2  0  1  8  年    4  月  

《 31日 〜 1日 》    毛猛山

   大白川除雪終了点 〜 小雪崩沢2号スノーシェッド 〜 足沢山 〜 1160m地点(テント泊) 〜 太郎助山 〜 百字ケ岳 〜 中岳 〜 毛猛山  (往復)

   今年の新潟の山は雪が少ない。 以前から気になっていたマイナー12名山の毛猛山は今週くらいが最後のチャンスではないかと思っていたところ、春の訪れを告げるかのように週中から晴れマークが続いていた。 好天のピークは土曜日だが、日曜日も午前中までは天気が良さそうだったので、泊りで登ってみることにした。


未丈ケ岳の山頂から見た毛猛山(2016年4月2日)


   この時期の毛猛山の登山口となっている只見線の大白川駅から500mほど先の除雪終了点に着くと、意外にも除雪作業を行う重機が7〜8台並べられていたが、除雪作業はこれからのようで、まだ国道252号線の道路の雪は手つかずで残っていた。 付近には昨日から停まっている地元ナンバーの車が1台あった。 除雪終了点に車を停め、7時前に雪に埋もれた国道を歩き始める。 好天を告げる放射冷却で気温がマイナス5度と予想以上に低かったので、雪は硬く締まり、予想以上に歩き易かった。 国道は終始只見線と並走しながら緩やかに登り下りを繰り返していく。 雪の上には先行者の新しいトレースが見られた。 陽が当たり始めると一気に体感気温が上がり暖かくなる。 1時間半ほど雪の国道を歩き、8時半前に最初のピークの足沢山への尾根の取り付きとなる『小雪崩沢2号スノーシェッド』に着くと、意外にも先行パーティーの荷物がスノーシェッドの中にあり、昨夜ここに泊まって日帰りで登っていることが分かった。


只見線の大白川駅から500mほど先の除雪終了点


雪に埋もれた国道252号線を歩く


国道から見た足沢山


国道から見た足沢山への尾根の上にある送電線の鉄塔


足沢山への尾根の取り付きとなる『小雪崩沢2号スノーシェッド』


   足沢山の取り付きへの先行パーティーのトレースを探したが見当らなかったので、当初の計画どおりスノーシェッドの出口から只見線の線路に下り、短いトンネルを抜けてすぐ先の沢に架かる鉄橋を渡った所から山に取り付いた。 地形図の標高はまだ370mだ。 前方にピンクテープが見えたので、そちらの方向に向かっていくと、間もなく足沢山への顕著な尾根に乗ることが出来た。 尾根の末端付近は所々で雪が剥げ、雪の下には破線程度の踏み跡が見られた。 急傾斜の尾根を途中からアイゼンを着けて左から巻くように雪の上を登っていくと、国道から見えた送電線の鉄塔の下に出た。 付近にはようやく先行パーティーのアイゼンの爪跡が見られた。 ここから先は地形図だけでも登れるほど尾根は顕著なので、あとは下ってくる先行パーティーから上部の情報を得るのが楽しみだ。

   鉄塔から先の雪の斜面を僅かに登ると尾根は再び痩せ、雪のない少し藪っぽい踏み跡が現れた。 尾根の左側には歩き易そうな雪庇があったが、所々で寸断されていたため、結果的には藪の踏み跡を歩く方が速かった。 藪の隙間から二つ目のピークの太郎助山(1417m)が見えたが、その頂はまだまだ遠かった。 足沢山の山頂が間近に見えてくると踏み跡が完全に雪で覆われるようになった。 雪面には再び先行パーティーのアイゼンの爪跡が見られたが、気温の上昇で雪が緩んできてしまったので登高ペースは上がらない。 スノーシェッドから4時間を費やし、12時半にようやく最初のピークの足沢山(1107m)の山頂に着いた。 雪庇で盛り上がった猫の額ほどの狭い頂は360度の展望で、指呼の間の太郎助山はもちろん、順光となる守門岳と浅草岳の眺めが素晴らしかった。


