2  0  1  7  年    2  月  

《 26日 》    坊主岳 ・ 仏谷

奈良井ダム 〜 坊主岳 〜 仏谷  (往復)

   仏谷への“リベンジ”の機会は意外と早く訪れた。 前回訪れた3週間前と同じように、坊主岳の登山口から500mほど離れた路側帯に車を停めて5時前に出発。 仏谷に登る人はいるはずもなく、坊主岳は半日行程なので、路側帯に停まっている車は他にない。 今日の天気予報は各社まちまちだったが、空には星が見えていたので安堵した。 標高1070mの登山口には雪がなく、最近では標高の低い所では雨となっていることが分かった。 

   登山口から30分ほど登るとようやく登山道を雪が覆い始め、昨日あたりの新しいトレースが見られた。 登山者は少ないが、毎週何人かが入山しているような感じで、踏み固められたトレースは前回と同じように登り易かった。 今日は長丁場となるので、意識的にペースを抑え気味に登る。 周囲が明るくなってくると右手の樹間から目指す仏谷が見えたが、山頂付近には雲が取り付いていた。 天気の回復を祈りながら登り続けると、7時過ぎに仏谷の左肩からのご来光となり嬉しくなる。 予定どおり8時過ぎに坊主岳(1960m)の山頂に着くと、天気は予報や予想よりも良くなり、近隣の御嶽山・乗鞍岳・木曽駒ケ岳などがすっきり望まれたが、眼前の仏谷には木曽駒ケ岳を未明に覆っていた雲が次々と流れ込み、登頂を拒んでいるかのようだった。 山頂の積雪は3週間前より20センチほど多く、稜線の藪がさらに埋まって良い状態になっていた。


標高1070mの坊主岳の登山口には雪がなかった


踏み固められたトレースは前回と同じように登り易かった


今日は長丁場となるので、意識的にペースを抑え気味に登る


坊主岳の山頂


坊主岳の山頂


坊主岳の山頂から見た木曽駒ケ岳


坊主岳の山頂から見た仏谷


   仏谷への実質的なスタート地点となる坊主岳の山頂を8時半前に出発。 地形図と前回の写真から読み取れる坊主岳から仏谷へのルートの概略は次のとおりだ。 1960mの坊主岳の山頂から1780mの鞍部までは藪が殆どない雪庇の尾根を一気に下り、1780mの鞍部から緩やかな登り下りを繰り返しながら1760mの最低コルまで下る。 最低コルからはほぼ登り一辺倒となり、痩せ尾根を忠実に辿って2050mの平坦地まで登り、最後は坊主岳の山頂からも良く見える広くて明るい木々の疎らな斜面を登る。 計画では坊主岳から仏谷まで登り4時間・下り3時間で、遅くとも4時までには坊主岳に戻ってくるつもりだ。 ありがたいことに雪が良く締まっていたので、アイゼンを着けただけで下れそうだったが、帰路の登り返しのトレースを付けるため私のみスノーシューを履いて下る。 いつの間にか仏谷を覆っていた雲はなくなり、気持ちも晴れ晴れとしてくる。 どうやら良い方の天気予報が当たったようだ。 

   予想どおり藪が殆どない山頂直下の雪庇の尾根の下りは見た目どおり快適で、1780mの鞍部まで雪が硬く締まっていたので、帰路の登り返しがそれほど大変ではないことが分かった。 1780mの鞍部から1760mの最低コルまでの緩やかな登り下りは予想よりも高低差と藪が少なく、この先も気持ちの良い雪稜が少しでも長く続いて欲しいと願った。 

   最低コルでしばらく寛ぎ、いよいよ仏谷への登りに入る。 最初の1820mの小ピークへは雪で藪が綺麗に埋まっていたが、段々になっている雪庇で登高スピードは上がらない。 振り返ると坊主岳の山頂はすでに遠くなっていた。 小ピークからは一旦僅かに下り、立枯れた木々が連続するやや勾配が急な顕著な尾根の登りとなった。 坊主岳の山頂を発った時は、この辺りからアイゼンに切り替えようと思っていたが、引き続き雪の状態が良かったので、スノーシューのままで登り続けた。 しばらくすると妻が後続者の姿が見えたというので驚いた。 核心部の痩せ尾根への登りに入る手前のちょっとした平らな場所で一息入れていると、男性3人と女性1人のパーティーが追い付いてきた。 4人はいずれも地元の方で、私達が埼玉から来たと言うと驚いていた。 彼らもまた私達と同じように仏谷への入山者はいないと思っていたようだ。

 

藪が殆どない山頂直下の雪庇の尾根の下りは見た目どおり快適だった


1780mの鞍部から1760mの最低コルまでの緩やかな登り下り


1780mの鞍部から1760mの最低コルへ


1780mの鞍部から1760mの最低コルまでの登り下りは高低差と藪が少なかった


1760mの最低コルから見た仏谷


最低コルから1820mの小ピークへは段々になっている雪庇で登高スピードは上がらなかった


小ピークからは立枯れた木々が連続するやや勾配が急な顕著な尾根の登りとなった


坊主岳と仏谷の間から見た坊主岳と坊主岳北峰(右)


