2  0  1  6  年    4  月  

《 29日 〜 30日 》    農鳥岳 ・ 西農鳥岳

   奈良田第一発電所 〜 大門沢小屋(泊) 〜 農鳥岳 〜 西農鳥岳 〜 大門沢小屋 〜 奈良田第一発電所  (往復)

   暦どおりのGW前半の三連休は季節外れの冬型となり、東北や甲信北部の山は風が強い破天荒との予報で、登る山は甲信南部の山に限定されてしまい、奇しくも鬼門中の鬼門の農鳥岳にリベンジすることになった。 出発直前に山仲間のkana−catさんがご一緒してくれることになり、あまり気が進まなかった計画を後押ししてくれた。

   9時に道の駅『みのぶ富士川観光センター』でkana−catさんと待ち合わせ、登山口の奈良田第一発電所に向かう。 発電所の周辺の道路の路肩にはすでに10台以上の車が停まっていたので驚いた。 10時に発電所の先の林道のゲートを出発。 予報どおり天気は曇りがちだが、今日は小屋までのアプローチなのでかえって都合が良い。 ここ数年で三度も通っている大門沢小屋までの道は退屈だが、kana−catさんとの楽しいお喋りが、それを紛らわしてくれた。 予想どおり大門沢小屋までの登山道や山肌には一片の残雪も見られず、大門沢小屋直下のヨモギ沢に架かる丸太の橋も落ちてなかったので、大門沢小屋には予定よりも少し早く1時半に着いた。

   山小屋には年配の単独の男性が2名いたほか、白峰南稜を縦走するという若い4〜5名の男性グループがテントを張っていた。 夕方になって中年と若者のペアがやってきたが、私達を含め山小屋に泊まった7名は全て農鳥岳の往復で北岳方面への縦走者はいなかった。 山小屋から先の登山道に残雪が無いことを確かめてから山小屋の中や外でゆっくり寛ぐ。 日没寸前には富士山を覆っていた雲も取れ、明日の好天に期待が持てた。


登山口の奈良田第一発電所の先の林道のゲート


予報どおり天気は曇りがちだった


二つ目の古い吊り橋


新緑の眩しい登山道


大門沢小屋直下のヨモギ沢に架かる丸太の橋


大門沢小屋


大門沢小屋の内部


大門沢小屋から見た富士山


   翌朝は大門沢小屋を4時に出発。 他の宿泊者はまだ出発の準備をしていた。 月が見え予報よりも暖かく風もなかった。 しばらく登っても登山道には雪が一片も見られず、最初の関門となる南沢に架かる丸太の橋も渡れたが、橋の末端が凍っていたため、妻が足を滑らせ靴を少し濡らしてしまうハプニングがあった。 南沢を渡り支尾根を乗越して二つ目の丸太の橋を渡ると間もなく、沢筋で残雪が数十メートル登山道を分断している所があったが、そこを過ぎて樹林帯に入ってもしばらくの間は登山道には雪がなかった。 2200mを過ぎるとようやく登山道に残雪が見られるようになったが、道型が明瞭だったのでコースタイムどおりに登れた。 2400m付近からは雪が硬くなったのでアイゼンを着ける。 久々に空は青く、樹間からは雪の稜線も見えるようになった。 

    ダケカンバとハイマツが見られる2600m付近の残雪は予想よりも少なく、登山道の道型は依然として明瞭だった。 ハイマツが途切れると道型はなくなり、前回トラバースしたやや急な沢状の広い斜面となった。 登山道はこの斜面をトラバースし、正面に見える尾根のコルの手前から岩に付けられたペンキマークに従って右に折れるが、その岩は雪に埋もれているように見えたため、登山道を正確にトレース出来るか確信が持てなかった。 ここが今日一番の核心なので地形図を再確認していると、初見のkana−catさんが前回途中で引き返した雪の剥げたガラ場の上部に大きなピンクのテープがあるのを見つけた。 ガラ場の脇の残雪を最大限利用すれば短時間でピンクのテープの所まで登れそうだったので、現場判断で今回はこのガラ場のルートを最後まで登ってみることにした。 

   ガラ場への急斜面の雪の状態は良く、逆にガラ場の状態は見た目より悪く登りにくかったが、下から見えた大きなピンクのテープの手前の岩にもテープが付けられていたので、このルートが冬道であることに期待が持てた。 下から見えた大きなピンクのテープはハイマツの枝に付けられ、その先は残雪の斜面ではなくハイマツの海となっていた。 僅かに切り裂きのあるハイマツ帯を祈るように進むと、ありがたいことにその先も切り裂きは続いていたので、ここが冬道であることを確信した。 間もなく6年前の冬に風雪の大門沢下降点で敗退した時に朧げに見えた古い棒状の標柱があり、2本目の同じ標柱からは指呼の間に大門沢下降点が見えた。 風は今のところ殆どなく、核心部を短時間で通過出来てラッキーだった。 2本目の標柱から大門沢下降点へは登山道の道型が明瞭で、予定よりもだいぶ早い7時半に大門沢下降点に着いた。


大門沢小屋を4時に出発する


二つ目の橋を渡る


沢筋で残雪が数十メートル登山道を分断している所があった


朝焼けの富士山


2200mを過ぎるとようやく登山道に雪が見られるようになった


2400m付近からは雪が硬くなったのでアイゼンを着けて登る


2600m付近の残雪は予想よりも少なく、登山道の道型は依然として明瞭だった


ハイマツが途切れると道型はなくなり、前回トラバースしたやや急な沢状の広い斜面となった


前回途中で引き返した雪の剥げたガラ場


ガラ場への急斜面の雪の状態は良かった


ガラ場の状態は見た目より悪く登りにくかった


ガラ場の終了点と下から見えた大きなピンクのテープ


ピンクのテープの先は残雪の斜面ではなくハイマツの海となっていた


ハイマツ帯の切り裂きは続いていたので、ここが冬道であることを確信した


6年前の冬に敗退した時に朧げに見えた古い棒状の標柱(2本目)


