈拍は84と65で、体調は正に数値どおりで可も不可もない。 もう頭痛は完全に無くなったが、昨日の疲れが残っているようで体が重い。 今日も早朝から快晴の良い天気となり、逆光ながら目標のラサックが良く見える。 朝食の暖かいパンが食欲をそそる。
今日はセリア峠(5097m)という峠を越えてサグヤ谷のキャンプ地(4500m)まで行く。 ラサックはもちろんのこと、シウラ・グランデやイェルパハに再び近づくので、今日もグラン・ビスタ(大展望)が期待出来る。 昨日の到着が遅かったので、いつもよりも少し遅く8時過ぎにクタタンボのキャンプ地を出発。 大小の岩が堆積した河原をケルンに導かれて進み、サラポコーチャ(湖)を源とするサラポコーチャ谷を流れる沢を渡渉して谷の右岸を高巻く踏み跡を辿る。 谷筋の斜面には雌のルピナスの紫の花が一面に咲き誇っていた。 谷から這い上がるようにやや急な斜面をひと登りすると、谷は広く開放的になり、正面にはラサックが良く見えるようになった。 ここから見たラサックは、チキアン方面から見た山容とはまるで違う尖峰で、とても登れそうな山には見えない。 振り返ると、昨日の主役のトラペシオ(5653m)はすでに遠くなっていた。
時にはルピナスの藪を漕ぎながら、サラポコーチャ谷の側壁をトラバース気味に登っていくと、イェルパハと見間違えるほど迫力のあるサラポ(6127m)がその全容を現し始めた。 サラポの氷河を集めたサンタロサ湖とイェルパハとシウラ・グランデの氷河が流れ落ちるサラポコーチャ(4482m)がモレーンを隔てて相次いで足下に見えた。 サラポコーチャの上に見える大きなクレヴァスが、映画『運命を分けたザイル』の舞台となったクレヴァスだとアグリが教えてくれた。 間もなくサラポの背後からシウラ・グランデの頂が徐々に見えるようになり、その迫力ある景観を眺めながら昼食となった。
昼食後は赤茶けた地肌が露出したセリア峠(5097m)を目指して登る。 岩塩でも舐めに来ているのか、かなり高い所まで放牧された牛たちの姿が見られた。 下から見えたモアイ像のような奇岩が立つ所が峠かと思ったが、峠はそこからまだ一段上に登った所だった。 3時前にようやくセリア峠に着いた。 峠からはラサックが手の届きそうな所に見え、イェルパハとシウラ・グランデ、そしてサラポの眺めが圧巻だった。 峠の向こう側には主脈からは外れているが、氷河のあるサクラ・グランデ(5610m)などの山々が見えた。
峠からのグラン・ビスタ(大展望)を充分堪能し、目的地のサグヤ谷へと下る。 砂礫のグズグズの急斜面に僅かに残る踏み跡を辿って谷を目がけて一気に下る。 砂礫の斜面は次第に岩場に変わり、1時間ほどで草も混じるようになった。 足下には広くて平らなサグヤ谷が良く見えるようになった。 谷に降り立った所がキャンプ地かと思ったが、谷へは下らず途中から谷の源頭へ側壁をトラバース気味に延々と歩き続けることになった。 正面の谷の源頭にはラサックが再び見えるようになったが、待望のキャンプサイトは全く視界に無く、昨日に続き今日も長い行動時間となりそうだった。 5時半を過ぎて日没が迫ってきた時、前方から馬方に連れられた馬が二頭現れ、疲れの見えていた妻と朋子さんをキャンプ地へ運んで行った。
日没寸前の6時にようやくサグヤ谷の源頭にあるカラマーカ湖(4575m)という湖の畔に設営されたキャンプ地に着いた。 足はもう棒のようになっていたが、昨日までの指定されたキャンプ地とは違い、ラサックを投影するカラマーカ湖はとても神秘的で、今までここを訪れた日本人はいないのではないかとさえ思えた。 到着直後に小雪が舞ったが、すぐに止んでくれて助かった。 SPO2と脈拍は82と72で、疲れている割にはそれほど悪くなかった。 今晩はダイニングテントは無く、夕食はキッチンテントの中で和気あいあいと食べた。 夕食後にアグリから、今回のアルパイン・サーキットの核心となる明日のラサック峠(5129m)越えを楽にするため、予定したサグヤ谷のキャンプ地から1時間半ほど先に進んだという説明があった。