2 0 0 9 年 7 月

《 20日 〜 22日 》    ラグーナ69

    カルアス ⇒ リャンガヌーコ湖 ⇒ ポルタチュエロ・リャンガヌーコ峠 〜 ユラクコラル 〜 ラグーナ69 〜 ユラクコラル ⇒ カルアス

   7月20日、青空は見えているが今日も雲が多い天気だ。 冬なので日の出の時間は6時くらいと遅く、気温は日本の秋のような感じだ。 ホテルの朝食は夕食と同様に丁寧な作りで気持ち良い。 今日は高所順応でポルタチュエロ・リャンガヌーコ峠(4767m)まで車で行き、そこから歩いて下るハイキングをする予定だ。

   カルアスからエージェントの車で幹線道路をユンガイ(2500m)に向かう。 30分足らずで通過したユンガイの町は人口が僅か1200人ということだが、1970年5月に起きた大地震とそれに誘発されたワスカランの雪崩と土石流により町が全て埋まり、2万人が亡くなるという不幸な歴史を持つ町だ。 ユンガイから北東へリャンガヌーコ谷への山道に入る。 道幅は広いが凹凸が激しく、車がマイクロバスのせいもあり激しく揺れる。 乗り物に弱い人は乗ってられないだろう。 雲が多いながらも車窓から双耳峰のワスカランと4つのピークを持つワンドイ(6395m)が見え始め、皆の目が釘付けとなる。 途中2箇所のビューポイントで車を降り、憧れの山と対峙しながら撮影大会となる。 ワスカランは南峰(6768m)と北峰(6664m)がある双耳峰だが、両峰の間のコル(6010m)からの独立度を考えると南峰と北峰は全く別の山で、麓からの標高差も大きいため、ペルーの最高峰に相応しい大きな山であることが良く分かった。 途中に国立公園の管理事務所とゲートがあり、@65ソーレス(邦貨で約2,000円/1シーズン有効)を支払う。 ワスカラン国立公園は1985年にユネスコ世界遺産に登録された自然の楽園だ。 間もなく眼下にリャンガヌーコ湖(チナンコーチャとオルコンコーチャという上下二つの湖に分かれている)という美しい湖が見え、湖畔にある今日の宿泊地のユラクコラルのキャンプ場(3880m)に着いた。

   広く開放感のある湖畔のキャンプ場には、すでに先行していたエージェントのスタッフにより各人のテントと大きなダイニングテントが設営されていた。 ラウルという若いコックが昼食にトゥルーチャ(鱒)の唐揚げを作ってくれたが、味付けが日本人好みでとても美味しく、これからの山中での食事に期待が持てた。 パルスの数値は64%しかなかったが、特に何かの症状が出ている訳ではないので気にしないことにした。

   昼食をゆっくり食べてから再び車に乗り、車道の最高点となるポルタチュエロ・リャンガヌーコ峠(4767m)に向かう。 これまでになく道路は勾配を増し、九十九折れのヘアピンカーブが断続的に続く。 ようやく辿り着いた峠は、凹型に両側の岩壁を粗く削り取って反対側のモロコチャ谷に抜けていた。 ガイドブックによれば、この峠からの展望は素晴らしく、ワンドイ(6935m)・ピスコ(5752m)・チャクララフ(6112m)・ヤナパクチャ(5460m)・チョピカルキ(6354m)そしてワスカランが一望されると記されていたが、午後になるにつれて天気は悪化し、山々は全て灰色の雲の帽子を被っていた。 高所順応とは言え、せっかくの楽しみがなくなってしまい残念だ。

   峠からは辿ってきた車道とは別に湖畔のキャンプ場の近くまで通じているトレイルがあり、車を下に回送してキャンプ場に向けて下る。 下りとは言え高所順応が目的なので、意識的にゆっくり歩く。 小雨がパラつき始め、一時は雪のようなあられとなった。 写真を撮るような天気ではないので、目線は自然と足元の高山植物にいく。 日本にはない高山植物もあり、意外にもルピナスの群生がそこらじゅうに見られた。 約1時間で450mほど下り、先ほどの車道に合流するとエージエントの車が待っていた。 さらに車道を歩いてキャンプ場まで下ることも出来たが、天気も悪いのでここで今日のハイキングは終了となった。

