2  0  2  1  年    6  月  

《 10日 〜 11日 》    伏美岳 ・ ピパイロ岳 ・ 1967峰

   林道入口ゲート 〜 伏美小屋 〜 伏美岳登山口 〜 伏美岳(泊) 〜 ピパイロ岳 〜 1967峰  (往復)

   北海道百名山の未踏の山(28座)のうち十勝(帯広市・芽室町)の伏美岳(1792m)とピパイロ岳(1916m)、十勝・日高(帯広市・日高町)の1967峰(1967m)の3座を縦走して登った。 この三座のうち伏美岳は伏美小屋を起点に日帰りで簡単に登れるが、ピパイロ岳へは日帰りで伏美岳を経て登るか、チロロ林道を起点に北戸蔦別岳に泊まって1967峰を経て登るかの二通りの方法があり、1967峰へは伏美岳に泊まってピパイロ岳を経て登るか、チロロ林道から北戸蔦別岳に泊まって登るかの二通りの方法がある。 伏美小屋方面からの日帰りの記録もあるが、還暦を過ぎた身には現実的ではなく、山を楽しむことも出来ないだろう。 ピパイロ岳と北戸蔦別岳の間はヒグマの巣窟のため、コースタイム云々よりもヒグマの脅威により計画は二転三転したが、最終的に少しでもヒグマとの遭遇のリスクを回避するため、伏美小屋を起点として初日に伏美岳の山頂に泊り、翌日にピパイロ岳を経て1967峰に登ることにした。 この方法であれば二日目の行程が長くなるが、1回の山行で伏美岳・ピパイロ岳・1967峰の三座を登れるというメリットがある。


昭文社の登山地図


   伏美岳の登山口となる伏美小屋へのトムラウシ沢林道は2016年夏台風で崩壊したため、林道入口のゲートから伏美小屋まで7キロほど歩く。 平日だが天気が良いのでゲートの前には登山者の車が2台停まっていた。 今日の行程は伏美岳までと短いので7時半のスタートしたが、昨日から全道的に真夏日となっていることで朝から気温が高くて既に暑い。 明日の行程は長いので、意識的にこまめに休憩を取りながらゆっくり歩く。 林道の崩壊箇所は多かったが、既に復旧している他の林道の状況を考えると、林道としての役割が薄いためだろうと思われた。 意外にも林道にはヒグマの糞は見られず、不思議とその気配も感じられなかった。


林道入口付近の駐車地


林道入口ゲート


林道入口ゲートから伏美小屋へ


林道入口ゲートから伏美小屋へ


林道入口ゲートから伏美小屋へ


林道入口ゲートから伏美小屋へ


林道入口ゲートから伏美小屋へ


   林道入口ゲートから2時間ほどを要して赤く塗られた伏美小屋に着く。 二階建ての小屋の中は清潔に保たれ、薪ストーブが使えるようになっていた。 小屋の傍らを流れる沢の水をデリオスで浄水して歩荷する6Lの水を用意する。 ひんやりとした静寂の山小屋の中で一休みしてから伏美岳に向かう。 山小屋から5分ほど歩いた林道の終点が広い駐車場のある伏美岳の登山口だった。 伏美岳への登山道は先月登った近隣の芽室岳のような笹藪の道をイメージしていたが、意外にもそれとは真逆に道内の山としては良く整備されていて、ザックの重さよりも真夏かそれ以上に高い気温でオーバーヒート気味の体には有り難かった。 中間地点辺りですれ違った2人パーティーは伏美岳への日帰り登山の方で、幌尻岳に向かった方がいるという貴重な情報が得られた。 標高の獲得よりも気温の上昇が上回り、暑さはますます厳しくなった。 1400m辺りからようやく登山道にも残雪が混じるようになってホッとする。 山頂直下で3人パーティーとすれ違うと、意外にも道警の山岳救助隊の訓練で幌尻岳から縦走してきたとのことだった。


伏美小屋


伏美小屋の内部(1階)


伏美小屋の内部(2階)


