《 11日 》 蛾ケ岳
下九一色郵便局 〜 蛾ケ岳 〜 大平山 (往復)
この時期らしい冬型となった週末は風の弱い山梨南部の山を登ったが、連休ということもあり、いつも以上にマイナーなルートを選んだ。 土曜日は3年前に辿って印象が良かった蛾ケ岳から釈迦ケ岳の縦走路を県道36号線沿いの向山の集落から周回することにした。 入山前に下山口とした下芦川の釈迦ケ岳への登山道の取り付きを確認しに行ったが、道標らしきものは一切見当たらなかった。
不安材料を抱えたまま、下九一色郵便局付近の路側帯に車を停めて7時前に出発。 蛾ケ岳への登山口にも地形図に記された登山道に導く道標はおろかテープ類も一切なかった。 車道からコンクリートの階段を上り踏み跡を辿っていくと苔むした古い石垣があったが、その先で踏み跡は不明瞭になってしまった。 周囲を観察すると自然林の尾根に上がる明瞭な踏み跡が見られた。 地形図に記された登山道とは僅かにラインが違うが、これを辿ってみるとすぐに小さな祠があった。 祠の先も浅い凹状の幅の広い道型が続き、木々の間も空いていて歩き易かった。 踏み跡は時々不明瞭となるのでルーファンしながら登ったが、たまに古いコーヒーの空き缶などが見られて心強かった。
予定よりもだいぶ遅く、登山口から2時間ほどを要して大平山へのルートとの分岐(以下この地点を@とする)に着いた。 ここまで辿ったルート上や@にはテープ類は一切なかったが、@から先は両方向共に踏み跡が明瞭だった。 不思議だったのは、登山口で合わせた高度計の標高が@の標高より100m以上も高かったことだ。 @にピンクリボンを付けて蛾ケ岳への顕著な尾根を辿る。 積雪が次第に増したため道型は雪の下に消えたが、尾根は顕著なままでルーファンの必要は全くなかった。 地形図と高度計を照らし合わせながらしばらく登っていくと、@が地形図に記された大平山へのルートの分岐(以下この地点をAとする)ではなかったこと、取り付きから登った道が地形図に記された登山道ではなかったこと、今登っているのは地形図に記された登山道であることが分かった。
@からは全く迷うことなく、新雪を踏んで気持ちの良い登高となり、予定よりも1時間ほど遅い11時前に静かな蛾ケ岳(1279m)の山頂に着いた。 展望の良い山頂だが、予想どおり今日は南アルプスや八ケ岳は雲の中だ。 これから向かう釈迦ケ岳への縦走路はもちろん、意外にも四尾連湖方面からのトレースもなかった。
間もなく地元の4人パーティーが四尾連湖方面から登ってきたので山頂を譲って釈迦ケ岳への縦走を始める。 縦走路の積雪は前回よりも少なく、ラッセルをすることもなく新雪を踏んで気持ちの良い尾根歩きとなった。 正午過ぎに人待ち顔の大平山の山頂に着いたが、計画どおりこの先の釈迦ケ岳まで縦走を続けた場合、下山口に予定している道標のない下芦川へ地形図と高度計のみで明るいうちに下れるか疑問が生じた。 地形図にはここからAの地点に下る登山道が記されていたが、沢を2回渡渉するようになっていて、あまり良い感じがしなかった。 色々と考えているうちに、登山口からの登山道を下りながら検証したいという気持が芽生えてきたので、往路を@まで戻り、その先の未踏区間をさらにAまで下ってから登山口まで登山道を下ることにした。
@とAの間の尾根上の登山道の道型は明瞭だったが、テープ類は一切なく、折れた木々の枝が堆積し、動物さえも歩いていないような感じだった。 Aは広い峠のような鞍部で、登山口付近にあった苔むした古い石垣と同じような石垣と朽ちた小さな小屋の跡があり、少し古い地味なピンクリボンが一つだけ木の枝に付けられていた。 Aから登山口へ下る登山道にもテープ類は一切なく踏み跡は所々で不明瞭となったが、途中から雪がなくなったので迷うことなく下ることが出来た。 最初に見た苔むした古い石垣の脇を通り、まだ陽の高い4時に登山口に着いたが、なぜこの登山道がこれほどまでに荒廃してしまったのか、その理由は最後まで分からなかった。