《 10月16日 》
クムジュン ( 3 7 8 0 m ) ⇒ クンデ・ピーク ( 4 2 0 0 m ) ⇒ クムジュン ( 3 7 8 0 m )
10月16日、昨夜はようやく頭痛もなく眠れた。 起床後のSPO2は86、脈拍は63だった。 天気予報では曇りだったが、朝5時半に目が覚めると窓からアマ・ダブラムが見えていた。 外に出て写真を撮っていると、岩野さんと節子さんも起きて来た。 岩野さんが昨日通った峠まで行くということで後を追う。 節子さんに飴をもらい、はやる気持ちを抑えながらゆっくりと時間を掛けて石の階段を登って峠へ向かう。 振り返ると村の背後にはクムジュンの村人が“水の神様”と崇めるクーンビラ(5761m)が新雪を纏って鎮座していた。 空が明るくなり、四方八方に白い峰々が見え始めた。 たまたま通りかかった地元の人に一番奥の山の名前を聞くと、それがエベレストだった。 ロッジから20分ほどで峠に着くと、そこからは昨日までとは全く違う大展望が待っていた。 エベレスト、ローツェ(8516m)、アマ・ダブラム、タウツェ(6367m)、タムセルク(6608m)、カンテガ(6779m)といったエベレスト街道から仰ぎ見るクーンブ山群の山々が一斉に眼前に顔を揃えたのみならず、峠の反対側にはロールワリン山群にも通じるコンデ・リ(6187m)やパルチャモ(6273m)なども大きく望まれ、ネパールが初めての節子さんのみならず、皆興奮が覚めやらなかった。
ロッジに戻って朝食を食べ、昨日の夕方ロッジに届いたアタック用の服や登攀具を点検すると、予想どおり羽毛服を始め殆どの荷物が雨で濡れていたので、ロッジの裏庭にブルーシートを広げて天日干しすることになった。 作業が終了した後、予定どおりクムジュンの村と隣接するクンデの集落の裏山のクンデ・ピーク(4200m)に高所順応のハイキングに出掛ける。 昨日までとは違うまずまずの青空で、アマ・ダブラムとタムセルクがすっきりと望まれた。 クンデの集落もクムジュンの村と同じように屋根の色を緑に統一していた。 クンデ・ピークはトレッキングルートではないため、私達以外は誰も歩いていない。 足取りも軽く、ロッジから1時間少々で4000m付近にある展望台に着いた。 あいにく今朝峠から見えたコンデ・リ方面は雲が上がってしまったが、垂涎のエベレストやローツェが遠望され、皆ではしゃぎながら写真を撮り合った。 展望台で充分山々の展望を満喫し、指呼の間のクンデ・ピークに向かう。 展望台から牧草地となっている尾根を辿り、30分足らずで地味なクンデ・ピークに着く。 山頂からはクンデの集落とクムジュンの村が良く俯瞰された。 順応が目的なので、1時間近く山頂で思い思いに寛いでから往路を戻る。 クムジュンの村のロケーションが素晴らしいことがあらためて良く分かった。
正午ちょうどにロッジに戻り、昼食を食べる。 食後にロッジの裏庭に天日干ししたアタック用の服や登攀具を見にいくと、急に小雨がパラつき始め、慌てて全ての荷物を撤収する。 暖炉に火を入れてもらい、引き続き食堂でアタック用の服や登攀具を乾かす。 まだ不安定な明日以降の天気を考え、雑貨屋で麻袋やビニール袋を妻に買ってきてもらう。 午後はのんびりと寛ぐ予定だったが、今日も荷物を乾かすことに追われ休む間もなかった。
夕食後に今回のスタッフの一員のナム・ギャルが挨拶しにきたが、昨年のヒムルン・ヒマールのスタッフのカルディンの兄ということだった。 パサンから、今日見たアマ・ダブラムは年末頃よりも雪が多く、向こう2週間以上は登れないだろうという話しがあった。 直感的にマッターホルンと同じように今シーズンの登頂は無理かなと思ったが、パサンは何度かこのような季節外れの大雪の経験があるようで、私達の日程なら大丈夫だと言った。 寝る前のSPO2と脈拍は86と67で、昨夜とあまり変わらなかった。