《 エピローグ 》

   2度目の8000m峰へのチャレンジとなったチョ・オユー登山は、幸運にも登頂日が滞在期間中一番の好天となり、素晴らしいメンバー・スタッフ・ガイドの全てに恵まれ、ある程度余裕をもって登頂することが出来た。 酸素の使用については5年前のマナスル登山の時の経験が大いに役立ち、酸素マスク・混合器・レギュレター・ボンベの全てが改良されていたこともラッキーだった。 また、高所に弱い私が一番危惧していたA.B.C(5700m)での滞在は、B.C(4900m)の先まで車で入れたことで体力が温存され、予想よりも順調に過ごすことが出来た。 図らずもA.B.Cは地形的に風が全く当たらず、陽当りも良かったので、寒さに苛まれることはなかった。 C.1(6400m)とC.2(7130m)は上部キャンプとしての環境はまずまずだったが、今回泊まらなかった最終キャンプのC.3(7400m)は快適そうに思えなかったので、天気が良ければ今回のようにC.2からアタックする方が断然良いと思えた。 実質的な登山のスタート地点となるC.1からは“最も登り易い8000m峰”と言われるとおり全般的に傾斜が緩く、フィックスロープが無い区間も多かったので、マナスルと比べて明らかに登り易かった。 但し、今シーズンはモンスーンがなかなか明けず、アタック日を除いては天候が不順で、降雪が多かったのでヤキモキさせられた。 C.1からC.2へ(6000m台から)酸素を吸って登ることによるデメリットは一切なく、むしろ体力の温存が図れるメリットがあることが分かり良い経験になった。


チョ・オユーの山頂


   今回は先の大地震の影響でネパール(カトマンドゥ)から中国(チベット)へ陸路で行けず、ラサ経由の空路で行くことになってしまい、費用もトータルで50万円ほど多く掛かってしまったが、初めての中国、初めてのチベットで、様々な文化や歴史、そして生活の一端にも触れ、ポタラ宮やタシルンボ寺などの名所の観光も出来て良かった。 後日談だが、平岡隊でご一緒した柴田さん、倉岡隊の星野さんと羽山さんは半年後の2017年の春にチベット側から、倉岡隊の五味さんはネパール側からエベレストに見事登頂された。 一方でその後は中国政府が外国人のチベットへの入域を禁止してしまったので、チョ・オユーへの道は再び閉ざされることになった。 ティンリでの滞在中に初めて見たシシャパンマの雄姿に一目惚れし、エベレストよりもむしろシシャパンマを登りたくなったが、これもまたどうなるのか現時点では全く分からない。 政治情勢の悪化やテロの脅威で近づけないカラコルム周辺の山域と同じように、チベットでも自由に山に登ることが出来ないことが残念だ。


報告会でハイジさん&ちー隊長から頂いた登頂祝いのケーキ


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チ ョ ・ オ ユ ー    ・    山 行 の 報 告    ・    T O P