伏美小屋から伏美岳登山口へ


伏美岳登山口


登山口から伏美岳へ


登山口から伏美岳へ


登山口から伏美岳へ


登山口と伏美岳の間から見た妙敷山


シラネアオイ


登山口から伏美岳へ


登山口から伏美岳へ


   伏美小屋から4時間ちょうどで待望の伏美岳の山頂に着く。 山頂からの展望は期待以上に素晴らしく、ピパイロ岳や1967峰はもちろんその先に連なる戸蔦別岳や幌尻岳、昨日登ったチロロ岳や4月に登った札内岳を始めとする北日高の山々が一望された。 こじんまりとした山頂だが、テントが2〜3張り張れるスペースがあった。 誰も訪れる気配がないので、一番綺麗に整地された場所にテントを張ったが、風が全くないことが災いし暑くて1時間ほどテントの中に入れなかった。 明日の下見に10分ほどピパイロ岳方面に行ってみると、依然として登山道は明瞭で藪も無かったので嬉しかった。 予想どおりその後は誰とも出会わなかったが、危惧していたヒグマの気配はなく安堵した。 日没後まで無風状態で日中の暑さが続いたが、予報に反して夜中から風が強くなってきた。


伏美岳の山頂


山頂から見たチロロ岳とチロロ西峰


山頂から見た芽室岳


山頂から見た剣山


山頂付近から見たピパイロ岳


山頂から見た妙敷山と十勝幌尻岳(中央右奥)


山頂から見た札内岳


山頂から見たエサオマントッタベツ岳(中央)


山頂から見た幌尻岳(中央)


山頂の幕場


夕焼けショー


   翌朝は予定よりも少し遅れて4時に伏美岳の幕場を出発。 ピパイロ岳までは2時間半、ピパイロ岳から1967峰までは2時間、伏美岳から1967峰までの往復は休憩を含めて9時間の予定だ。 やや強い風は吹き止むことなく不安材料になると思われたが、気温が異常に高かったので有り難い存在となったばかりか、朝露で濡れることもなくて助かった。 ピパイロ岳との鞍部に下ると笹が被る所もあったが、残雪を歩ける区間もあり、トータルでは無雪期よりも早く歩けた。 しばらく小さな登り下りを繰り返してからようやくピパイロ岳への登りに入ると、顕著な尾根の日高側に残雪が繋がり、6本爪のアイゼンを着けて昨日の道警パーティーのトレースを登る。 山頂手前の肩で残雪がなくなりハイマツの切り裂きを進むと、意外にも2泊で幌尻岳まで行ってきたという単独者とすれ違った。 帯広在住という単独者としばらく雑談し、1967峰は残雪を歩ける区間が長いので、ピパイロ岳から1967峰までは2時間、帰路は1時間半で問題なく行けるという貴重な情報が得られた。 一番危惧していたヒグマの気配は全くしなかったとのことで嬉しくなった。


伏美岳の山頂から見たピパイロ岳


伏美岳の山頂付近から見た雌阿寒岳(中央遠景)


伏美岳からピパイロ岳へ


伏美岳からピパイロ岳へ


伏美岳とピパイロ岳の間から見たピパイロ岳


伏美岳とピパイロ岳の間から見た幌尻岳(中央)と戸蔦別岳(右)


伏美岳からピパイロ岳へ


伏美岳からピパイロ岳へ


伏美岳とピパイロ岳の間から見た伏美岳


伏美岳からピパイロ岳へ


伏美岳からピパイロ岳へ


伏美岳とピパイロ岳の間から見た伏美岳と妙敷山(右)


伏美岳からピパイロ岳へ


伏美岳からピパイロ岳へ


   予定よりも少し早く、6時過ぎに待望のピパイロ岳の山頂に着いた。 大小の岩が堆積したピパイロ岳の山頂からの展望は伏美岳よりも一段と素晴らしく、眼前には憧れの1967峰が大きく望まれ、エサオマントッタベツ岳の奥に1839峰も遠望された。 パンを頬張り、水や不要となった防寒着などを岩陰にデポして1967峰に向かう。 単独者からの情報どおり、ピパイロ岳の西峰とも言われる1911m地点までの痩せ尾根の通過に30分ほどの時間を要したが、貴重なツクモグサが幾株か見られた。 ケルンが積まれた1911m地点からは日高山脈の国境稜線と合わさり、指呼の間の1967峰との鞍部に下る。 ハイマツの藪漕ぎは背丈よりも高い部分もあったが、足元の踏跡は常に明瞭だったので道を外れることはなかった。 無雪期には幕場適地となる1793m地点の鞍部から山頂までは顕著な尾根の十勝側に豊富な残雪が繋がり、単独者の新しいトレースに助けられて快適なビクトリーロードとなった。


