《 15日 〜 16日 》 札内岳
トッタベツヒュッテ 〜 五ノ沢分岐 〜 尾根ルート分岐(下) 〜 幕場(泊) 〜 尾根ルート分岐(上) 〜 1655m地点 〜 札内岳 (往復)
北海道百名山の未踏の山(51座)のうち十勝(帯広市・大樹町)の札内岳(1895m)を登った。 当初は登山口となるトッタベツヒュッテまで車でアプローチ出来れば日帰りで登ろうと考えていたが、予想以上に暖かい気候で融雪が進んでしまい、ヒュッテから先のピリカペタヌ沢川の渡渉がネックになりそうだったので、迷わず1泊2日の行程とした。
初日の午前中の道内は寒気を伴う雨で、札幌からの移動中の日勝峠では雪となった。 午後には寒気が抜けて天気が急速に回復するという予報だったので、登山口のトッタベツヒュッテを正午に出発することにしたが、トッタベツヒュッテに着いても小雪がなかなか降り止まず、1時半過ぎの出発になってしまった。 ピリカペタヌ沢川沿いの林道の入口には大きなワゴン車が1台停まっていたので、数人のパーティーが入山していることが予見された。 台風で崩壊した林道を進んでいくと、すぐに左手の河原に導く新しいピンクテープがあり、以後これを目標にして河原を歩いた。 意外にも最初の徒渉点の手前に5つのスノーシューがデポしてあったので、先行パーティーは5人であることが分かったが、なぜここにスノーシューをデポしたのか不可解だった。 ピリカペタヌ沢川の支流の五ノ沢分岐まで渡渉は4〜5回あったが、雪解けで増水した川の水深は50センチほどあり、持参した長靴でもギリギリの高さだったので、通過には予想以上の時間を要した。 五ノ沢分岐でようやく小雪が止み、日射しを少し感じるようになった。
登山靴に履き替えて五ノ沢に入ると、予想以上に沢が割れていたが、スノーブリッジで沢を左右に渡りながら雪の上を歩けた。 古いトレースは見られたが、先行しているはずのパーティーのトレースがなかったので謎が深まった。 間もなく沢の残雪が増してきて歩き易くなったが、喜んだのも束の間、沢を横切る新しい熊の足跡があり緊張する。 五ノ沢分岐から1時間ほどで幕場に予定していた標高920m付近に着いた。 ここから右手の尾根に取付くか、そのまま沢を登り続けるかは現場判断としていたが、尾根ルートにはトレースが見られず、沢は残雪が少なく雪崩の心配が無さそうだったので、そのまま沢を詰めていくことに迷いはなかった。 付近にはまだ沢音が聞こえ、先ほど見た熊の足跡からまださほど離れていなかったので、さらに標高1000mまで登って幕場としたが、整地に時間が掛かったので設営が終わったのは日没後になってしまった。
翌日は時間に余裕があるので、周囲が明るくなった5時過ぎに幕場を出発。 地形図では途中から傾斜が急になるのでアイゼンを着けて登ったが、残雪が少ないことで予想以上に雪の状態が良く、デブリも小さく限定的だったので、図らずも無雪期の登山道を登るよりも速いペースで登れた。 幕場から標高差で600mほどの沢を詰め、1時間半ほどで尾根ルートとの分岐に着くと、ようやく待望の札内岳の山頂が見えた。 これから進む尾根には新雪が5センチほど積り、山肌がリフレッシュされていて美しかった。
1655m地点からは100m近い下りがあったが、傾斜が緩やかな尾根の背には藪が殆どなく、雪庇や段付きも小さかったので、およそ日高の山とは思えない快適な稜線漫歩となった。 幕場から3時間半ほどで楽々札内岳の山頂に着いた。 札内岳は日高山脈の主脈から一歩離れた位置にあるので、予想どおり日高山脈の良い展望台となっていた。 気温は低いが風の弱い山頂で1時間近く滞在し、ビデオなどを撮りながら至福の時を過ごした。
いつまでも去りがたい山頂を後にして下山を始めると、男女3人のパーティーとすれ違った。 先頭の男性は山岳ガイドのSさんで、ピリカペタヌ沢川の水量が予想以上に多かったので渡渉せず、遠回りだがスノーシューをデポした所から尾根に上がったとのことだった。 その後ガイドパーティーの残りの2人とすれ違ったので昨日の謎が解けた。 尾根ルート分岐から幕場までの沢の下りは予想以上にスピーディーで、沢に雪崩の心配がない時期には沢ルートに軍配が上がることが分かった。 五ノ沢分岐からの渡渉は煩わしかったが、登頂出来た喜びがそれに勝っていた。