短いトンネルを抜けてすぐ先の沢に架かる鉄橋を渡った所から山に取り付く


足沢山への顕著な尾根に乗る


足沢山へのランドマークとなる送電線の鉄塔


鉄塔から先の雪の斜面を僅かに登ると尾根は再び痩せ、雪のない少し藪っぽい踏み跡が現れた


尾根の左側には歩き易そうな雪庇があったが、所々で寸断されていた


藪尾根から見た足沢山


足沢山の山頂が間近に見えてくると踏み跡が完全に雪で覆われるようになった


気温の上昇で雪が緩んできてしまったので登高ペースは上がらなかった


雪庇で盛り上がった猫の額ほどの狭い足沢山の山頂


足沢山の山頂から見た浅草岳


足沢山の山頂から見た守門岳


足沢山の山頂から見た太郎助山


   展望の良い山頂でしばらく寛ぎ、二つ目のピークの太郎助山に向かう。 計画では太郎助山と三つ目のピークの百字ケ岳の鞍部を幕場としていた。 足沢山からは尾根も広くなり、稜線漫歩となるように思えたが、連日の好天で雪庇の崩壊が始まり、山頂からは見えない所で雪が寸断され、藪の尾根をアイゼンを着けたまま歩くハメになってしまった。 藪の密度は予想よりも濃くてうんざりする。 腕力の弱い妻にはなおさらだろう。 間もなく先行していた男女パーティーとすれ違ったので話を伺うと、意外にも開口一番毛猛山は今回が三度目で、過去二回は藪が酷くて敗退しているとのことだった。 今日は今までで一番藪が少なく、雪が山頂まで良く締まっていたので、予想以上に快適に登ることが出来たとのことだった。 この先はそれほど藪に苛まれる所はないが、雪がかなり緩んできているので歩きにくいというアドバイスをいただいた。 鞍部に下り太郎助山への登りになると、ようやく雪庇の上を歩けるようになったが、太郎助山の山頂直下に藪が出ているのが見えたので、妻の意見に従って少し早いが今日の行動を打ち切り、鞍部から少し登った高度計で1160mの平らな雪庇の上に幕を張ることにした。 明日の下見に幕場から少し先まで登ってみると、雪質はどんどん悪くなり、注意深く歩かないと背丈よりも深いシュルントに落ちそうな箇所が多く見られたので、計画どおり先に進まなくて良かったと思った。 幕場からのロケーションはそこそこ良く、夜には長岡の夜景も見えた。


足沢山から太郎助山との鞍部へ


連日の好天で雪庇の崩壊が始まり、山頂からは見えない所で雪が寸断されていた


鞍部から太郎助山への登りでは、ようやく雪庇の上を歩けるようになった


雪庇の尾根を登る


高度計で1160mの平らな雪庇の上を幕場とした


幕場から見た桧岳


幕場から見た浅草岳


幕場から見た夕焼け


幕場から見た満月


   夜中は寝苦しいくらい暖かく、体感気温は完全にプラスだった。 翌朝は周囲が明るくなった5時過ぎに幕場を出発。 残念ながら空は厚い雲に覆われ、風も少し吹いていた。 ご来光もなさそうで、どうやら天気は予報よりも悪そうだ。 基本的に昨日の男女パーティーのトレースを辿っていくが、気温が高いので雪が柔らかく、昨日とは正反対に雪の状態はとても悪い。 幕場から太郎助山へは雪と藪を繰り返しながら、やや幅の広い尾根を登っていくが、標高差以上に時間が掛かる。 雪庇の丸いドームとなっていた太郎助山(1417m)の山頂は360度の大展望で、初めて神々しい毛猛山の雄姿が見えたが、高曇りの天気が本当に惜しまれる。 山頂からはこれから辿っていくルートの全容が見渡せたが、次のピークの百字ケ岳(1443m)までの間はまだ藪が出ている所があった。


