《 10月19日 》

C.1 ( 5 5 0 0 m ) ⇒ C.2 ( 6 1 0 0 m )

   10月19日、6時前に起床し、少し凍った水からお湯を沸かす。 昨夜は予想どおり頭痛で何度も目が覚めた。 今日は6416mの前衛峰の途中にあるC.2(6100m)まで登って泊まる。 体調は昨日と同じように悪いが、悪いことに体と気持ちが慣れてきたことが唯一の救いだ。 朝食はお茶碗一杯くらいの量のフリーズドライのピラフを時間をかけてゆっくり食べた。  8時にサーダーのパサン以下6人のスタッフ達がB.Cから上がってきた。 パサン以外のスタッフ達が先行し、私達とパサンが8時過ぎにC.1を出発する。 氷河の末端でアイゼンを着け、いよいよここからヒムルン・ヒマールの懐に入る。 快晴無風の天気がありがたい。 陽射しと照り返しが強く、昨日までよりも暖かく(暑く)感じる。

   氷河上からはガイドの平岡さんが先頭になり、パサンが殿(しんがり)に付く。 その間を私達6人の隊員が個々のペースで登って行く。 C.1へデポした食糧などが無くなった分、荷物は昨日よりも少し減ったが、1年ぶりに高所靴で登るのは疲れる。 るみちゃんも体調があまり良くないみたいだ。 私達の隊以外は氷河上にC.1を建設しており、そのテントの脇を通って登って行く。 C.1のすぐ上のセラック帯は左から迂回し、所々で雪の無いモレーンの上を通りながら登る。 セラック帯を抜けると、これから辿る荒々しい氷河のルートの全容が見渡せ、そのスケールの大きさに思わず息を呑む。 そのほぼ真ん中をC.2方面へ明瞭なトレースが続いていた。 緩やかに少し下った広い鞍部で長めの休憩をとる。 ここから先には大きなクレヴァス帯があるので、C.2までゆっくり休めそうな場所は無さそうだ。 

   鞍部からの登り始めは緩やかだったが、見た目どおり次第に傾斜が増してくる。 間もなくスタッフ達が張ってくれたフィックスロープが現れ、ユマールをセットして登る。 急斜面の登りではゆっくり登っても負荷が掛かり、体内の酸素が一気に奪われる。 クレヴァス帯に入ると、地形に合わせて巧みにフィックスロープが張られ、ここしばらく大雪が降っていないため足元の雪も安定していたので、見た目よりも登るのは楽だった。 労せずして30分ほどでクレヴァス帯の核心部を抜けると、今度は風が少し出てきた。 しばらくは緩やかだった斜面の傾斜が再び急になり、ユマーリングで登る皆のペースも徐々に上がらなくなってきた。 

   C.1から6時間を要し、6416mの前衛峰の途中の僅かな平坦地に建設されたC.2(6100m)に2時過ぎに着いた。 体内の酸素を使い果たし、足はもう言うことを聞かないが、体調が悪い中でC.2まで来れたことが嬉しい。 先に着いたスタッフからジュースをもらい、一気に飲み干した。 C.2からはラトナチュリ(7035m)が再び見えるようになり、ロケーションは抜群だが、背後には急斜面の雪壁が立ちはだかり、C.3や山頂方面は全く見えなかった。

   割石さんと一緒にテントに入ったが、テントの下の凸凹が予想以上に酷かった。 テントの下に雪を入れて均せば少しは快適に過ごせるだろうが、今日はそれをする元気は全く無い。 それどころか到着して間もなく頭痛が始まった。 SPO2と脈拍は73と100でそれほど悪くないが、数値以上に消耗が激しい感じだ。 スタッフが水を作るための雪を集めてきてくれたので助かった。 水を作りながらコーヒーなどをどんどん飲むが、頭痛は治まらず、首もだるくなり、とうとう気分も悪くなってきた。 割石さんと話をする元気もなく、終始無言のまま過ごした。 夕方になってもSPO2と脈拍は68と94で、殆ど良くなっていなかった。 夕食はカップ麺だけしか体が受け付けず、地獄の夜が始まろうとしていた。

 

C.1から見たアンナプルナ山群


サーダーのパサン以下6人のスタッフ達がB.Cから上がってきた


氷河の取り付きから見たギャジカン(7038m)


氷河を登り始める


私達の隊以外は氷河上にC.1を建設していた


セラック帯を左から迂回する


セラック帯を抜けると、これから辿る荒々しい氷河のルートの全容が見渡せた


C.2方面への明瞭なトレース


平らな鞍部で長めの休憩をとる


クレヴァス帯に向けて登る


フィックスロープにユマールをセットして登る


クレヴァス帯の入口


クレヴァス帯では地形に合わせて巧みにフィックスロープが張られていた


クレヴァス帯の核心部


クレヴァス帯の核心部は足元の雪が安定していた


クレヴァス帯を抜ける


フィックスロープをユマールで登る


C.2直下では再び斜面の傾斜が急になった


C.2直下をユマーリングで登る皆のペースも徐々に上がらなくなってきた


6416mの前衛峰の途中の僅かな平坦地に建設されたC.2(6100m)


C.3へ上がる急斜面の雪壁


C.2で先に着いたスタッフ達に迎えられる


C.2に到着した藤田さん


C.2に到着した滝口さん


C.2に到着した割石さんと泉さん


C.2に到着したるみちゃん


C.2全景


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