《 9月5日 》

B.C  ( 4 7 5 0 m )

   9月5日、昨夜はみぞれが降ったが夜明け前から晴れとなった。 今朝も青空の下にマナスルが見える。 真夜中に軽い頭痛で起きた時のSPO2は71、起床前のSPO2と脈拍は78と59で昨日よりもほんの僅かだが良くなった。 起床後のSPO2は88となり、順応の指標となる90台までもう少しだ。 相変わらずお腹の調子は良いが、昨日の冷たい雨の中のプジャのせいか持病の鼻づまりが少しする。 明日からの順応ステージに備えて早朝からスタッフがC.1までのルート工作とテントの設置に出掛けたとのことだった。

   朝食後はチーフガイドのエイドリアンからユマールやカラビナを使った一般的なフィックスロープの登り方、ATCを使ったフィックスロープの懸垂下降のやり方、悪天候時に素早い行動をするために実際の現場で行われている腕をフィックスロープに絡めて下る方法、そして登り下りのすれ違いの方法などについて一通りのレクチャーがあり、B.Cの背後の岩場にナイロンのロープを張って練習を行った。 この登攀用ではないナイロンのロープは練習用の物だと思っていたが、実際にこれがフィックスロープとして使われていることが後で分かって驚いた。 ある程度の長さのユマーリングは4年前にマッキンリーでB.CからH.Cへ上がる区間でやったことがあったが、今回はこれがメインになる。 久々に体を動かしたので、いつもは何でもないユマーリングやカラビナの掛け替えの動作で酸欠となり、気分も少し悪くなった。 本番を想定してオーバーミトンで練習したかったが、軍手でやるのが精一杯だった。 1時間ほどで雨が降り始めたので練習は午前中で終わりとなったが、これから更なる高みを目指すのであれば、日本でも定期的にユマーリングの練習をすることが絶対に必要だと痛感した。

   昼食は普通に食べられたが、酸欠で頭が少し重くなった。 昼食後はB.Cに来てから初めて2時間ほど昼寝をした。 午後はシャワールームが空いていたので簡易シャワーで腰から下だけを洗ったが、これだけでもかなりリフレッシュ出来た。 逆に頭はすでに1週間以上洗ってないが、不思議とストレスは全くなかった。 

   夕食後にラッセルから明日からの順応ステージで使うトランシーバーが各人に貸与され、操作方法と本部への連絡事項などについての説明があった。 上部キャンプに出発する時間と到着した時間を各人が本部にその都度無線で連絡するのがこの隊の基本のようで、当然のことながらその内容は全隊員がリアルタイムに傍受することになる。 緊急事態に対応するため本部とガイドは24時間開局するとのことだった。 ラッセルは各人にトランシーバーを貸与して緊急時の安全性を高めたり自己責任を果たさせると同時に、全隊員のキャンプ間の所要時間を記録・管理することによって、客観的に順応度合いや能力を把握するという合理的なシステムを実践していることが分かった。


B.Cから見た朝のマナスル


チーフガイドのエイドリアンからユマールの使い方の講習を受ける


フィックスロープをユマールで登る訓練


フィックスロープにカラビナを掛けて登る訓練


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マ ナ ス ル