周囲が明るくなった5時過ぎに幕場を出発


幕場から太郎助山へは雪と藪を繰り返しながら、やや幅の広い尾根を登っていく


幕場から太郎助山へ


太郎助山と百字ケ岳の間から見た百字ケ岳


太郎助山の山頂直下


太郎助山の山頂


太郎助山の山頂から見た毛猛山


太郎助山の山頂から見た百字ケ岳


太郎助山の山頂から見た守門岳


   百字ケ岳との鞍部への下りは見た目どおり藪と雪が半々だったが、これまでとは違い藪の背丈が低く、木々も細くなってきたので、それほど苦にならなくなった。 鞍部から百字ケ岳への登りは藪も少なくなり、雪も良く締まっていたので助かった。 山頂真下の数メートルの岩場もそれほど難しくなかった。 猫の額ほどの狭い百字ケ岳の山頂も展望は素晴らしく、毛猛山はもちろんのこと、越後三山や荒沢岳、そして指呼の間に屹立する桧岳の眺めが良かった。 百字ケ岳から同じ標高の中岳(1443m)へは藪のない緩やかな下りとなり、鞍部から中岳の山頂へも予想より早いペースで登れた。 中岳の山頂も他のピークと同じように360度の展望が利き、尾瀬の燧ケ岳や会津駒ケ岳も見えるようになった。 あれほど遠くに見えていた毛猛山はもう目と鼻の先だ。 天気は残念ながら高曇りのままだが、風は収まり毛猛山への登頂を確信した。


太郎助山から百字ケ岳へ


太郎助山から百字ケ岳へ


百字ケ岳の山頂から見た毛猛山


百字ケ岳の山頂から見た越後三山(中央)と荒沢岳(左)


百字ケ岳から中岳へ


百字ケ岳から中岳へ


中岳の山頂から見た毛猛山


中岳の山頂から見た百字ケ岳(左)と太郎助山(右)


    中岳と毛猛山の鞍部への下りには藪がなく、ようやく快適な稜線漫歩となった。 鞍部からは標高差150mの最後の登りだ。 右手に藪がまばらに見られる幅の広い尾根を右から回り込むように進む。 山頂直下は藪が雪から出ていたが、藪の間隔があいていたので雪の上を登ることが出来た。 最後は雪庇が崩壊しつつある頂上稜線を歩き、予想よりも少し遅い8時半過ぎに待望の毛猛山(1517m)の山頂に着いた。 高度感のある山頂からの展望は期待どおりで、会津朝日岳や丸山岳、そして未丈ケ岳もだいぶ近くなった。 青空でないのが玉にキズだが、それを凌駕するほどの達成感があった。


中岳から毛猛山へ


毛猛山の山頂直下は藪が雪から出ていたが、藪の間隔があいていたので雪の上を登れた


雪庇が崩壊しつつある頂上稜線


毛猛山の山頂


毛猛山の山頂から見た浅草岳


毛猛山の山頂から見た未丈ケ岳


毛猛山の山頂から見た猿倉山


福島県側から見た毛猛山の山頂


   福島県側へ少し下ったりしながら、もう二度と訪れることはない山頂でゆっくり寛ぎ、意気揚々と往路を戻る。 気温は相変わらず高いが、陽射しがないことで雪の状態がそれほど悪くならず、なんとか正午前に幕場に戻ることが出来た。 幕場から足沢山へは一番藪の濃い区間が登りとなるため、目標を失った身には堪える。 足沢山で最後の展望を楽しみ、膝まで潜りながら藪尾根の取り付きへ下る。 行きは藪っぽいと思った踏み跡も、稜線の藪と比べたら全くかわいいものだ。 尾根の末端でカモシカと遭遇しただけですれ違う人は誰もおらず、毛猛山は一日中貸し切りだった。 国道では旬のフキノトウがいくらでも摘めた。 予想どおり国道の雪は腐っていたので歩きにくく、6時にようやく除雪終了点に着いた。 中高年の女性には厳しいこの藪山に付き合ってくれた妻には本当に感謝に堪えない。


毛猛山から中岳へ


中岳から百字ケ岳へ


百字ケ岳の山頂から見た桧岳


百字ケ岳から太郎助山へ


太郎助山の山頂から見た毛猛山


太郎助山から幕場へ


正午前に幕場に戻る


幕場から足沢山へ


幕場から足沢山へ


足沢山の山頂直下


藪尾根の取り付き


尾根の末端でカモシカと遭遇した


国道の雪は腐っていたので歩きにくかった


フキノトウの天ぷら


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