《 エピローグ 》

   今シーズンのエベレストはネパール側からの登頂者が644人、チベット側からの登頂者が241人の合わせて885人が登頂し、昨シーズンの807人を上回ったと伝えられている。 一方で渋滞などによる死者は11人で、2015年以来一番多かったようだ。

   今シーズンのチベット側のルートはサイクロンなどの影響もあり、山頂までフィックスロープが固定されたのが5月22日と例年に比べて異常に遅かった。 その直後の23日は好天の予報が出ていたが、この日は渋滞が予想されたため登頂は避け、同じような予報だった翌24日の登頂を目指したが、23日の風が予報よりも強く、最終キャンプ地のC.3(8300m)へ行くことが出来なかった。 サミット・デイとなった23日は予想以上の大渋滞となり、それが原因で行動を一部共にしていたヨーロッパ隊のメンバーの一人が亡くなるという大きな事故が起きてしまった。 今回のようなリスクが想定される場合、あくまで登頂の栄誉を選ぶか、安全を最優先に行動するかは登っている隊(人)の考え方次第で、私は後者を選んだ倉岡さんの判断は正しかったと思うし、私自身もそうすることを望んでいた。 悔やまれるのは、あと一歩のところで登頂出来なかったという事実だけだ。

   残念ながら夢にまで見た世界最高峰への登頂は叶わなかったが、2か月近い遠征期間中にあったさまざまな出来事や、出会った方々との想い出は一生忘れることはないだろう。 リベンジするか否かについて今は全くの白紙だ。


B.Cから見たエベレスト


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エベレスト