2  0  1  6  年    3  月  

《 5日 》    東谷山 ・ 日白山 ・ 二居俣ノ頭 ・ 平標山

二居 〜 東谷山 〜 日白山 〜 二居俣ノ頭 〜 平標山 〜 平標山ノ家 〜 元橋  (縦走)

   今シーズン初めて週末の新潟の天気予報に晴れのマークが出た。 この時期としては不思議と風も弱そうだ。 6年前の3月に平標山(1983m)のユウガイヒト沢をスキーで滑った時、その源頭付近から見た日白山(1631m)へのすっきりとした稜線が目に焼き付いていた。 一方、12年前の3月に二居(ふたい)からスキーで日白山を経て二居俣ノ頭(1584m)まで登ったことがあったので、ユウガイヒト沢の源頭から二居俣ノ頭までの数キロの区間の尾根が歩ければ、平標山から日白山まで踏破出来ると思った。 地形図を見る限りでは、平標山から二居俣ノ頭までの間にピークは一切なく、傾斜もそれほど急ではないことが分かったが、未踏かつ核心部のユウガイヒト沢の源頭から二居俣ノ頭までの間は尾根が痩せているので、雪の付き方によっては危険や困難さも想定された。 平標山と日白山の標高差は350mほどあるので、平標山から日白山へ縦走した方が体力的には楽だが、中盤以降にアクシデントがあった場合、ルートを熟知している平標山をゴールにした方が安全なので、敢えて日白山から平標山へ縦走することにした。


ユウガイヒト沢の源頭付近から見た日白山(右)へのすっきりとした稜線(2010年3月20日)


   国道17号線沿いの二居の除雪ステーションに前泊し5時半に出発。 もう1時間ほど早出をしたかったが、二居の集落から二居峠に通じる登山道の状況が良く分からなかった(前回は明るい時間帯にスキー場の跡地の斜面を東谷山に通じる尾根の送電線の鉄塔を目指して登った)ので仕方がない。 不安とは裏腹に二居峠に通じる登山道には数日前の新しいトレースがあり、労せずして1時間足らずで東屋の建つ二居峠(1020m)に着いた。 

   二居峠の東屋のすぐ後ろから登山道のない東谷山へ続く顕著な尾根に取り付く。 同じトレースが続いていたのでルーファンの手間が省けて助かった。 尾根の積雪は予想どおり少なく、関東の山と同じように季節が1か月ほど早い感じだ。 尾根がすっきりしてくるとランドマークの送電線の鉄塔が見えた。 積雪が少なく雪も締まっていたので、まだスノーシューは履かずに進む。 予報どおり天気は良さそうで足取りは軽い。 予定より早く7時前に送電線の鉄塔の下を通過出来たので、早出が出来なかったことに苛まれずに済んだ。 積雪が少ないので尾根全体にボリューム感がなく、藪っぽくて歩きにくい所もあった。 トレースもこれを嫌ってか、途中から尾根を外れて北側の斜面を登るようになった。 ブナの木が多くなってくると傾斜が緩み、積雪も少し増えてきたのでスノーシューを履く。 木々が疎らになると尾根の幅も広くなり、後方には苗場山、神楽ケ峰、そして白砂山が、前方にはこれから向かう日白山も見えるようになった。


 

二居の除雪ステーション


二居の集落から二居峠へ


東屋の建つ二居峠


尾根がすっきりしてくるとランドマークの送電線の鉄塔が見えた


積雪が少ないので藪っぽくて歩きにくい所もあった


トレースに従い尾根を外れて北側の斜面を登る


ブナの木が多くなってくると傾斜が緩み、積雪も少し増えてきたのでスノーシューを履く


木々が疎らになると尾根の幅も広くなり、後方には苗場山や神楽ケ峰が見えた


東谷山の手前から見た二居俣ノ頭(中央左手前)と平標山(右奥)