ピパイロ岳の山頂


山頂から見た1967峰


山頂から見たチロロ岳とピパイロ岳の西峰(左)


山頂から見た幌尻岳(中央)と北戸蔦別岳(右)


山頂から見たエサオマントッタベツ岳(中央遠景)と札内岳(左遠景)


山頂から見た伏美岳と妙敷山(右)


ピパイロ岳から1967峰へ


ピパイロ岳と1967峰の間から見た1967峰


ツクモグサ


ピパイロ岳から1967峰へ


ピパイロ岳から1967峰へ


ピパイロ岳西峰(1911m地点)


西峰から見た1967峰


西峰から見た幌尻岳


西峰から見たチロロ岳


ピパイロ岳から1967峰へ


ピパイロ岳から1967峰へ


ピパイロ岳から1967峰へ


ピパイロ岳から1967峰へ


ピパイロ岳から1967峰へ


ピパイロ岳から1967峰へ


   予定よりも少し早く、伏美岳から4時間ちょうどの8時に待望の1967峰の山頂に着いた。 いつ訪れても誰とも出会うことのないだろう孤高の頂には手作りの山名板が置かれていてた。 ヒグマとの遭遇を恐れ、一年間ルートの選択に悩んでいた山だったので達成感は半端なかった。 予報どおりの快晴の天気は続き、山頂からの日高山脈の山々の展望はピパイロ岳と同じか、むしろそれ以上に素晴らしかった。

   帰路の所要時間の目処はついたので、山頂で長めの休憩をとって8時半に想い出の山頂を辞した。 目標を失った身には堪えるが、単独者からの情報どおり1967峰からピパイロ岳へは往路よりも所要時間が30分ほど短かく、9時半過ぎにピパイロ岳の山頂に戻れた。 ピパイロ岳から先は風が弱まったことで暑さが堪えるようになった。 天気が良いので日帰りの登山者と出会うかもしれないと思ったが、帰路の稜線は貸し切りだった。 行動用の2Lの水は余裕がなくなり、何度も残雪を口に含んで喉を潤した。 1967峰まで休憩を含めて往復9時間を予定していたが、1時間ほど早い正午前に伏美岳の幕場に戻った。


1967峰の山頂


山頂から見た幌尻岳(中央奥)と戸蔦別岳(中央手前)


山頂から見たピパイロ岳


山頂から見たチロロ岳


山頂から見た札内岳(中央遠景)


1967峰からピパイロ岳へ


1967峰からピパイロ岳へ


キバナシャクナゲ


ツクモグサ


ピパイロ岳西峰から見たピパイロ岳


1967峰からピパイロ岳へ


ピパイロ岳の山頂


山頂から見た伏美岳


ピパイロ岳から伏美岳へ


ピパイロ岳から伏美岳へ


ピパイロ岳から伏美岳へ


伏美岳の山頂


   登頂の余韻に浸りながら幕場で昼食を食べ、テントを撤収して伏美小屋へ下る。 途中ですれ違った2人パーティーは伏美岳の山頂に泊まり、そこを拠点に登山道のない妙敷山(1731m)とトムラウシ(1476m)を登るという猛者だった。 登りでは暑さとザックの重さで苦しめられたが、下りは途中1回の短い休憩をしただけでオアシスのような伏美小屋に下り、小屋の傍らを流れる沢の水をデリオスで浄水して乾いた喉を潤した。 涼しい山小屋の中でしばらく横になって休み、意気揚々と林道ゲートに向けて凱旋した。


伏美岳から伏美小屋へ


伏美岳から伏美小屋へ


伏美岳から伏美小屋へ


伏美小屋


伏美小屋から林道入口ゲートへ


林道入口ゲート


                                            【前泊地】 道の駅おとふけ

                                            【宿泊地】 札幌のアパート


2 0 2 1 年    ・    山 行 記    ・    T O P