《 15日 》

カルアコーチャ(4150m) 〜 シウラ湖(4290m) 〜 シウラ峠(4830m) 〜 ワイワッシュ(4350m)

   7月15日、5時半に起床。 夜半過ぎから熟睡してないので頭痛はないが、今朝は持病の鼻づまりの症状が少し出てきた。 起床前のSPO2と脈拍は83と63で数値だけは悪くないが、予想どおり体調はまだまだ正常にはなっていない。 朝焼けの山を見るため、まだ暗い6時過ぎにメンバー全員でキャンプ地の裏の丘を登り始める。 少し雲があるがまずまずの天気で、月明りで山々のシルエットが見える。 湖畔からでも充分山は見えるのに、なぜアグリが丘の上に誘ったのか、登りながらその理由が分かった。 カルアコーチャの湖面が鏡のように山々を映し始めたのだ。 丘の上に着くと素晴らしい“朝焼けショー”が始まり、山々の頂が金色に輝き始めた。 メンバー一同歓喜の声を上げ、夢中で写真を撮った。 山々は命を吹き込まれたかのように赤く染め上がった。 僅か数分の上演時間だったが、予想外の“グラン・ビスタ” に朝食前からお腹が一杯になった。 

   テントに戻って朝食を食べ、8時にカルアコーチャのキャンプ地を出発。 まだ風邪が治らない朋子さんを始めメンバーの誰もが本調子とはいかないが、眼前に顔を揃える神々しい山々の眺めが足を前へと運んでくれる。 今日はシウラ峠(4830m)という峠を越えてワイワッシュのキャンプ地(4350m)まで行く。 地図を見ると、カルニセーロ峠(4615m)を越えてワイワッシュに行くルートを歩いた方が楽なように思えたが、今回のアルパイン・サーキットでは最大限山の際を歩くというコンセプトなので仕方が無い。 シウラ峠への登りは昨日のカルアック峠のように緩やかではなさそうで、また、ワイワッシュの標高は4350mと、ここよりも200mほど高いことが憂鬱だ。 湖畔沿いの良く踏まれた道を緩やかに登っていくと、もう一つのキャンプ地から出発したパーティーの姿が前方に見えた。 彼らはクエロパルカから入山しているので、明日はワイワッシュから南のビコンガ湖に向かうのだろう。 カルアコーチャはそれなりに大きいが、水鳥の数は意外と少なかった。 やはり鳥たちにとっても4000mを超える高度は厳しいのだろうか。 湖尻を過ぎるとシウラ・グランデを正面に望む緩やかな登り下りの道となり、少しずつその姿を変えていく山々を愛でながら進む。 間もなくルートの脇に放牧農家の家が数軒見られた。 

   10時半前にシウラ湖(4290m)が見える場所に着いて休憩していると、平岡さんから、ルートから少し外れている湖を見に行きましょうと誘われ、急坂を10分ほど登ってモレーンの背に上がる。 あいにく頭上のイェルパハの頂は雲に隠されてしまったが、足下のガングラシャンカ湖(4245m)はヒスイ色をした美しい湖だった。 湖をしばらく眺めていると、対岸の氷河で雪崩が起き、滝のように湖に流れ込む光景が見られた。

   小1時間ほど道草を食ってシウラ湖方面へと進む。 妻はサントスが引く馬にザックを預けた。 シウラ湖を過ぎるとシウラ峠への登りが始まり、今度はケシロコーチャ(湖)(4332m)が足下に見えるようになった。 ケシロコーチャに流れ込む氷河の源にはカルニセーロ(5960m)の頂が見えた。それまでと一変して道は細くそして急になり、ボディーブローのように酸欠の体にじわじわと効いてくる。 予想どおり、順応の過程から見て、この峠への登りが一番堪えた。 

   1時に峠までの途中で唯一の平らな場所に着き、ランチタイムとなる。 食欲はそれほどなかったので、控えめにしておいた。 小1時間ほど休憩を兼ねて休み、シウラ峠への道を登り続ける。 午後に入ると昨日と同じように天気は少し下り坂になった。 峠が近づくにつれて足元の雑草は疎らになり、傾斜が一段と増してきた。 3時過ぎにようやく待望のシウラ峠に着いた。 あいにく山々の頂を雲が覆ってしまったが、天気が良ければ峠からの眺めは“グラン・ビスタ”だったに違いない。 峠の向こうにはカルニセーロ湖(4435m)とその背後にラウラ山群の山々が遠望された。 

