《 24日 〜 25日 》 烏帽子岳 ・ 前小河内岳 ・ 小河内岳
鳥倉林道登山口 〜 三伏峠 〜 烏帽子岳 〜 三伏峠冬期小屋(泊) 〜 烏帽子岳 〜 前小河内岳 〜 小河内岳 〜 三伏峠冬期小屋 〜 鳥倉林道登山口 (往復)
先々週、先週と続けて土曜日は弱い冬型、日曜日は冬型が緩むという予報だったが、いずれも日曜日の予報は外れて風が強かった。 今週の予報もそれと全く同じ予報だったが、唯一違うのは金曜日が祝日で三連休だったということだ。
当初は塩見岳を計画していたという山仲間の西さん&セッちゃんと松川IC近くのコンビニで待ち合わせ、登山口の鳥倉林道のゲート前の駐車場に向かう。 26日まで通行出来るという鳥倉林道が昨夜の降雪で通行止めになっていることを危惧していたが、途中のゲートは開いていたので安堵した。 林道の途中には所々で雪があり、ゲート前の駐車場も薄っすらと雪が積もっていた。 三連休初日の昨日は天気が悪かったが、駐車場にはすでに10台ほどの車が停まっていた。 大半の車は昨日からの入山者のものらしく、屋根に昨日の新雪を載せていた。
8時半に駐車場を出発。 気温は低くて寒いが、天気は予報よりも良さそうだ。 先月は登山道の入口までの車道にカラマツの落葉の絨毯が敷かれていたが、今日は白い雪の道となっていて、靴跡から今日の先行者が4人いることが分かった(私達が最後だったようだ)。 登山道の積雪は2200m辺りから一気に増えたが、すでに踏み固められたトレースが出来ていたので、無雪期と同じような感覚とペースで歩けた。 気温が低いため少しの風でも寒く感じるが、風は予報よりも弱かったので楽だった。 幸運にも途中にある唯一の水場の水が僅かに出ていたので、一人当たり3リッターの水を汲んでいく。 良いトレースに恵まれたため、予想よりもだいぶ早く1時過ぎに三伏峠に着いた。
意外にも三伏峠小屋の前の幕場にはテントが一張もなく、冬期小屋は盛況で、二部屋のうち手前の8畳ほどの部屋には5人分の荷物があり、奥の6畳ほどの部屋には大型のテントが張られていた。 冬期小屋の中にいた人の話では、テントを張った4人のパーティーは塩見岳を登りに行っているとのことだった。 冬期小屋の混雑を嫌い、まだ時間が早いので明日予定している小河内岳の山頂直下に建つ避難小屋まで行きたいという妻やセッちゃんを説得し、各部屋に各々2畳ほど空いていたスペースに無事落ち着くことが出来た。 寒い小屋の中で遅い昼食を食べ、妻とセッちゃんは展望の良い三伏山へ、私は明日の下見のために烏帽子岳(2726m)に向かった。
風はすっかり止んでしまい、明日やってくる高気圧がもう来てしまったのではないかと思えるほどだ。 意外にも三伏峠小屋の先の塩見岳との分岐から烏帽子岳方面への登山道にも明瞭なトレースが見られたが、尾根に上がる手前の樹林帯の中で積雪が多くなると、そこでトレースは終わっていた。 ツボ足でのラッセルは効率が悪いのでスノーシューを履いて登る。 先月ここを登った時の記憶が役に立ち、道型はないがルーファンは不要だった。 山頂手前のハイマツ帯の尾根に上がると、雪がちょうど良い嵩でハイマツを覆い、先月からの寒波で雪が硬く締まっていたので、スノーシューで歩くのが過剰なくらい快適だった。 山頂は快晴無風で暖かく、下見に来たつもりが何か得をしたような気分だ。 明日辿る前小河内岳方面への縦走路は、地形図どおりに緩やかで歩き易そうな感じに見えた。 また、この山の周囲と同じように雪が硬く締まっていれば、ラッセルに苛まれずとりあえず前小河内岳までは行けそうな感じがした。 一方、その先の前小河内岳から小河内岳の間は積雪が一段と多そうで、風の通り道になっているようにも思えた。
下見に時間が掛かり、冬期小屋に着いたのは5時近くになってしまったが、ちょうど宿泊者の夕食の準備が始まったので、小屋の中は先ほどとは違って暖かかった。 夕食中に奥の部屋にテントを張ったパーティーが塩見岳から戻ってきた。