   キャンプ場に戻り、快適なダイニングテントでお茶を飲みながら寛いでいると、リサというベロニカの高校生の娘が現れた。 学校がインフルエンザで休校になったので母親の仕事の手伝い、一段上のキャンプ場にいるアメリカ人のグループの世話をしているとのことだった。 夕食は炒飯や酢豚などの中華料理だった。 コック(コシロネ)のラウルは料理上手のみならず人一倍研究熱心で、その明るいキャラクターも手伝って、滞在中は皆のアイドル的な存在となった。 パルスの数値は80%だったが、時々思い出したかのように軽い頭痛がするだけだったので、順応が比較的遅い私にとってはまずまずの体調だった。


ホテルの朝食


ユンガイ付近の山麓から見たワスカラン(右が南峰・左が北峰)


ユンガイ付近の山麓から見たワンドイ(西峰)


リャンガヌーコ湖(チナンコーチャ湖)


ユラクコラルのキャンプ場


昼食のトゥルーチャ(鱒)の唐揚げ


リャンガヌーコ谷とリャンガヌーコ湖(オルコンコーチャ湖)


ポルタチュエロ・ リャンガヌーコ峠への車道


車道の最高点のポルタチュエロ・ リャンガヌーコ峠(4767m)


ポルタチュエロ・ リャンガヌーコ峠


ポルタチュエロ・ リャンガヌーコ峠からキャンプ場へ


ポルタチュエロ・ リャンガヌーコ峠からキャンプ場へ


ルピナス


快適なダイニングテント


料理上手のコックのラウル


夕食の炒飯と酢豚


   7月21日、まだ薄暗い6時に洗面器に入ったお湯と暖かい飲み物がスタッフからテントに届けられて驚く。 ポーター(ポルタドール)やロバ(ブーロ)などに依存する一般的なペルーでのトレッキングではこれが基本のスタイルらしい。 パルスの数値は75%とあまり良くないが、頭痛もなくすっきり眠れた。 伊丹さんがだいぶ辛そうだが、毎度のことなので大丈夫だろう。 朝食には少し柔らかいご飯も出され、食べ物には何一つ不自由はない。

   今朝も快晴ではないが、昨日より青空の占める割合は多い。 今日は高所順応のハイキングでここからデマンダ谷を遡り、ラグーナ69(4550m)という湖まで歩いて往復してから車でカルアスに戻る。 写真で見たラグーナ69は光沢のあるブルーの水を湛えた神秘的な湖だ。 8時前に車でキャンプ場を出発し、数分後に路肩に数台の車が停まっていた登山口で車を降りる。 U字谷の側壁の上にヒマラヤ襞の発達した荒々しいチャクララフの白い頂稜部が見え、その迫力ある姿に息を呑む。 道路から樹林帯を少し下ってデマンダ谷に下り立つと、セボヤパンパという草原が広がり、川沿いのキャンプ場には沢山のテントが張られ、ブランカ山群で一番登られている山のピスコとワンドイへのトレイルを示す標識があった。

   キャンプ場を過ぎても草原の中のトレイルは勾配が緩く、時々左手の側壁の背後からワンドイ南峰の尖ったピークが顔を出す。 振り返るとワスカラン北峰の巨大な山塊が圧倒的な高さで聳え立っていた。 天気が不安定なのか山頂には笠雲が取り付いていたが、次第に南峰も見えるようになってきた。 今日も高所順応が目的なので各々のペースで意識的にゆっくり歩く。 車を降りてから1時間半ほど過ぎた辺りで谷が狭まり、トレイルの勾配が増してきた。 氷河から流れ出す滝を擁する大きな岩壁の上にチャクララフが見え、急坂をジグザグに登っていくと小さな池があり、ピスコ東峰(5700m)と西峰(5752m)の眺めが良かった。 勾配のない広い草原の脇をしばらく歩いてから、再び勾配がきつくなったトレイルを30分ほど頑張って登る。 振り返るとヤナパクチャ(5460m)の眺めが良かった。

