2  0  1  6  年    4  月  

《 16日 》    武能岳 ・ 茂倉岳

   蓬新道入口 〜 蓬峠 〜 武能岳 〜 茂倉岳 〜 一ノ倉岳 〜 茂倉岳 〜 蓬新道入口  (周回)

   週末は天気が良いのは土曜日だけで、妻の足の甲が腫れる病気が治らず、二週連続での単独行となった。 甲信越方面の山では新潟が一番天気が良く、昼前からは風も収まるとの予報だったので、残雪期には人気のない土樽から蓬峠への蓬新道を登り、蓬峠から武能岳を経て茂倉岳に登って土樽への茂倉新道を下るという周回コースを歩くことにした。

   関越道の土樽PAで前泊し、未明に蓬新道の実質的な登山口となる林道の終点に向かう。 予想どおり林道には全く雪がなく、この時期でもう林道の終点まで車で入れた。 今年はどの山域でも麓では1か月、稜線では半月ほど雪解けが早いことをあらためて実感する。 予想どおり他に車はなかった。

   林道の終点の駐車スペースに車を停めて5時に出発。 気温は0度と放射冷却で冷え込んでいるが、天気は予報どおり良さそうだ。 蓬沢に沿った登山道に入ると残雪が所々にあったが、雪は良く締まっていて歩き易く、最初のポイントとなる東俣沢出合の渡渉点まで1時間足らずで着いた。 出合の先からは沢を離れて尾根に取り付くが、しばらくの間登山道には雪が全くなかった。 1085m地点を過ぎると山肌や登山道を残雪が覆うようになった。 トレースらしきものは見当たらなかったが、低温により相変らず雪が良く締まっていたのでラッセルすることもなく、また尾根はとてもすっきりして見通しが良く、ルーファンの必要も全くなかった。 間もなく稜線からのご来光となり、樹間から背後の仙ノ倉山や苗場山、そして足拍子岳も良く見えるようになった。 予定よりも早く、7時前に1240m地点にある広場の脇に着いた。 計画では現場判断でこの地点からの登山道が分かれば登山道を登り、分かりにくいかあるいは登るのが難しそうであれば、雪が稜線まで繋がっていることを前提に、そのまま尾根を直登してシシゴヤノ頭へ通じる稜線を目指して登ろうと思った。 

   とりあえずここでアイゼンを着け、登山道どおりに尾根を外れて蓬峠への複雑なルートに入る。 それまでの明瞭な尾根の登山道とは一変し、登山道と思われる背の低い灌木の隙間を地形図と高度計をこまめにチェックしながら進むが、良いラインだと思った所も急に密藪となってしまったり、残雪が切れて笹薮になってしまったりで、最初に越える小さな谷までなかなか辿り着けない。 何度か試行錯誤しながらルーファンているうちに、あっという間に1時間が過ぎてしまった。 広場まで戻って登山道のない尾根ルートを登ろうという考えが頭をよぎり始めたが、稜線の直下で灌木の密藪となったら嫌だなと思い、さらに何度か試行錯誤を繰り返していると、ようやく最初に越える狭い谷に降りることが出来た。 登山道はここからトラバース気味に谷から広い尾根に取り付くが、その尾根には藪が随所に見られ、道型も全く出ていなかったので、結局は地形に関係なく藪のない所を選んで登るしか術がないように思えた。 

   雪が締まっていることが幸いし、藪の見られる尾根の背には乗らず、藪のない尾根の脇を斜めに登っていくと、先ほど降り立った狭い谷の源頭が稜線まで残雪で繋がっているのが見えた。 沢はそこそこ傾斜はあるものの、雪崩の心配は全くなさそうで、雪の締ったこの時間帯なら短時間で登れそうに思えた。 直感を信じて、蓬峠とは反対方向にトラバースしながら谷に降り立つと、沢は見た目以上に綺麗で雪も良く締っていた。 アイゼンの前爪を利かせ、ピッケルを刺しながらの登高は、藪から解放されたことも手伝って思わず笑ってしまうほど快適だった。 稜線が近づいても危惧していた藪は全くなく、逆に谷は広くなって傾斜も緩んできた。 稜線の雪庇も運良く落ちていて、全くの予定外のルートで8時過ぎにシシゴヤノ頭へ通じる稜線に着いた。 稜線は一部で登山道が露出し、そうでない所も残雪を踏んで七ツ小屋山と蓬峠を結ぶ縦走路の分岐まで容易に行けそうだった。 当初考えていた1240m地点の広場から直登する尾根は稜線の手前が藪になっていたので、意外な結果で今日の核心部を終えたことが妙に嬉しかった。 この無名沢を偶然登れたのは、雪が少ないことに他ならなかった。 稜線との出合には冷たい風が吹いていたが、展望が良いのでしばらくここで寛いだ。


 

蓬新道の実質的な登山口となる林道の終点まで雪は全くなかった(帰着時の撮影)


蓬沢に沿った登山道に入ると残雪が所々にあったが、雪は良く締まっていて歩き易かった


ロープが張られた東俣沢出合の渡渉点


東俣沢出合の先から尾根に取り付くと、しばらくの間登山道には雪が全くなかった


1085m地点を過ぎると山肌や登山道を残雪が覆うようになった


蓬新道から見た仙ノ倉山(左)と苗場山(右)


