1  9  9  8  年    6  月  

《 13日 》    芦別岳

   新道登山口 〜 覚太郎コース分岐 〜 半面山 〜 雲峰山 〜 芦別岳  (往復)

   6月13日、目が覚めると眼前の十勝連峰は微笑んでいた。 直ちに富良野の市街を横切り、登山口の山部町へと車を走らせた。 車窓から見た芦別岳は裾野が短く、麓から屹立した山容だった。 新道登山口の駐車場には土曜日ということもあってか、すでに20台ほどの車が停まっていた。 夏山としては遅すぎる7時半の出発となってしまったが、なぜかとても爽やかな気持ちで芦別岳の懐に飛び込んでいった。


麓から見た芦別岳


   樹林帯の急坂を1時間ほど登ると、富良野盆地を挟んで十勝や大雪の山々が見える場所があり一息入れる。 再び樹林帯の登山道を1時間ほど登ると、旧道コースにある避難小屋へ通じる『覚太郎コース』の分岐に着いた。 分岐からは傾斜が緩くなり、新緑のダケカンバの林の中をしばらく登ると、ようやく半面山という一つ目の前衛峰(七合目あたり)に着いた。 ここからは十勝・大雪・日高の山並みが望まれるのと同時に、雲峰山と呼ばれるピーク(八合目あたり)の左側に芦別岳の山頂が見えた。


半面山から見た雲峰山(右)と芦別岳(左)


   半面山から雲峰山までは周囲の木々も低くなり、明るく楽しい道となった。 半面山から30分ほどで二つ目の前衛峰の雲峰山に着く。 ここから見た芦別岳は重厚な面持ちでどっしりと鎮座している。 目を右に向けると、雪渓の谷(本谷)の向こうにピラミダルな北尾根や夫婦岩と呼ばれる岩峰が望まれ、再訪する機会があれば、紅葉の時期に北尾根を通る旧道コースを登ろうと思った。 雲峰山から芦別岳の山頂までは展望の尾根歩きで、ジグザグの急登も鼻歌交じりで足取りは軽い。 山頂手前の岩肌にべったりと付いた雪渓の急坂を登り、11時半に待望の芦別岳の山頂に着いた。


雲峰山と芦別岳の間から見た芦別岳


雲峰山と芦別岳の間から見た北尾根


   予想どおり山頂からの展望は素晴らしく、眼前の十勝や大雪の山はいうまでもなく、長大な日高山脈の山々、先日登った夕張岳、目を凝らせば西の方角に暑寒別岳なども遠望された。 しかし何といっても一番印象的だったのは、眼下に広がる平らな富良野盆地と、そこから1400mせり上がった芦別岳のアンバランスさが作り出しているユニークな景観だった。 狭い岩峰の山頂には10人ほどの登山者が思い思いに寛いでいたが、半分くらいが地元の人でリピーターも多かった。 例年この時期は残雪が豊富で、アイゼン・ピッケルがないと山頂付近の雪渓は怖いという。 本州のみならず、北海道も今年は雪が少なかったようだ。 芦別岳の北に隣接する崕山(きりぎしやま)は花の宝庫だが、盗掘が多いので地図やガイドブックへの掲載を見合わせているという貴重な情報が得られた。


芦別岳の山頂から見たポントナシベツ岳と夕張岳(中央遠景)


   旧道コースからの再訪を誓い、昼過ぎに去り難い山頂を後にする。 下山中にラジオの天気予報を聞きながら明日以降の計画を立てる。 明日は羊蹄山への移動日だったが、天気が良いのは明日までということで、富良野に留まって美瑛岳と美瑛富士を登ることにした。 下山後は富良野の町外れの丘にあるレジャー施設『ハイランドふらの』の温泉に入り、そのレストランで夕食を食べたが、窓から見える十勝岳や美瑛岳のシルエットが美しかった。 コンビニで明日の食料を買い、今宵も千望峠のパーキングに泊まった。


北 海 道    ・    山 行 記    ・    T O P