《 2日 》 棒立山 ・ タカマタギ ・ 日白山 ・ 二居俣ノ頭
毛渡橋 〜 棒立山 〜 タカマタギ 〜 日白山 〜 二居俣ノ頭 (往復)
今年は全国的に桜の開花が遅かったが、それと因果関係があるのか、3月中に上越国境を越えることが出来なかった。 4月に入ってから最初の日曜日は上空に寒気が居座るものの、中越と水上地方に良い天気と風が弱いという予報が出たので、3月の山として計画していた土樽から棒立山、タカマタギを経て日白山に至るクラシック・ルートを辿ることにした。
JRの土樽駅前の駐車場に前泊し、翌朝目と鼻の先の毛渡橋に向かう。 夜中に僅かな降雪があり、車の屋根が白くなっていた。 毛渡橋から除雪された車道を中に入ると、すぐ先の関越道の下で除雪は終わり、付近の路肩には車が2台停まっていた。 5時半過ぎに関越道の下に車を停め、除雪終了点からスノーシューを履いて出発する。 あいにく空には雲が多く、周囲に見える山々の稜線は雲に覆われていた。 上越線の線路の下をくぐり、トレースのある車道を歩いていくと、すぐに平標新道と棒立山への取り付きへ向かう林道の分岐になったが、意外にも分岐から先のトレースは半々だった。 棒立山への取り付きを見つけることが今日一番のポイントだったが、新旧のトレースのお蔭で植林の切れた尾根の側壁から迷わず取り付くことが出来た。
取り付きからトレースを辿ってやや急な斜面を尾根に向かって登っていくと、ランドマークとなる送電線の鉄塔があり、このトレースが正しいルートを辿っていることが分かった。 鉄塔のすぐ先で自然林のやや顕著な支尾根に乗ると、新しい単独者のワカンのトレースが登り方向に付けられていることが分かった。 この新しいトレースと古いトレースの状況から、予定どおり日白山まで登れそうな感じがしたが、肝心の天気は全く冴えず、周囲に見える山々の稜線は依然として雲に覆われていた。 辿っている支尾根はそれほど顕著ではないものの、地形図のイメージどおりで登り易かった。 さすがに4月に入ったので雪はだいぶ締まり、早朝の時間帯ならトレースがなくてもツボ足で登れそうだった。
ルーファンとラッセルが全く無かったので、予想よりもだいぶ早く越後中里駅方面に延びる主尾根との分岐(1040m)に着いた。 取り付きからここまでテープ類は殆ど無かったが、この分岐には新旧の赤布が複数見られた。 分岐点には幕場の跡も見られ、棒立山が正面に良く見えた。 天気はやや回復し、上空には青空も覗くようになったので安堵した。 主尾根は顕著で左側の雪庇の張り出しも大きくなり、トレースはそれを嫌って樹林帯の中に付けられていた。 ブナの木々が太くなると、霧氷の花が咲いていた。 間もなく上から単独者が下ってきたので話を伺うと、その方が新しいワカンのトレースの主であることが分かった。 昨日はタカマタギと日白山の間に幕を張り、今朝山頂を往復して下ってきたとのことで、日白山まで全く問題なく行けることが分かった。 単独氏にトレースのお礼を言い、更に明瞭になったトレースを辿る。 棒立山の山頂直下の急斜面はトレースに助けられ、スノーシューのまま登りきった。
雪庇となっている猫の額ほどの狭い棒立山(1420m)の山頂は360度の展望が利き、周囲の山々の展望が予想以上に良かったが、中でもこれから向かうタカマタギが1529mという標高とは思えないほど神々しく望まれた。 日白山までは予定よりもだいぶ早く着きそうだったので、山頂で展望を愛でながらゆっくり寛ぎ、足取りも軽くタカマタギへ向かう。 昨夜の新雪で古いトレースは消えていた。 雪庇の尾根は部分的にクラックが走っていたが、先日登った小出俣山のものとは違い、それほど心配しないで歩けた。 相変らず雪の状態は良く、タカマタギの山頂手前のやや急な斜面もスノーシューのままで登れた。 当初、条件次第では最終到達地点となる可能性があったタカマタギの山頂にも予定よりもだいぶ早い10時前に着いた。 天気はますます良くなり、周囲の山々を覆っていた雲も殆ど無くなった。 棒立山の山頂と同様に、雪庇となっている猫の額ほどの狭い山頂は360度の展望が利き、日白山やその手前の東谷山が指呼の間に望まれた。 周囲の山々も昨夜の新雪のせいで4月の山とは思えないほど白く輝いていた。 棒立山はすでに低くなったが、後続者の姿はまだ見えなかった。
タカマタギから1581mの中間峰を経て日白山への無木立のたおやかな尾根は、正に絵に描いたような稜線漫歩で歩くことが楽しくて仕方がない。 昔から地元の方を中心に愛されてきたルートであることが頷ける。 中間峰からは日白山の山頂にいる登山者や、二居からのルートで山頂に向かう登山者の姿が見えた。 天気は予報以上に良くなったが、寒気の影響で気温は高くならないので雪の状態は良いままだ。 全てが良い方向に転んだので、労せずして11時過ぎに三度目の日白山(1631m)の山頂に着いた。 山頂からの大展望は新鮮味には欠けるものの、いつ見ても素晴らしいの一言に尽きる。 4月に入ったということもあり山頂には2組のパーティーが寛いでいたが、その中のお一人から、「春日部にお住いの方ですか?」と聞かれて驚いた。 私の拙いHPを見ていただいているとのことで嬉しかった。
予定よりも2時間ほど早く着いたので、二居からのルートで次々に登ってくるパーティーに山頂を譲り、予定には無かった一つ先の二居俣ノ頭(1584m)に向かう。 僅かに咲いている霧氷の花が綺麗だ。 日白山と二居俣ノ頭のコルから先にはトレースがなく、静かな二居俣ノ頭の山頂でゆっくり寛ぐ。 予報どおり風は全くないが、時折小さなつむじ風が新雪を舞い上げる不思議な現象が見られた。
復路は日白山への登り返しから始まるが、往路は逆光だった谷川連峰やその背後の奥利根の山々が順光となり、空の青さも増してきたので依然として足取りは軽かった。 天気は尻上がりに益々良くなり、1時を過ぎてもまだ日白山の山頂には複数のパーティーが寛いでいた。 二居からの縦走者などにより土樽方面へのトレースはさらに明瞭になっていたが、復路も私達が最終便のようで、後続者の姿は見られなかった。 図らずも往復ルートが全く嫌にならず、むしろ往路よりも展望が良くなったので嬉しかった。 1040mの主尾根との分岐からの下りではさすがに雪がシャーベット状になったが、天気に恵まれた垂涎のクラシック・ルートを充分に堪能し、まだ陽の高い4時半に車に戻った。