《 10月22日 》

B.C ( 4 9 2 0 m )

   10月22日、起床後のSPO2と脈拍は86と58で、まずまずの数値だった。 藤田さんは今朝も一番元気で、何故凍傷になってしまったのかその原因は分からない。 唯一の客観的な理由は、74歳という年齢の高さだ。 包帯の上からオーバー手袋で保護した指が痛々しいが、それ以上にアタックを目前にして下山しなければならない藤田さんの気持ちの方が痛々しい。 朝食は日本から持参したインスタントのとんこつラーメンをキッチンスタッフに作ってもらう。 コックのドゥルゲは私達が順応活動に行っている間に風邪をひいたのか、喉をやられて声がかすれていた。 

   救援のヘリがカトマンドゥを7時に発つということで、7時半前からまだ陽の当たらない寒々しいB.Cの下段の臨時のヘリポートで首を長くして待つ。 8時半にようやく小型のヘリが到着すると、あっという間に藤田さんを収容していった。 B.Cに居合わせた他の隊の人達は突然のヘリの飛来に、何事が起ったのかと驚いただろう。 機上の藤田さんを皆複雑な気持ちで見送ったが、カトマンドゥからは何と鶏肉と新鮮な野菜が運ばれてきた。 この辺りのフレキシブルな“システム”は日本では考えられない。 皮肉にも藤田さんのお蔭で夕食には美味しいレバ付きの焼き鳥を堪能することとなった。 

   体は楽だが朝食後のSPO2と脈拍は84と62で、まだB.Cの高度に完全には順応していないようだ。 今日は風も無く穏やかな快晴の天気で、午前中はダイニングテントで海外の山の話で盛り上がる。 日本の山の話が一切出ないところが面白い。 昼食に豚肉の入ったタルカリダルバートを食べ、午後は意識的に何もせず個人用テントで昼寝をして過ごした。 

   休養が功を奏したのか、夕食前にSPO2と脈拍は90と55になり、これなら明日以降はもう大丈夫だろうと思ったのも束の間、夜シュラフに入る直前に突然軽い悪寒がして、夜中には喉も痛くなってきた。


今朝も一番元気な藤田さん


B.Cの下段の臨時のヘリポートでヘリが来るのを首を長くして待つ


救援に着た小型のヘリ


ヘリはあっという間に藤田さんを収容していった


風も無く穏やかな快晴の天気のB.C


豚肉の入ったタルカリダルバート


夕食のレバ付きの焼き鳥


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ヒムルン・ヒマール