《 プロローグ 》

   マウント・レーニア(4392m)は山の師匠の故坪山淑子さんが、広島山の会の吉村さんらと共に20年前に登ったアメリカの山で、彼女からその土産話を聞いた時に初めてこの山の名前や存在を知ったことは記憶に新しい。 同峰はアメリカ西海岸地帯を南北1千キロに亘って連なるカスケード山脈の最高峰でもあり、同峰が聳えるワシントン州のシアトルに近いタコマの町の日系人からは“タコマ富士”と呼ばれ親しまれているが、残念ながら日本ではその知名度は低い。 同峰へはいつか妻らと共に登りたいと計画を温めていたところ、図らずも岳友でセブン・サミッターの柴田さんからお誘いがあり、二つ返事でご一緒することになった。

   今回のレーニア登山については柴田さんが事前に色々と調べてくれたが、同峰が国立公園内にあるため1日の入山者数が規制されていることや、事前に様々な手続きが必要なことが分った。 最初の手続きは、登山料として50ドル(24歳以下は35ドル)を事前にクレジットカードで支払うことで、次は宿泊するキャンプ地(今回はキャンプ・ミュア)の予約で、3月15日から31日までの間に宿泊を希望する4日以内の連続した日をネットで申し込んだ。 このキャンプ地の予約は1回につき20ドルをクレジトカードで支払うが、さらに4月以降に抽選があり、抽選に外れた場合でも20ドルは返金されない。 抽選に当たって予約が確定した場合は、入山前にレンジャーステーションに行きパーミット(登山許可証)を受け取る。 抽選に外れた場合は、入山日の前日の朝7時からレンジャーステーションで登山許可証の申請が出来るが、その数は入山者全体の30%となっている。 またそれ以外にも、当日の10時からキャンセル待ちで登山許可証の申請が出来るようだった。 今回は柴田さんと私で3通りの日程のパターン(総額60ドル)で予約をしたが、抽選に当たったのは週末に掛からない月曜日から木曜日までの4日間のもの1つだけだった。

   登山期間については7月と8月の2か月が晴天率が一番高いベストシーズンということで、7月の中旬から下旬にかけて実施することにした。 レーニア登山は登山口のパラダイス(1650m)という観光地から通常1泊2日か2泊3日、最長でも3泊4日で行われるが、途中のキャンプ・ミュア(3100m)での宿泊の予約が確定している期間が全て悪天候で山に登れなかった場合に、現地で登山許可の申請をしながら登るチャンスを得ることを考えて予備日を多めにとり、最終的に7月11日から23日の約2週間の滞在日程で臨むことになった。 なお、キャンプ・ミュアには公共の避難小屋があるが、小屋は小さく7月と8月は混雑することが必至なので、テントで泊まることに迷いはなかった。

   現地での宿泊はいずれもツインルームのホテルまたはモーテルで、時差ボケの解消のためゲートウェイのシアトルに3泊(1泊264ドル)、キャンプ地の予約の期間にいつでも対応出来るように登山口のパラダイスに3泊(1泊154ドル/シャワーなしと1泊244ドル/シャワーあり)、帰国日の前日のシアトルに1泊(1泊113ドル)という予約を柴田さんがネットで行い、レンタカーについてはシアトルからパラダイスへ向かう日からシアトルに戻るまでの10日間を、以前柴田さんが利用したことがあるというスリフティ(Thrifty)という会社から一日当たり4,900円で借りることにした。 エアーチケットについては、JALが成田からシアトルへの路線に4月から就航することになったキャンペーンで、夏休み期間中の繁忙期にもかかわらず諸費用込みで130,000円で買うことが出来た。

   出発の1か月前に柴田さんと富士山に登って泊まり、装備品の点検とレーニア山行の全般的な打ち合わせを行った。


ワシントン州の地図


リフレクションレイクから見たマウント・レーニア


N E X T  ⇒  《 7月11日 》

マウント・レーニア