古い棒状の標柱(2本目)から見た農鳥岳の山頂方面


古い棒状の標柱(2本目)から大門沢下降点へ


大門沢下降点


大門沢下降点から見た富士山


   予想どおり稜線は登山道が露出していたのでアイゼンを外して一息入れる。 さすがに風は少し吹いていたが、予想以上の良い天気でGWらしい陽射しのぬくもりを感じた。 大門沢下降点を出発するとすぐに塩見岳・荒川岳・赤石岳などが見えるようになり、軽い足取りが更に軽くなった。 このままアイゼンなしで山頂まで行けるかと思ったが、途中で残雪が登山道を消してしまったので、その区間だけアイゼンを着けた。 山頂手前の痩せた岩稜帯では再び登山道が露出していたのでアイゼンを外す。 指呼の間に見えるようになった西農鳥岳へもこのまま問題なく行けそうに思えた。

   偽ピークを二つやり過ごし、予定よりもだいぶ早い9時に待望の農鳥岳(3025m)の山頂に着いた。 20年以上前の夏に広河原から日帰りで登って以来の登頂で、大門沢小屋からは初めての登頂だった。 眼前には北岳と間ノ岳が大きく望まれ、鳳凰三山はすでに黒々としていた。 kana−catさんと妻は初登頂で、絶好の天気に恵まれた登頂を喜び合った。 後続のパーティーの姿は全く見えず、図らずも山頂は私達だけで貸し切りとなった。  

   GWとは思えない静かな山頂で30分ほどゆっくり寛いでから、予定どおり西農鳥岳へ向かう。 久々の3000mの稜線歩きで息が切れる。 途中一か所だけ僅かな雪渓が登山道を塞いでいたが、アイゼンの脱着が面倒なので、ハイマツを踏んでガラ場へ迂回して進み、ほぼコースタイムどおりに西農鳥岳(3050m)の山頂に着いた。 もちろんこの頂も私達だけで貸し切りだ。 中央アルプスの山々の眺めは良いが、予報どおり北アルプスの山々は天気が悪いようで良く見えなかった。 農鳥岳の山頂に単独の男性の姿が見えた。

   10時半前に西農鳥岳の山頂を発って往路を引き返す。 明日は強風が予報されているので未練はない。 途中、農鳥岳を過ぎてしばらくすると、山小屋に泊まっていた残りの三人とすれ違った。 大門沢下降点からは、先ほど登った冬道のガラ場を下るのは嫌なので、登山道どおり残雪の沢状の斜面を下るつもりでいたが、ルーファンなしで確実に下れるのは先ほど登った冬道なので、現場判断で冬道を下ることにした。 大きなピンクテープの付いたハイマツ帯の取り付きから下も、ガラ場の脇のハイマツの藪の中に微かな踏み跡が見られ、下りであればスムースに進むことが出来た。 草付が見えた所からハイマツの藪を離れて草付を下り、アイゼンを着けることなく短時間で核心部を通過することが出来たが、ハイマツが雪に埋もれているような状況では、このルートは積極的に使えないだろうと思った。 草付の先からアイゼンを着け、登山道から残雪がなくなる所まで下った。 コースタイムよりも早く下れたので、予定よりもだいぶ早い2時半に大門沢小屋に着いた。

   予想どおり山小屋には誰もおらず、ここに泊まった人達の荷物があるだけだった。 私達もここに連泊する予定でいたが、今日の登山が予想よりもスムースに終わり、時間もまだ早かったので協議の結果下山することにした。 休憩しながらゆっくり荷物を整理し、3時半前に大門沢小屋を発つ。 良い天気が続かない次の三連休の山の計画を考えながら“通い慣れた道”を下り、まだ明るさの残る6時に発電所の手前の林道のゲートに着いた。 発電所付近の道路の路肩に停めてあった車も入れ替わり、北岳への登山者だけでなく、釣りや山菜採りの車が主だったように思えた。


大門沢下降点と農鳥岳の間から見た塩見岳(中央)と荒川岳(左)


大門沢下降点と農鳥岳の間から見た農鳥岳の山頂方面


大門沢下降点と農鳥岳の間から見た広河内岳と荒川岳(右)


冬毛から夏毛に変わりつつある雷鳥


残雪が登山道を消してしまったので、その区間だけアイゼンを着けた


農鳥岳の山頂直下から見た西農鳥岳


農鳥岳の二つの偽ピーク


農鳥岳の山頂(中央)と頂上稜線


農鳥岳の山頂


農鳥岳の山頂


農鳥岳の山頂から見た間ノ岳と北岳(右奥)


農鳥岳の山頂から見た鳳凰三山(中央奥)と北岳(左端)


農鳥岳の山頂から見た北岳


農鳥岳の山頂から見た塩見岳


農鳥岳と西農鳥岳の間から見た西農鳥岳


農鳥岳と西農鳥岳の間から見た農鳥岳


雪渓が登山道を塞いでいたのでハイマツを踏んでガラ場へ迂回して進んだ


西農鳥岳の山頂直下


西農鳥岳の山頂


西農鳥岳の山頂から見た間ノ岳


西農鳥岳の山頂から見た中央アルプス


西農鳥岳から農鳥岳へ


農鳥岳から大門沢下降点へ


大門沢下降点付近から見た大唐松山


冬道のハイマツの藪を離れて草付を下る


雪の腐った大門沢小屋への下り


2 0 1 6 年    ・    山 行 の 報 告    ・    T O P