1240m地点にある広場の脇


シシゴヤノ頭へ通じる稜線に延びる広い尾根


登山道どおりに尾根を外れて蓬峠への複雑なルートに入る


登山道と思われる背の低い灌木の隙間を進む


最初に越える狭い谷に降り立つ


藪のない尾根の脇から見た狭い谷の源頭が稜線まで残雪で繋がっているのが見えた


沢は見た目以上に綺麗で雪も良く締っていた


沢は見た目以上に綺麗で雪も良く締っていた


稜線との出合から見たシシゴヤノ頭


稜線との出合から見た武能岳


稜線との出合から見た大源太山


稜線との出合から見た七ツ小屋山


稜線との出合から見た仙ノ倉山(左)と苗場山(右)


   稜線との出合から先は見た目どおり歩き易く、15分ほどで七ツ小屋山と蓬峠を結ぶ縦走路の分岐に着き、道標は無かったが笹が刈られた明瞭な道を蓬峠方面に折れた。 この道は旧道だったのか、蓬峠に近づくにつれて笹が被ってきてしまったが、稜線との出合から30分ほどで当初の予定よりも早い9時に蓬ヒュッテの建つ蓬峠に着いた。 蓬ヒュッテは避難小屋として開放されていたが、寝袋も用意されていて快適そうだった。 峠で留守番の妻に電話を入れると、熊本でさらに大きな地震があったということで驚いた。 時間に余裕が出来たので日溜りとなっていた小屋の前で再びゆっくり寛いだ。

   武能岳への登山道には予想以上に雪がなく、登山道は殆ど露出していたのでアイゼンを外したが、以後下山するまでアイゼンを使うことはなかった。 たまに見られる残雪の上には先週くらいの古いトレースがあった。 もう何度か歩いている道だが、今日は前後に人影は全く見えず、茂倉岳までは貸し切りとなった。 5年前の馬蹄形縦走の時は天気に恵まれなかったが、今日は周囲に見えない山はなかった。 稜線を吹く風も次第に弱まり、蓬峠から1時間足らずで武能岳(1759m)の山頂に着いた。 360度の展望が利く山頂からはこれから向かう茂倉岳とその隣の一ノ倉岳が大きく迫り、苗場山、仙ノ倉山、万太郎山、笠ケ岳、朝日岳、七ツ小屋山、巻機山、平ケ岳、武尊山、柄沢山など枚挙にいとまがない。 疲れてはいないが、ついついまたのんびり寛いでしまう。 

   武能岳から先の下りは少し急だったが、引き続き登山道が露出している部分が多く、アイゼンを着けることなく下れた。 最低コルの笹平(1594m)から茂倉岳(1977m)までの400m近い登り返しも、清々しい春の空気と展望の良さで全く苦にならない。 最後は雪の斜面となり、予定よりも早く正午過ぎに茂倉岳の山頂に着いた。 山頂には反対方向から縦走してきた夫婦のパーティーが寛いでいた。 山頂からはそれまで茂倉岳に隠されて見えなかった谷川岳やオジカ沢ノ頭、そして遠く中ノ岳や越後駒ケ岳も見えるようになった。  空の色は少し濁り始めたが、まだまだ天気は安定していたので、指呼の間の一ノ倉岳(1974m)を往復してから茂倉新道を土樽へ下る。 山頂直下の茂倉岳避難小屋は今シーズンまだ誰も利用していないようで、雪に埋もれたままだった。 避難小屋から先の痩せた顕著な尾根の下りは速く、茂倉岳の眺めが良い矢場ノ頭を経て、まだ陽の高い3時半過ぎに蓬新道のへの林道の分岐に着き、そこから30分ほど林道を歩いて林道の終点に停めた車に戻った。


七ツ小屋山と蓬峠を結ぶ縦走路の分岐


七ツ小屋山と蓬峠を結ぶ縦走路の分岐から見た巻機山(中央奥)


蓬ヒュッテの建つ蓬峠から見た武能岳


蓬ヒュッテの内部


蓬峠から見た笠ケ岳(右)と朝日岳(左)


蓬峠と武能岳の間から見た七ツ小屋山(中央手前)


蓬峠と武能岳の間から見たコマノカミノの頭(中央右)と足拍子岳(中央左)


武能岳の山頂


武能岳の山頂から見た茂倉岳と一ノ倉岳(左)


武能岳の山頂から見た仙ノ倉山(右)と万太郎山(左)


武能岳の山頂から見た笠ケ岳(中央右)と朝日岳(中央左)


武能岳の山頂から見た上越国境の山々


武能岳から最低コルの笹平へ


笹平付近から見た武能岳


笹平と茂倉岳の間から見た一ノ倉岳


笹平と茂倉岳の間の縦走路と武能岳(左)


茂倉岳の山頂直下


茂倉岳の山頂


茂倉岳の山頂から見た一ノ倉岳


茂倉岳の山頂から見た谷川岳


茂倉岳の山頂から見たオジカ沢ノ頭


茂倉岳の山頂から見た朝日岳(右)と巻機山(左奥)


一ノ倉岳の山頂から見た茂倉岳


一ノ倉岳の山頂から見た谷川岳


雪に埋もれた山頂直下の茂倉岳避難小屋


矢場ノ頭から見た茂倉岳


矢場ノ頭から見た万太郎山と仙ノ倉山(右端)


2 0 1 6 年    ・    山 行 の 報 告    ・    T O P