2  0  1  6  年    3  月  

《 27日 》    阿寺山

    広堀川橋 〜 阿寺山  (往復)

   関越道の『石打塩沢SA』に前泊し、翌朝阿寺山の登山口を目指す。 天気は予報どおり良さそうだ。 阿寺山は18年前の秋に八海山からの周回ルートで五竜岳を経て通過しただけで、それ以降は登っていない。 五竜岳から阿寺山の間の紅葉が素晴らしかったという朧げな記憶だけがあり、いつかまた秋に再訪したいと思っていた山だ。 登山口が車道の脇にあり、付近には建物もあったという曖昧な記憶だけを頼りに、地図がなくても登山口まで行けると思ったが、麓の山口の集落で八海山スキー場への道を左に分けてから少し進んだ養魚場の先の広堀橋で除雪は終わり、登山口まで車でアプローチすることが出来なかった。 周囲には登山者の車もなく、阿寺山への道標もなかった。 

   広堀橋の手前に車を停めて6時に出発した直後に登山者らしい車がやってきたので、乗っていたご夫婦に話を伺うと、これから阿寺山に登られるとのことだったので、状況を説明して登山口の場所を教えていただいた。 15分ほど雪に覆われた車道を歩いていくと、『五竜岳6.0キロ』と記された道標があり、車道もそこから先は通行止めになっていた。 道標が指す河原の方向には登山道の道型やトレースはなかったが、とりあえずその方向に進んで目印となるものがあるかを探してみたが、全くそれらしきものは見られなかった。 仕方なく一旦登山口まで戻ると、先ほどの車のご夫婦が来たので今度は地形図を見せていただいた。 ご主人の話ではこの時期は沢沿いの登山道ではなく、山頂まで真っ直ぐに延びる尾根を登るようだった。 地形図を頭に焼き付け、登山口から少し林道を進んだヘアピンカーブの所から急斜面の雪壁を登る。 その先で再び林道と合流したので、私のみスノーシューを履いて進む。 間もなく送水管のある堰堤があり、再び地形図を見せていただく。 ここから阿寺山の山頂は見えないが、堰堤を渡った先の尾根を登るようで、途中の1004m地点から先は等高線が詰まったやや急な斜面となっていた。 高度計の数値は昨日のままだが、この情報だけを頼りに尾根に取り付くことになった。 

   堰堤を渡り少し藪の出た尾根の末端まで行くと、かなり古い赤テープとやや古い赤テープが2つ見られ、そのすぐ先には送水管の取水口があった。 高度計の標高は530mだった。 尾根は見た目よりも顕著で、積雪は少ないが最近新雪が少し降ったようでトレースは全くなかった。 尾根の末端からしばらく手探りで登っていくと、時々古い赤テープが見られたので、この尾根が冬道だという期待が持てた。 ご夫婦はワカンなどを持っていないようで、地図を持っていない私達が終始先行することになった。  積雪が次第に増えてきたので、途中から妻もワカンを履いて登る。 樹間からは端正な入道岳が見えて心を奪われるが、今日は阿寺山さえ登れるかどうか定かではないので、登るのは無理だろう。

   尾根の末端から2時間ほどで1004m地点らしき所に着いた。 意外にもそこには新しいピンクのテープが見られたので、この尾根が冬道であることを確信した。 高度計の標高はちょうど1000mだった。 そこから南西の方向に見えた山は下山後に高倉山(1143m)だということが分かった。 後続のご夫婦はまだ登ってこなかったので、地形図を再度見せてもらうことなく先に進む。 1004m地点から先は尾根の幅が広くなったが、数十メートル先にも同じピンクのテープが見られ、その先も間隔は長いが同じテープが続いていたので、標高差で100mほど稼ぐことが出来た。


 

広堀橋から見た阿寺山(中央の黒い尾根を登った)


広堀橋までで除雪は終わっていた


登山口までの林道


登山口にあった『五竜岳6.0キロ』と記された道標


送水管のある堰堤


尾根の末端のすぐ先には送水管の取水口があった


尾根の末端からしばらく手探りで登っていく


積雪が次第に増えてきたので、途中から妻もワカンを履いて登る


樹間から見た八海山(左)と入道岳(右)


