《 28日 〜 30日 》 鷲羽岳 ・ 水晶岳
新穂高温泉 〜 弓折岳 〜 双六小屋(テント泊) 〜 三俣蓮華岳 〜 鷲羽岳 〜 水晶岳 〜 鷲羽岳 〜 三俣蓮華岳 〜 双六小屋(テント泊) 〜 弓折岳 〜 新穂高温泉 (往復)
《 28日 》
新穂高温泉 〜 弓折岳 〜 双六小屋
GW前半の3連休は晴れマークが3つ並び、風も弱いという絶好の天気が予報されていた。 当初は飯豊前衛の蒜場山から烏帽子岳など残雪期限定の山を考えていたが、今年は残雪が例年よりもかなり少なく、登山道のない山はNGということを直前の上ノ倉山で学んだので、比較的入山者が少ない北アルプスの双六小屋をベースに2泊3日で鷲羽岳などを登ることにした。
新穂高温泉の登山者用駐車場を6時半に出発。 駐車場の車は予想よりも少なく、まだ半分以上が空いていた。 予想どおり左俣林道には雪がなく、笠新道の登山道の入口にも雪は見られなかった。 道端にはフキノトウが沢山見られ、帰路の収穫が楽しみた。 ワサビ沢小屋のベンチにはさすがにGWだけあって数名の登山者やスキーヤーが寛いでいた。 ワサビ沢小屋の先からは残雪が林道に見られるようになったが、帰ってくる頃には溶けてしまうだろう。
登山道(小池新道)の起点となる林道との分岐まで来ると、これから辿る秩父沢のルートの全容が見えたが、降雪が少なかったことでデブリの規模が小さく、いつもの同じ時期に比べて歩き易そうだった。 それどころか前方には肉眼で見えるだけで10人以上の登山者やスキーヤーの姿が見え、幸か不幸かトレースが使えることが分かった。 雪はやや柔らかいもののデブリが小さく、何よりもトレースがあるため歩き易い。 前方のみならず、後ろからも点々と登ってくる人達が見える。 右手の槍や穂高の展望に癒されながら、予定よりも早く小池新道の起点から2時間ほどで大ノマ乗越方面と鏡平方面の冬道のルートの分岐となるシシウドが原付近に着いた。 ここからは登山者とスキーヤーの違いもあり、先行者が二手に分かれるようになった。 7年前に大ノマ岳を登った時と9年前に双六小屋に行った時は鏡平方面へのトレースは無かったが、今年は雪が少ないため鏡平を通るトレースがすでに出来ているのかもしれない。 当初の計画では鏡平方面へ少し進み、最初のやや急な尾根を弓折岳へダイレクトに登ることにしていたが、鏡平方面へのトレースをこのまましばらく進み、途中の登り易い所から鏡平をショートカットして登ることにした。
アイゼンを着け、勾配が増してきた鏡平方面へのやや広い沢を登っていくと、沢は次第に狭まって平らになり、その先の峠のような所はもう鏡平への入口だと思われた。 鏡平への入口の手前からトレースを離れ、左上の尾根を目指してやや急な斜面を登っていくと、鏡平からの登山道に沿ってつけられていると思われるトレースに合流し、先行していた若い単独の男性と雑談を交しながら登る。 間もなく弓折岳の山頂直下の平坦地に着いた。 登山道はここから弓折乗越に向けて斜上するが、冬道は弓折岳の山頂への尾根を直登するようで、ハイマツや草付に沿って先行者のトレースが見えた。 ハイマツの中には僅かな切り裂きや赤テープが見られた。 先行者のトレースに助けられ、予定よりも早い1時に弓折岳の山頂に着いた。
予想どおりハイマツが茂る双六小屋までの稜線は踏み抜き地獄となっていて苦労する。 雪が少なくトレースがあるのが救いだ。 3時前に待望の双六小屋に着くと、小屋前のテント場の一部に雪はなく、地面にテントを張ることが出来たが、あいにく風の通り道となっていたので、山小屋の裏の風の弱い場所に幕を張った。 最終的にテントは10張ほどとなり、冬期小屋もスキーヤーを中心に7〜8名が泊まっている様子だった。
《 29日 》
双六小屋 〜 三俣蓮華岳 〜 鷲羽岳 〜 水晶岳 〜 鷲羽岳 〜 三俣蓮華岳 〜 双六小屋
今日は鷲羽岳までの往復なので、周囲が明るくなった4時半過ぎに幕場を出発する。 双六岳方面に登山道をしばらく登っていくと、右方向に山腹を巻く明瞭なトレースがあったのでこれを辿っていく。 快晴の予報だったが朝焼けは鮮やかでなく、ご来光も霞んでいて冴えなかった。 間もなく追付いてきた若い男性は、昨日弓折岳の手前で雑談を交した方(Nさん)だった。 今日は予定どおり水晶岳まで行かれるとのことで道を譲る。 ルーファンをせず良いトレースにも恵まれたため、幕場から1時間ほどで双六岳と三俣蓮華岳を繋ぐ稜線に乗ることが出来た。 残雪が少ないため山肌の雪もやや汚れてきているが、柔らかな朝の陽光に照らされた笠ケ岳や黒部五郎岳が美しい。 予報どおり風は殆どなく、絶好の登山日和になりそうだ。 9年前のGW明けにこの稜線を歩いた時の記憶は意外と新しく、どの辺りで登山道が出ているか分かった。 予定よりも少し早く7時前に三俣蓮華岳の山頂に着くと、山頂の標柱は完全に雪から露出していた。 展望の良い山頂からは、眼前の鷲羽岳や水晶岳はもちろん、雲ノ平越しの薬師岳や立山方面の山々が良く見えた。 眼下に見える三俣山荘への登山道にはトレースがなく、傾斜の緩い北側の尾根上に冬道のトレースがあったので、これを辿ることに迷いはなかった。