   今日の最高点となる峠で思い思いに寛ぎ、カルニセーロ湖のさらに先のワイワッシュを目指して下る。 シウラ峠への登りで体がすっかり酸欠になってしまったので、下りといえどもなかなか足が前に進まない。 6000m級の主峰群は視界から消え、代わりにカルニセーロからワイワッシュ山群南端のトラペシオ(5653m)へと続く5000m後半の山々の連なりが見えるようになった。 カルニセーロ湖の手前は池塘が点在する湿地帯となっていて、苔むした道がしばらく続いた。 静かなカルニセーロ湖(4435m)の湖畔には5時過ぎに着いたが、そこからワイワッシュまではさらに1時間近くを要し、6時にようやくキャンプ地に着いた。

   テントに入ると間もなく雨が降り出し、ぎりぎり濡れずに済んだ。 夕食はトゥルーチャ(マス)のステーキだったが、カルアコーチャで釣れたものを運んできたということで驚いた。 ありがたいことに食欲がようやく湧いてきたので、初めて夕食をセーブしないで食べた。 到着直後のSPO2と脈拍は74と84だったが、夕食後は共に72になった。


カルアコーチャ(4150m) 〜 シウラ湖(4290m) 〜 シウラ峠(4830m) 〜 ワイワッシュ(4350m)


キャンプ地の裏の丘で“朝焼けショー”が始まるのを待つ


朝焼けのイェルパハ(左)・イェルパハ・チコ(中央)・ヒリシャンカ(右)


カルアコーチャの湖面が鏡のように山々を映す


モルゲンロートに染まるヒリシャンカ


モルゲンロートに染まるイェルパハ


モルゲンロートに染まるシウラ・グランデ


予想外の“グラン・ビスタ” に朝食前からお腹が一杯になった


湖畔から見たイェルパハ(左)・イェルパハ・チコ(中央)・ヒリシャンカ(右)


カルアコーチャのキャンプ地を出発する


前を歩く他のパーティー


湖尻から見たカルアコーチャ


カルアコーチャには水鳥の姿があまり見られなかった


湖尻を過ぎるとシウラ・グランデを正面に望む緩やかな登り下りの道となる


イェルパハ(中央)とイェルパハ・チコ(右)


ヒリシャンカ(左)とヒリシャンカ・チコ(右)


放牧農家の家


シウラ湖の手前から見たフラウA(5640m)


シウラ湖の手前からモレーンの背に登る(左下はシウラ湖・右上端はカルニセーロ/5960m)


モレーンの背から見たガングラシャンカ湖


対岸の氷河で雪崩が起き、滝のように湖に流れ込む


シウラ湖から見たイェルパハ・チコ(左)・ヒリシャンカ(中央)・ヒリシャンカ・チコ(右)


ケシロコーチャ(湖)付近から見たイェルパハ


ケシロコーチャ(湖)付近から見たシウラ・グランデ


ケシロコーチャ(湖)付近から見たカルニセーロ


シウラ峠への登り


シウラ峠への登りから見たケシロコーチャ(湖)


シウラ峠への登りから見たケシロコーチャ(手前)・シウラ湖(中央)・ガングラシャンカ湖(奥)


ランチの準備をするラウルとサントス


昼食のミートボール


シウラ峠の直下


天気が良ければ“グラン・ビスタ”だったシウラ峠


シウラ峠で思い思いに寛ぐ


シウラ峠から見たシウラ・グランデ


シウラ峠から見たカルニセーロ湖とラウラ山群の山


シウラ峠からの下りから見たカルニセーロ(右端)からワイワッシュ山群南端のトラペシオ(左端)までの山々


カルニセーロ湖の手前は苔むした道がしばらく続いた


カルニセーロ湖の手前の湿原から見たトラペシオ


カルニセーロ湖


カルニセーロ湖からワイワッシュのキャンプ地への長い下り


ワイワッシュのキャンプ地


夕食のトゥルーチャ(マス)のステーキ


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