尾根の末端から1004m地点へ


尾根の末端から1004m地点へ


新しいピンクのテープがあった1004m地点


1004m地点から見た高倉山


1004m地点から見た八海山


1004m地点から先は尾根の幅が広くなった


1004m地点から新しいピンクのテープを目印に登る


   高度計の1100m付近にはちょっとした無木立の平らなテラスがあり、そこから先は尾根が完全に消失し、先ほど見た地形図の記憶どおり、幅の広いやや急な斜面となっていた。 頼みの新しいピンクのテープはなくなり、どの辺りから取り付こうかをしばらく思案したが、急斜面に弱点はなさそうだったので、とりあえず今までと同じ方向に進み、後は斜面の傾斜を見極めながらということにした。 雪の状態は悪くないが、急斜面はスノーシューでは登りにくく、ワカンの方が適している感じがした。 登るスピードが一気に落ち、場所によっては10m登るのに5分以上を要することもあった。

   ラッセルに苦しんでいると、意外にも後続のご夫婦ではなく、男女6人の中高年の団体パーティーが登ってきた。 団体パーティーが追い付いてきた所で私達の状況を説明すると、リーダーの方は以前このルートを登ったことがあるとのことだった。 団体パーティーはそこからさらに直登気味に登り、私達は登り易いと判断した右方向に迂回したが、団体パーティーが登ったルートの方が正解だったようで、結果的に追い抜かれる形になった。 高度計の1250m付近でようやく傾斜が緩み、日溜りとなった広場で団体パーティーが休憩していた。 私達もそこで休憩し、団体パーティーのリーダーと雑談を交わしていると、後続のご夫婦も到着し、まるで10人の団体パーティーのような感じになった。 

   広場からは団体パーティーが先行し、私達は逆に一番最後から出発した。 先ほどよりやや傾斜の緩んだ斜面をしばらく登ると傾斜が一気に緩み、木立の疎らな広大な雪のスロープが延々と山頂方面に続いていた。 登頂を確信して足取りが軽くなる。 間もなく眼前の八海山のみならず、越後駒ケ岳や中ノ岳も見えるようになり、足取りは一段と軽くなった。 団体パーティーと相前後しながら11時半過ぎに快晴無風の阿寺山(1509m)の山頂に着いた。 山頂の藪は全て雪に埋もれ、360度の大展望に皆一様に歓声を上げていた。 賑やかな団体パーティーと少し離れた山頂の端でしばらく寛いでから、入道岳への広い尾根を少し進み、中ノ岳の展望が良い三ノ池付近まで足を延ばした。

   入道岳に後ろ髪を引かれながら、すでに誰もいなくなった頂上稜線を1時に発つ。 斜面の傾斜が急になってきた所でスノーシューを脱ぐ。 気温の上昇で腐った雪が良い方に作用したため下りのスピードは非常に速く、途中で夫婦パーティーと団体パーティーを追い抜いて、まだ陽の高い2時半に広堀橋に着いた。


1100m付近にはちょっとした無木立の平らなテラスがあった


無木立の平らなテラスから急斜面をラッセルして登る


高度計の1250m付近でようやく傾斜が緩んだ


団体パーティーが登ったルートの方が正解だったようで、結果的に追い抜かれる形になった


1250m付近の広場からは団体パーティーが先行した


山頂手前から見た金城山(中央右)


木立の疎らな広大な雪のスロープが延々と山頂方面に続いていた


山頂直下からは団体パーティーと相前後しながら登る


山頂直下から見た入道岳


快晴無風の阿寺山の山頂


阿寺山の山頂から見た越後駒ケ岳


阿寺山の山頂から見た巻機山


阿寺山の山頂から見た中ノ岳


阿寺山の山頂から入道岳への広い尾根


阿寺山の山頂から入道岳への広い尾根


三ノ池付近の雪庇の尾根


三ノ池付近の雪庇の尾根から見た中ノ岳


三ノ池付近の雪庇の尾根から見た越後沢山(中央左)と本谷山(中央右)


すでに誰もいなくなった阿寺山の山頂から往路を戻る


2 0 1 6 年    ・    山 行 の 報 告    ・    T O P