   モレーンの背に乗るとピスコが次第に近づき、間もなくラグーナ69の鮮やかな青い湖面が目に飛び込んできた。 眼前にはチャクララフがまるで屏風のように屹立し、ピスコが名脇役のようにその絶景を引き立てている。 休む間もなくカメラのシャッターを切り、少しでも良い撮影ポイントを探すため湖畔を奔走する。 10年前に訪れたカナダのロッキー山脈で数々の神秘的な湖沼を見たが、それに負けるとも劣らないラグーナ69の湖面の美しさにいつまでも感動が覚めやらない。 しばらくすると皆も休憩を終えて動き出し、湖畔で撮影大会となった。

   青空は見えるが天気は優れず、一時は小雪が舞うほどだったが、順応のため2時間ほど湖畔に滞在し、後ろ髪を引かれる思いでラグーナ69を後にした。 天気はその後も良くならず、帰路ではワスカランは雲で見えなくなっていた。 ラグーナ69から2時間ほどで登山口に戻ると、偶然にもピスコを登られて下山してきたという日本人の男性二人と出会った。 彼らはこれからアルパマヨ(5947m)とキタラフ(6036m)を登りに行かれるとのことだったが、今回の滞在中に山中で出会った日本人はこの方達だけだった。

   登山口で待っていたエージエントの車でカルアスに帰る。 車の揺れは激しかったが、疲れと時差ボケのせいで途中のユンガイまで居眠りをする。 カルアスのホテルに予定より遅く着いたので、外食はやめてホテルで夕食を食べる。 今晩は鶏肉がメインで、センスの良い美味しい料理に舌鼓を打つ。 何となくだが酸素の濃さを実感した。


ラグーナ69の登山口


セボヤパンパのキャンプ場


セボヤパンパから見たチャクララフの白い頂稜部


デマンダ谷から見たワスカラン南峰(左)と北峰(右)


デマンダ谷とワスカラン北峰


チャクララフ


ピスコ東峰


ヤナパクチャ(右)


ピスコ東峰(中央)と西峰(左)


ラグーナ69


ラグーナ69


ラグーナ69から見たピスコ東峰(左)


ラグーナ69から見たチャクララフ


高所順応のため2時間ほど湖畔に滞在する


夕食のメインディッシュの鶏肉


   翌7月22日は予定どおり休養日となったが、平岡さんの提案で午前中に『チャンコス温泉』というこの辺りでは有名な温泉施設に皆で行くことになった。 ホテルから車で数10分のチャンコス温泉はとても地味な造りだったが、2ソーレス(邦貨で約60円)の入場料を払って中に入ると、水着で入る温水プール・別料金となる洞窟状のサウナ風呂・3畳ほどの広さの個室の風呂が20部屋ほどあった。 湯舟に浸かれたのは嬉しかったが、お湯の温度が低かったので、あまり快適な居心地ではなかった。

   昼食は町外れのレストランの中庭で牛肉のステーキなどを食べた。 明日から向かうイシンカ谷方面には、ウルス(5495m)やランラパルカ(6162m)といった山々が見えたが、イシンカやトクヤラフはそれらの山々に隠されて見えなかった。 夕食は地元の人達で賑わう庶民的な鶏肉料理の店で蒸し焼きの鶏肉を堪能した。


チャンコス温泉


水着で入る温水プール


畳ほどの広さの個室の風呂


町外れのレストランでの昼食


昼食のステーキ


レストランの中庭


イシンカ谷方面の山々   左がウルス(5495m)


地元の人達で賑わう庶民的な鶏肉料理の店


夕食の蒸し焼きの鶏肉


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