《 4日 〜 6日 》 丸山岳
会津百名山の未踏の山(8座)のうち、福島県西部(檜枝岐村・南会津町)の丸山岳(1820m)を窓明山登山口から2泊3日で往復して登った。 丸山岳はマイナー12名山の一峰でもあり、昨今では一番登りたかった山だ。 登山道がない(大昔は会津朝日岳からの破線程度の登山道があったようだ)ため残雪期での登頂の機会を窺っていたが、豪雪となった今シーズンのGWに満を持してチャレンジすることにした。
《 4日 》
窓明山登山口 〜 窓明山 〜 坪入山 〜 最低コル 〜 幕場
5時半に窓明山登山口を出発。 周囲に登山者の姿はないが、三岩岳への登山口が近いため、国道脇の路側帯には車が数台停まっていた。 雪解けが急速に進み登山道は露出していたが、巽沢山(1162m)の手前からの残雪に新しいトレースが複数見られたので、丸山岳への登山者がいることが予見された。 夏道が使えたりトレースに助けられたことで、予定よりも早く登山口から4時間半ほどで窓明山(1842m)に着いた。 窓明山は今回の行程中で一番標高が高いピークだ。 山頂から見えた丸山岳はまだ遙かに遠かった。 意外にも山頂からのトレースの多くは三岩岳方面ではなく坪入山方面に向かっていたので、GW中とはいえ丸山岳への登山者が何人もいることが分って驚いた。
窓明山から先は登山道がないが、7年前に坪入山まで“下見”に行ったのでルートの記憶は新しい。 僅かに藪はあったものの下り基調なので窓明山から1時間半足らずで坪入山(1774m)に着いた。 以前はここを幕場として丸山岳を往復することを考えていたが、今のスピードと体力ではそれは叶わず、高幽山(1747m)との間の最低コル(1470m)を幕場とすることに迷いはなかった。
坪入山に隣接する1754m地点を過ぎるとテントが二張り並んで見られ、トレースの状況から今日丸山岳を登っているパーティーがいることが分った。 間もなく丸山岳から下山してきた単独の男性二人と相次いですれ違い、この先のルートや藪の状況、そして幕場とした場所などを教えていただいた。 風はそれなりに吹いていたが天気は予報以上の快晴で、丸山岳やこれから辿る稜線、そして尾瀬や上越県境の山々の展望が終始楽しめた。 最低コルの手前の1538m地点付近にテントが二張り見られると間もなくその男女パーティーと相次いですれ違い、現在地から丸山岳への所要時間などの貴重な情報を得ることが出来た。
図らずもトレースはますます明瞭になり、想定内の小さな藪が所々にあったもの、予定よりも早く1時半過ぎに最低コルに着いた。 予想どおり最低コルは広く幕場としては理想的だったが、明日の行程を少しでも短くしたいという思いから、第二候補としていた高幽山の山頂直下の平坦地を目指すことにした。 最低コルから40分ほど緩やかに登った1692m地点の先に風の当たらない凹地形があったので、予定より少し早いがここを幕場とすることにした。 幕場で寛いでいると最初に見たテントの女性パーティーが下山してきた。 予報どおり日没後からは風が殆どなくなり、明日の登頂に向けて大いに期待が持てた。
《 5日 》
幕場 〜 高幽山 〜 梵天岳 〜 丸山岳 〜 梵天岳 〜 高幽山 〜 坪入山 〜 幕場
予定どおり周囲が明るくなった4時半前に幕場を発つ。 相変わらず風は殆どなく、今日も予報以上の好天になりそうで胸が弾む。 放射冷却により雪が良く締まっていたので、幕場から20分ほどで高幽山(1747m)の山頂に着いた。 雑木が茂る地味な山頂だが、これから辿る梵天岳や丸山岳への距離感がようやく掴めるようになった。 高幽山を越えると間もなくご来光となり、陽射しの温もりが心地良かった。
高幽山から先は緩やかな稜線漫歩となり、距離は長いが予想以上にスピーディーに歩けた。 稜線から少し外れた梵天岳の最高点には行かず、その分岐(1765m地点)からトレースに従って右方向の尾根に進む。 藪の部分が多くなってきたが、煩わしさはあるものの困難な藪ではなかった。 垂涎の丸山岳が次第に大きく眼前に迫り、今までになく長いビクトリーロードとなった。 体力とは真逆に足取りはどんどん軽くなり、予定よりも早く幕場から3時間半ほどで丸山岳(1820m)の山頂に着いた。 山名のように丸みのある無木立の山頂は360度の大展望で、会津朝日岳を筆頭に今まで丸山岳を羨望の眼差しで眺めていた山々が全て見渡せた。
誰もいない快晴無風の山頂で展望を満喫し、重い腰を上げて山頂を発つ。 幕場への長い帰路は目標を失った身には堪えると思っていたが、稜線からの展望や景観の素晴らしさはそれを凌駕していた。 トレースに恵まれたことで踏み抜きは殆どなく、予定よりも早く正午前に幕場に戻った。 計画では同じ場所に泊まることにしていたが、雪のコンディションが良かったので、テントを撤収して坪入山方面に向かう。
予報どおり午後に入ると雲が湧き始めたが、オーバーヒートした体には涼しくてちょうど良かった。 昨日とは違い誰とも出会うことなく3時に坪入山の山頂に着き、明日の天気予報を確認する。 明日の天気が予報よりも悪ければ今日中に下山することも可能だが、逆に入山前よりも良い予報に変わったので、窓開山方面に少し下った樹間の平坦地を二日目の幕場とした。 夕方からは雲もなくなり、昨日に続いて風のない静かな夜を過ごした。
《 6日 》
幕場 〜 窓明山 〜 窓明山登山口
昨日と同じ快晴無風の好天となり、早朝からすでに生暖かかった。 幕場でゆっくりご来光を拝んでから窓明山へ向かう。 荷物が軽くなり1時間ほどで窓明山に着いた。 山頂で最後の展望を楽しんでいると、会津駒ケ岳へ向かう男女パーティーが登ってきた。 窓明山からの下山は初夏のように暑くなり、山の雪解けが一段と加速するように思えた。