アイゼンを着けて尾根上のトレースをしばらく辿ってから、トレースを外れてやや勾配のある斜面を三俣山荘に向けて最短距離で下る。 冬道からはいつもと少し違った角度で鷲羽岳や水晶岳が見えて面白かった。 間もなく山小屋を出発していくNさんの姿が見えた。 山荘の手前でアイゼンを外し、山荘の少し先から登山道が露出している鷲羽岳の登りに入る。 残雪期の北アルプスならではの素晴らしい景観と快晴無風の天気に足取りは軽い。 水晶岳を目指しているNさんと入れ替わり、9時に鷲羽岳の山頂に着いた。 足下の鷲羽池はまだ出現していない。 9年前はその日のうちに新穂高温泉に下山しなければならなかったのでトンボ返りだったが、今日は山頂からの大展望をゆっくり満喫する。
予定では鷲羽岳までだったが、ワリモ岳方面へも登山道が出ていたため、少し無理をすれば水晶岳まで行けそうに思えたので、思い切って先に進むことにした。 ワリモ岳までは殆ど登山道を歩けたが、意外にもワリモ岳の山頂の直下で先行していたNさんが引き返してきた。 引き返す理由は私達と反対で、予想よりも時間が掛かっているためとのことだった。 私達は予定を変更して水晶岳まで行くと告げると、Nさんは引き返すのを思い留まり、私達と相前後しながら一緒に水晶岳を目指すことになった。
ワリモ岳を通過しワリモ北分岐に着くと、分岐から先の登山道は雪で覆われていた。 トレースは見当たらず、岐阜県側から水晶岳に登った人がまだいないことが分かった。 アイゼンを着け、先に見える登山道に向けてやや硬い雪面を200mほどトラバース気味に進み、再びアイゼンを外して登山道を歩く。 その先の水晶小屋への登りでは、再び登山道が雪で覆われている区間があったが、地形図を見ながらほぼ登山道に沿って小屋まで登れた。 鷲羽岳からはコースタイムどおりの時間で歩き、11時に水晶小屋に着いた。 予定外の行動で妻はお腹一杯になり、ここでゆっくり休んでから引き返すというので、先行しているNさんの後を追って水晶岳の山頂に向かう。 山頂の手前にある10mほどの切り立った雪壁の基部でNさんに追いつき、ピッケルを打ち込みながらキックステップで雪壁を攀じ登る。 そこから先は登山道を使えたので、水晶小屋から30分ほどで誰もいない水晶岳の山頂に着いた。 この山を含め、周囲の山々の積雪は明らかに例年よりも少ないが、3年前のGWに長野県側から登頂した時にはなかった雪庇の名残が山頂に見られた。 トンボ帰りの予定だったが、後続のNさんの到着を待ち、お互いの写真を撮り合ってから一緒に山頂を後にした。
帰路もNさんと相前後しながら各々のペースで歩き、鷲羽岳への登りで先行していた妻に追いついた。 二度目の鷲羽岳を越え、三俣山荘から三俣蓮華岳への登りは今日一番の核心と覚悟を決めていたが、さすがにGWだけあって双六小屋から鷲羽岳を往復した人が複数いたため、立派なトレースが出来上がり、危惧していた踏み抜きは殆どなかった。 夕方になっても雲一つない快晴の天気は続き、もう誰もいなくなった三俣蓮華岳の山頂で今日辿ってきた水晶岳や鷲羽岳を眺めながら至福の時を過ごす。 幕場への到着は日没近くになってしまったが、図らずも幕場からは見えない残照の穂高連峰を見ることが出来て良かった。
《 30日 》
双六小屋 〜 弓折岳 〜 新穂高温泉
今日は樅沢岳か双六岳に登ってから新穂高温泉に下山する予定でいたが、昨日の帰りが大幅に遅くなり、また疲れも残っていたので、ゆっくりと7時半に双六小屋を出発した。 Nさんもその5分ほど前に出発して行った。 天気は昨日よりもやや雲が多いが、今日も爽やかな五月晴れだ。 まだ気温は低いので、弓折岳までのハイマツの尾根の踏み抜きはなかった。 弓折岳の山頂で最後の展望を楽しみ、アイゼンを着けて往路と同じ冬道のルートで下る。 シシウドが原付近まで下ると、登ってくる人が見られるようになり、トレースはさらに明瞭になっていた。 帰路はコースタイムどおり、双六小屋から4時間弱で小池新道の起点となる左俣林道との分岐に着いた。 予想どおり林道を覆っていた雪は殆どなくなり、旬のフキノトウを収穫しながらワサビ小屋まで歩き、1時ちょうどに新穂高温泉に着いた。