《 13日 》

チキアン(3400m) ⇒ リャマック(3250m) ⇒ ポクパ(3470m) ⇒ マタカンチャ(4180m)

マタカンチャ(4180m) 〜 カカナン峠(4690m) 〜 トゥクトゥクパンパ(4250m)

   7月13日、この時期らしい乾燥した晴天の朝で、庭の花々にはハチドリが蜜を吸いに飛んできていた。 ホテルの朝食はシンプルだったが、焼きたてのパンとこの地方の名産のチーズが美味しかった。 朝食後にホテルにやって来たコックのラウルと再会し、8時にエージェントのワゴン車でホテルを出発した。 

   意外にもチキアンの町を過ぎた所で道路の舗装は終わり、その先は他の山岳地帯へのアプローチと同じような悪路となった。 これから向かう入山口のマタカンチャは4180mだが、道路は広い谷を逆にどんどん下り続け、最終的には2300mのリャマック川の河原付近まで高度を落としてから、ようやく上りに転じるようになった。 チキアンから1時間半ほどでリャマック(3250m)の村の入口に着くと、村が管理している通行止めのゲートがあり、村人からいくばくかの通行料を課せられた。 リャマックを過ぎるとすぐに今回のトレッキングの終着地としたポクパ(3470m)の集落があり、リャマック川を渡る橋の所に再びゲートがあった。 バスを降りて山の斜面を目でなぞっていくと、ラサック登山のB.Cとなるハウアコーチャ(湖)に通じるマンカン峠(4580m)のある位置が分かった。 ポクパの集落の先にはダムの建設現場があり、ゲートのある管理事務所から先は未舗装ながら道路の状態が良くなり、車の走行スピードが格段に速くなった。 

   マタカンチャに近づくと、広大で緑豊かな牧草地に放牧された羊や牛が多く見られるようになり、10半にワイワッシュ山群への入山口となるキャンプ場(4180m)に着いた。 キャンプ場からはワイワッシュ山群北端のニナシャンカ(5607m)とロンドイ(5879m)の頂が並んで望まれ、いやがおうにも気持ちが昂ってくる。 車から降りてしばらく体を慣らしていると、私達の荷物を運んでくれる頼もしいロバたちが、馬に乗ったロバ使い(アリエロ)に率いられてやって来た。 ロバはまるで馬のようにきびきびとした動作で私達の目を驚かせた。 

   アグリからアリエロを紹介してもらい、11時にキャンプ場を出発した。 今日はこれからカカナン峠(4690m)まで一気に登り、峠を越えた後は緩やかにミトゥコーチャ(湖)の下部に広がるトゥクトゥクパンパという草原(4250m)まで下る予定だ。 マタカンチャからワジャンカ(3450m)へと抜ける道路を眼下に見ながら、アグリに先導されて牧草地の緩やかな斜面を登っていく。 まだ体の中に下界の酸素が残っているが、今夜の宿泊標高を考えてマイペースで意識的にゆっくり登る。 所々でアグリから花の名前などを教えてもらいながら途中で1回休憩し、2時間ほど登った所でランチタイムとなる。 アグリにワイワッシュ山群でのトレッキングの経験を尋ねると、何とガイドの資格を取る前のポーター時代から数えて50回もあるとのことで驚いた。 但し、山はどれも難しいので、ラサックも登ったことはないとのことだった。 ここから先の峠付近は荒々しい岩場になっているためか、コンドルが何羽も飛んでいた。 アグリの話では大きいものは全長が4mもあるとのこと。 

   峠に近づくにつれて勾配は急になり、3時前にようやく今日の最高点のカカナン峠に着いた。 峠の手前では風は殆ど無かったが、峠は風の通り道となっていたので、写真だけ撮って休まず反対側に下った。 峠を越えると、眼下には広大なカリエンテ谷が広がり、その上流方面にはコカコーチャと呼ばれる赤茶けた池沼が見られた。 峠からジグザグに切られた道を一気に下ると、一転して勾配は緩やかになり、前方にヒリシャンカ(6094m)の頂が見えるようになった。 地図に破線で記されたヒリシャンカ方面への道はミトゥコーチャ(湖)へと通じているが、近年道の状態が良くないとのことで、その下部に広がるトゥクトゥクパンパに向かってカリエンテ谷を下った。 歩けなくなった人のために用意された馬が一頭いたので、節子さんが試しに乗ってみたが、下りではかえって疲れるようだった。 トゥクトゥクパンパの手前からヒリシャンカが眼前に大きく望まれるようになったが、写真で見たストイックなアンデス襞が印象的な西側からの山容とは趣を異にした重厚な面持ちで、全く違う山にさえ見えた。 石垣で周りを囲ったカルカを過ぎるとトゥクトゥクパンパの広い草原となり、夕方の5時にテントが整然と設営されたキャンプ地に着いた。 キャンプ地には私達の隊以外にもう一隊のテントが見られた。 

   個人用テントは妻と二人で使うことになり、しばらくするとラウルの助手役のサントスがお湯の入った洗面器をテントに届けてくれた。 到着後1時間過ぎたところでSPO2と脈拍を測ってみると、77と80だったが、頭痛はなかった。 それから1時間後に再び測ってみると87と68という良い数値だったが、逆に頭が少し痛くなり、時差ボケのためかとても眠かった。 横になると呼吸が落ちるので、座ったまま目を閉じていると、頭痛は徐々に無くなった。 

   夕食は牛肉入りのスープと牛肉と野菜の旨煮をご飯でいただく。 但し、順応してない胃腸を労るため、量は少な目(ポキート)とした。 デザートは鮮やかな色のサボテンの実とキウイ・バナナの盛り合わせだった。 満天の星空で南十字星や天の川が美しい。 月明りでヒリシャンカも良く見えた。 テントに戻ると強い睡魔に襲われすぐに眠りに落ちたが、何故か1時間足らずで目が覚めてしまい、その後も同じようなことを3回繰り返し、夜中からは軽い頭痛で全く眠れなくなってしまった。 深呼吸する気力も湧かず、予想どおりの体調の悪さとなった。


マタカンチャ(4180m) 〜 カカナン峠(4690m) 〜 トゥクトゥクパンパ(4250m)


コックのラウルと再会する


チキアンからエージェントのワゴン車でスタート地点のマタカンチャへ向かう


リャマックの村の入口には村が管理している通行止めのゲートがあった


今回のゴール地点としたポクパ村


マタカンチャに近づくと、広大で緑豊かな牧草地に放牧された羊や牛が多く見られるようになった


ニナシャンカ(5607m)とロンドイ(5879m)の頂を望むマタカンチャのキャンプ場


ポーターとなる頼もしいロバたち


アグリに先導されて牧草地の緩やかな斜面を登っていく(右上の鞍部付近がカカナン峠)


今夜の宿泊標高を考えてマイペースで意識的にゆっくり登る


ランチの後のシエスタ


峠付近は荒々しい岩場になっていた


峠付近にはコンドルが何羽も飛んでいた


カカナン峠(4690m)


カカナン峠からジグザグに切られた道を一気に下る


カカナン峠付近から見たカリエンテ谷の上流とコカコーチャと呼ばれる赤茶けた池沼


カカナン峠の下から見たヒリシャンカの頂


歩けなくなった人のために用意された馬


トゥクトゥクパンパの手前からヒリシャンカが眼前に大きく望まれるようになった


トゥクトゥクパンパのキャンプ地


デザートの鮮やかな色のサボテンの実


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