《 10月28日 》

C.3 ( 6 4 0 0 m ) ⇒ C.2 ( 6 1 0 0 m ) ⇒ C.1 ( 5 5 0 0 m ) ⇒ B.C ( 4 9 2 0 m )

   10月28日、極度の疲労と酸欠状態が6400mの高度でどのような症状を引き起こすのか不安だったが、疲れが優先していたのか、サミットが良い順応となったのか、図らずもここ数日で一番良く眠れた。 風もなく晴天の朝で安堵する。 テントに陽が当たるようになってから指の不自由な割石さんの下山の準備を手伝い、パサンと一緒にB.Cに下る割石さんを見送ってから、ゆっくりと下山の準備をして11時過ぎに全員一緒にC.3を出発する。 すでに雲が湧き始め、昨日よりも少し天気が悪い。 

   C.3から指呼の間の6416mの前衛峰へ登り返す。 泉さんの足取りが捗らず、平岡さんと雑談を交わしていると、時間切れで引き返したとばかり思っていた本隊も夕方の5時に登頂したということが分かり驚いた。 前衛峰で最後のヒムルン・ヒマールの雄姿を目に焼き付け、C.3の撤収を終えたスタッフ達に道を譲る。 前衛峰からは要所要所にフィックスロープがあるので、私とるみちゃんと滝口さんは各々のペースで下ることになった。 今日は一番元気なるみちゃんが終始先頭となる。 アタック日が一日遅れの今日だったら登頂出来たのではないかと思うと残念だ。 後ろから下ってくる滝口さんも相当疲れているようで、なかなか追いついてこない。 最後尾の泉さんは平岡さんと一緒に休み休み下ってくるが、いつの間にか二人の姿は見えなくなった。 昨日の長時間行動での消耗が激しく、C.3からC.2への下りは予想をだいぶ上回り、3時間ほど掛かってしまった。 C.2では先行していたスタッフ達により撤収作業が行われていた。 

   C.2にデポしたジャケットやオーバーパンツなどを回収し、滝口さんが懸垂でC.2へ下ってくるのを待ってからるみちゃんとC.1へ下る。 相変らず足の踏ん張りが利かないため、急斜面のフィックスロープの下りに時間が掛かる。 明後日以降は天気が崩れるのか、C.2からC.1への下りでは登ってくる隊の姿は見られなかった。 高度が下がっても体の酸欠状態は全く解消されず、C.1手前のちょっとした登り返しでもすぐに息が上がってしまう。 結局C.2からC.1への下りも2時間以上掛かった。 C.1にはB.Cからキッチンスタッフのマニが上がってきてくれ、お茶とおにぎりの差し入れをしてくれたが、これがどんな御馳走よりも美味しく感じた。 C.1にデポしたものは全て明日スタッフ達がB.Cに下してくれるとのことで、その好意にも甘えることにした。 高所靴を脱いでハイキングシューズに履き替えると、身も心も急に軽くなった。 

   秋が深まってきたのか、日が暮れるのも早くなり、夕陽に照らされた6416mの前衛峰が淡く染まり始めた。 滝口さんの到着を待って、るみちゃんとB.Cへ下る。 間もなく日没となったが、ヘッドランプの電池が殆どなかったので、るみちゃんに先導してもらう。 眼下にB.Cの灯りが微かに見えてくると、それが街の明かりのようにさえ思えた。 

   6時半に待望のB.Cへ到着。 ヒムルン・ヒマールへのアタックは終わった。 先に到着していた割石さんに声を掛けると、指の凍傷以外は相変わらずとても元気だったので安堵する。 疲れと脱力感で何もする気がおこらず、テントの傍らの岩の上に座って皆が下りてくるのを待つ。 登頂と下山の余韻に浸りながら後続隊の到着を1時間ほど待ち、着替えをしてから夕食を食べにダイニングテントに集まる。 疲労によりメンバー全員の顔が揃わず、打ち上げの宴は明日の晩に持ち越しとなった。

 

朝のC.3


パサンと一緒にB.Cに下る割石さん


C.3から見たヒムルン・ヒマール


全員一緒にC.3を出発する


6416mの前衛峰への登り返し


前衛峰からは一番元気なるみちゃんが終始先頭でC.2へ下る


泉さんは平岡さんと一緒に休み休み下る


C.2へ下る滝口さん


C.2では先行していたスタッフ達により撤収作業が行われていた


C.2手前の急斜面を懸垂で下るるみちゃん


C.2手前の急斜面を懸垂で下る滝口さん


足の踏ん張りが利かないため、急斜面のフィックスロープの下りに時間が掛かる


クレバス帯を下るるみちゃん


滝口さんとプルテンバ


C.2からC.1への下りでは登ってくる隊の姿は見られなかった


C.1にはB.Cからキッチンスタッフのマニが上がってきてくれた


夕陽に照らされた6416mの前衛峰が淡く染まり始める


ヘッドランプの電池が殆どなかったので、るみちゃんに先導してもらいながらB.Cへ下る


待望のB.Cへ到着する


夕食の焼き鳥


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ヒムルン・ヒマール