昨日の下見で、小河内岳の登頂の成否はラッセルよりも風や低温対策だと再認識したため、翌朝は早出をせずに周囲が白み始めた6時半に冬期小屋を出発した。 西さん&セッちゃんは10分ほど前に出発していった。 冬期小屋に同宿した男女パーティーがその少し前に出発していったので、とりあえずアイゼンを着けて登ることにした。 小屋の中だけでなく、外も予想より暖かかったのは、上空の薄い雲のせいだった。 やはり天気は前倒しとなり、高気圧は通過してしまったのだろうか。 樹林帯を抜け展望の良い尾根に上がると、目標の小河内岳が良く見え、心配していた風も殆どなかったので安堵した。 昨日の下見が功を奏し、冬期小屋から1時間足らずで烏帽子岳(2726m)の山頂に着いた。 ちょうどご来光となったが、残念ながら雲に遮られてしまい、期待していた素晴らしい朝焼けショーは見られなかった。
先行していた男女パーティーと写真を撮り合い、アイゼンを着けたまま前小河内岳方面に向かう。 ハイマツの切り裂きとなっている登山道の道型は時々見られるが、予想どおり雪が硬く締まっていたので、歩き易い尾根の真上を辿っていく。 ありがたいことに、見た目どおり尾根の傾斜は緩く、コルまではスムースに下れた。 コルから前小河内岳への登りに入ると、尾根上のハイマツが露出したり、雪が柔らかくて歩きにくくなったので、私のみスノーシューを履いてしばらく様子を見ることにした。 ありがたいことに、しばらくすると再び雪面は硬く締り、尾根の真上を快適に歩くことが出来るようになった。 前小河内岳直下の長い頂上稜線は大らかな南アルプスを象徴するかのような雰囲気で足取りが軽くなる。 陽射しは徐々に強くなり、風も殆ど感じられなくなった。
予定よりも少し早く、9時前に前小河内岳(2784m)の山頂に着いた。 山頂の標識は雪の下なのか見当らなかった。 私達だけで貸し切りの山頂は烏帽子岳と同様に360度の大展望で、荒川三山が眼前に大きく望まれたが、私の目線は純白の神々しい小河内岳に向いていた。 雲海に浮かぶ富士山も今日は終始脇役的な存在だった。 ありがたいことに山頂は無風で、これから辿る小河内岳までの稜線にも風の音は聞こえなかった。
緩やかな斜面を小河内岳に向かって一直線に下っていくと、コルに向けての急斜面となったが、右側のガレ場の縁に登山道の道型があり、スノーシューを履いたままで下ることが出来た。 そのあまりのスピーディーさに、コルまでの高低差は烏帽子岳と前小河内岳の間よりも小さく感じた。 コルから痩せた雪稜を僅かに登ると、一変してどこでも歩けそうな広い雪原となったが、意外にも古いワカンの跡が見られた。 ワカンの跡は登山道の上を辿っているようで、とても歩き易かった。 尾根は再び顕著になり、緩やかな勾配の雪稜の状態は鼻歌が出そうなほど良かった。 山頂直下ではやや傾斜が少し増したが、大きくジグザグを切りながらスノーシューで登り続けた。
前小河内岳から終始雪の状態が良かったので、予定よりもだいぶ早く10時前に目標の小河内岳(2801m)の山頂に着いた。 私のみならず、当初は塩見岳を計画していた西さん&セッちゃんも、胸のすくような会心の稜線漫歩に、こちらの方が断然良かったと喜んでいた。 後続者の姿はなく、北アルプスの山並みも一望出来るほどの大展望にもう何も言うことはない。 性能が悪いサブカメラでの撮影となってしまったことが唯一玉にキズだ。 山頂直下に建つ避難小屋の中は暗くて寒いので、その傍らの日溜りで眼前の荒川岳や赤石岳を眺めながらゆっくり寛ぐ。 陽射しが次第に強くなり、マイナス10度の寒さは全く感じない。
再度一人山頂に登り、皆よりも少し遅く10時半に後ろ髪を引かれる思いで山頂を発つ。 天気は予報とは反対に尻上がりに良くなり、当初は煩わしいと思えた復路の前小河内岳や烏帽子岳への登り返しは全く苦にならならず、烏帽子岳の山頂に着いた時には見事な快晴となった。 烏帽子岳の山頂では日帰りの単独の男性に写真を撮ってもらい、辿ってきた道のりを噛みしめながら最後の大展望を楽しんだ。 すでに誰もいなくなった冬期小屋で昨日の分までゆっくり寛ぎ、昨日よりも一層踏み固められて歩き易くなった道を下る。 登山口への林道の雪はだいぶ溶け、まだ明るさの残る4時半に駐車場に着いた。