核心部の痩せ尾根への登りに入る手前で男性3人と女性1人のパーティーが追い付いてきた


   地元パーティーもここで一息入れるとのことで先行する。 核心部の最初の痩せ尾根は、西上州の山のように背の低い雑木が茂る岩稜に雪がへばり付いたような感じで、降雪直後やその逆に雪解けで凍っている時は通過が大変そうだが、今日は正に最高のコンディションで、アイゼンに切り替えることなくスノーシューのままで登ることが出来た。 もしかしたらその辺りのことは地元パーティーは見込んでいたのかもしれない。

   最初の痩せ尾根を過ぎると尾根は予想よりも広くなり、藪も少なくてまずまず登り易かった。 仏谷の山頂がぐっと近づき、風も殆どなかったので登頂の可能性が高まったが、間もなく眼前に現れた急斜面の痩せ尾根には短い雪壁が見えたので、スノーシューからアイゼンに切り替える。 案の定、痩せ尾根の雪壁に取り付くと、ピッケルだけでは確保が充分に出来ず、先ほどまで邪魔者扱いしていた雑木を掴み、胸の高さの雪を膝で崩しながら登る。 核心部の雪壁は短かったが、久々の登攀系の登りが印象的だった。 再び地元パーティーが追い付いてきたので、核心部を終えてから道を譲る。 地元パーティーはさすがに雪には慣れているようで、ワカンのまま登り続けていた。 坊主岳の山頂からちょうど3時間で仏谷の肩とも言える2050mの広い平坦地に着いた。

   地元パーティーは広い平坦地で休憩に入ったので再び私達が先行する。 平坦地から先は尾根も広くなり、登り易い所を選んで登っていくが、気温の上昇で雪が柔らかくなってしまったので、山頂を目前にしてスノーシュー(妻はワカン)に履き替える。 再び追いついてきた地元パーティーと相前後しながら山頂直下の広くて明るい木々の疎らな斜面を登る。 傾斜は見た目よりも急だったが、山頂直下では再び雪質が良くなり、予定よりも僅かに早く正午過ぎに待望の仏谷の山頂に着いた。

核心部の最初の痩せ尾根は、背の低い雑木が茂る岩稜に雪がへばり付いたような感じだった


最初の痩せ尾根は最高のコンディションで、スノーシューのままで登ることが出来た


最初の痩せ尾根を過ぎると尾根は予想よりも広くなり、藪も少なくてまずまず登り易かった


痩せ尾根から見た仏谷の山頂


急斜面の痩せ尾根には短い雪壁が見えた


急斜面の痩せ尾根を登る


核心部を終えてから地元パーティーに道を譲る


仏谷の肩とも言える2050mの広い平坦地


2050mの広い平坦地と仏谷の間から見た坊主岳


仏谷の山頂直下の広くて明るい木々の疎らな斜面


地元パーティーと相前後しながら山頂直下を登る


   南側が開けた猫の額ほどの狭い山頂からは指呼の間に経ケ岳が望まれ、樹間から見える坊主岳は遥かに低くなっていた。 山名板は雪に埋もれているのか、元々ないのかすら分からない。 地元パーティーは『伊那山仲間』という山岳会のメンバーとのことで、意外にも全員がこの寂峰には初登頂だったようだ。 地形図にも山名が記されていない仏谷の山頂に6人が集ったのは、最初で最後の出来事ではないだろうか。

   長丁場で疲れてはいたが、帰路もまだ長いので12時半に地元パーティーに続いて山頂を発つ。 地元パーティーは坊主岳には戻らず、2050mの広い平坦地の先から派生する尾根で直接県道に下るとのことだった。 核心部の痩せ尾根の下りの手前で再びアイゼンに切り替えたが、さすがに6人が登ったトレースは完璧で、ロープを使うことなく下ることが出来た。 核心部を過ぎると雪はだいぶ柔らかくなったが、トレースの上だけは雪が硬く、地元パーティーのありがたみを感じた。

   1780mの鞍部から坊主岳への登り返しは、仏谷に登れた達成感も手伝ってあまり苦にはならなかったが、私のつまらぬ思い入れに付き合ってくれた妻には苦痛だったようだ。 “足取りも軽く”ほぼ予定どおり3時半に坊主岳の山頂に戻った。 天気はやや下り坂になってしまったが、順光となった仏谷が私には輝いて見えた。 登山口に向けて下ると、今日は坊主岳に登った人はいなかったことが分かった。


猫の額ほどの狭い仏谷の山頂


仏谷の山頂から見た木曽駒ケ岳


仏谷の山頂から見た経ケ岳


仏谷の山頂から見た黒沢山


仏谷と2050mの広い平坦地の間から見た御嶽山


2050mの広い平坦地付近から見た仏谷


痩せ尾根の下りは6人が登ったトレースのお蔭で快適だった


1760mの最低コルから1780mの鞍部へ


1780mの鞍部付近から見た仏谷


1780mの鞍部から坊主岳への登り返し


坊主岳の山頂直下から見た仏谷


坊主岳の山頂から見た仏谷


坊主岳と登山口の間から見た仏谷


2 0 1 7 年    ・    山 行 の 報 告    ・    T O P