《 5月1日 》
ヤルンH.C(5289m) 〜 ヤルン・リ(5647m) 〜 ヤルンB.C(4994m) 〜 ナー(4180m)
5月1日、4時前に起床して朝食のカップ麺を食べる。 SPO2は72、脈拍は73で熱もあるが体調は不思議と良かった。 周囲が明るくなると、ダワが雇用した地元のベディン在住の案内人がやってきたが、この案内人がとんでもない人物だったことは、この時は知る由もなかった。 昨夜からの雪が降り止まないため、予定していた5時に出発出来ず、テントの中で待機する。 6時に平岡さんから、天候の回復が見込まれないため登山を中止する決定があった。 この日のために体調を調整してきたが、この天気では仕方が無い。 B.Cにいるポーター達もすぐにH.Cに上がってこれないので、個人装備は全て背負って下ろすように指示があった。 気持ちを切り替えてパッキングに精を出していると嘘のように天気が変わり、抜けるような青空の下にヤルン・リが見えたので、急遽予定を変更して登ることになった。
予定よりも2時間半遅れて7時半にH.Cを出発。 ハーネスのみを着けてロープは結ばず、アイゼンもまだ着けない。 飛び入りの案内人と田口さんが先行し、降り積もった新雪をラッセルしていく。 疑似晴天だったのか青空はすぐに消え、いつもの曇天に戻ってしまったが、天気の回復を祈りながら登り続ける。 雪がなければ踏み跡がありそうな岩棚をしばらく登ると、カールの底のような広い雪原に出た。 後続の木賊さんは体調を考慮してラクパと共にH.Cに戻ったようだ。 正面に見える雪壁に向かって雪原を横断し、雪壁の基部でアイゼンを着ける。
雪壁は見た目ほど急ではなく、先行する田口さん達が付けてくれたステップで登り易かった。 ありがたいことに風は全く無かったが天気は悪くなる一方で、先行する二人の姿もいつの間にか見えなくなった。 雪壁から顕著な尾根に取り付くと間もなく案内人がデポしたザックとロープがあった。 高度計を見ると山頂までの標高差が120mほどだったので、二人がラストスパートに入ったのだろうと思えた。 ダワから休憩の提案があったが、天気が更に悪化する可能性があったので、石塚さんの意見も聞かずにこれを断り、ゆっくりだが足を止めずに登り続けた。 間もなく田口さんと案内人が足早に下ってきたので登頂を確信した。 ラッセルしてくれた二人を労って山頂の様子などを教えてもらう。 平岡さんから休憩を促され、行動食を頬張りながら一息つく。 休憩後しばらく登ると、ダワが後ろを振り向いて写真を撮ったので、そこが山頂だと分った。
ホアイトアウトした猫の額ほどの狭い山頂からは周囲の景色は何も見えなかったが、一旦は中止となった切羽詰まった状況で、新たな山頂を踏めたことは感動的だった。 天気がますます悪くなることが予見されたため、記念写真を撮り合っただけで僅か数分で山頂を後にする。 下りもロープは結ばず、スピーディーにアイゼンを着けた雪壁の基部まで一気に下った。 気持ちが昂揚していたのか、テントが撤収されたH.Cの跡地を気付かずに通り過ぎ、正午過ぎにポーター達が待つB.Cに着いた。 シャム・ダイが作ってくれたカレー風味のジャガイモ料理をお腹一杯に食べた。
登攀具などをポーターに預け、靴もトレッキングシューズに履き替えてナーのロッジに下る。 往路よりも雪の量は格段に増え、ポーター達はチェーンスパイクを履いていた。 雪は下るにつれて小降りとなったが、麓のナーでも積雪が見られた。
ロッジには明日からパルチャモを目指すというパーティーなどの姿が見られた。 夕方のSPO2は85、脈拍は56で体温は37.1度だった。 ナーとH.Cの標高差は1100mほどだが、夕食は以前にも増して美味しく食べられ、三泊四日の順応登山もそれなりに効果があったように思えた。






