   傾斜が一段と緩むと東谷山の長い頂上稜線となり、ほぼ予定どおり9時前に東谷山(1553m)の山頂に着いた。 逆光だが、これから辿る日白山から二居俣ノ頭を経て平標山へと続く長い尾根が良く見渡せた。 ここ数日の降雪のためか、東谷山から先ではトレースがリセットされ無くなっていたが、さすがに昔から歩かれているクラッシックルートらしく、緩やかで歩き易そうな純白の尾根が日白山に向かって延びている。 今日の核心部がこんな感じだったら良いなと思わずにはいられなかった。 小さなピークを一つ越え、予想どおりの稜線漫歩で今日の行動時間の目安としていた10時より少し前に日白山の山頂に着いた。 妻には山頂手前から見えていたらしいが、意外にも私達よりも少し前に、この辺りではメインのスキーのルートとなる地王堂川の源頭を登ってきた単独者のスキーのトレースがあった。 12年ぶりに登った日白山の展望は期待どおり素晴らしく、春霞ながら谷川連峰や奥利根の山々、隣接するタカマタギ(1529m)の向こうに巻機山が望まれたが、やはり目線はどうしてもこれから向かう二居俣ノ頭とその先の稜線にいってしまう。


 

東谷山の長い頂上稜線


東谷山の山頂から見た日白山


東谷山の山頂から見た白砂山(右遠景)


東谷山から日白山へ


日白山への登りから見た東谷山


東谷山から日白山へ


東谷山から日白山(右奥)へ


東谷山(右)から日白山へ


日白山の山頂手前の小さなピーク


日白山の山頂から見た東谷山


日白山の山頂から見た平標山(右)と仙ノ倉山(左)


日白山の山頂から見たタカマタギ(左)方面への稜線と巻機山(遠景)


日白山の山頂から見た茂倉岳(中央)


日白山の山頂から見た二居俣ノ頭(中央手前)と平標山(左端)への尾根


   時間は惜しいがまだ先は長いので、静かな山頂で展望を愛でながらゆっくり休憩し、10時過ぎに指呼の間の二居俣ノ頭に向かう。 地王堂川の源頭となる1510mの広い鞍部まで下り、再びトレースが無くなった二居俣ノ頭まで広い尾根を登り返す。 気温は高いが雪の状態は良く、日白山から労せずして30分ほどで二居俣ノ頭の山頂に着いた。 この山頂からの展望も360度で素晴らしい。 予想どおりここから先の尾根は痩せていて、一番の核心となる1450mの最低コル付近は見えなかった。

   天気は予報以上に良く風も全く無かったので、計画どおり平標山への縦走を続ける。 山頂からしばらくの間は緩やかな下りで歩き易かったが、尾根の残雪が少なく右側の藪が濃いため、僅かに張り出した雪庇の上を歩かなければならなかった。 雪庇は小さく波打っていたので厄介だったが、雪の状態は悪くなかったので、焦らず一歩一歩進んでいくと、最低コルの手前から尾根の幅が広くなったので助かった。 細長い1450mの最低コルには吹き溜まりや煩わしいアップダウンもなく、すぐにユウガイヒト沢の源頭に向けての登り斜面となった。 標高が下がったことと気温の上昇で雪が柔らかくなり、スノーシューが下駄を履き始めたので、妻の登高スピードが一気に落ちた。 

   初夏のような暑さを避けて木陰で休んでいると、不意に前方から単独の男性が下ってきたので驚いた。 単独氏も同じように予期せぬ出会いに驚いていたので笑えた。 話を伺うと、バスで元橋の登山口にアプローチし、ヤカイ沢を登って平標山の山頂を踏み、これから日白山・タカマタギを経て土樽へ縦走されるとのことだった。 トレースのことだけ考えると、お互いにちょうど良い場所で出会った感じだ。 最低コルに下っていく単独氏を見送り、私達も重い腰を上げて登り始める。 相変らず天気は良いし、目の前には新しい単独氏のトレースもあるので、傾斜の緩いユウガイヒト沢の源頭まであと1時間ほど登れば、そこから先は稜線漫歩だとその時は疑う余地は無かった。


 

日白山から二居俣ノ頭へ


二居俣ノ頭と平標山(左奥)


二居俣ノ頭への登りから見た日白山


二居俣ノ頭の山頂


二居俣ノ頭の山頂から見た平標山


二居俣ノ頭から先の尾根は痩せていた


二居俣ノ頭から1450mの最低コルへは僅かに張り出した雪庇の上を歩く


二居俣ノ頭から1450mの最低コルへ


最低コルの手前から尾根の幅が広くなった


細長い1450mの最低コル


最低コル付近


最低コル付近から見た二居俣ノ頭(右)


平標山から下ってきた単独者とすれ違う


1582m地点への登り付近から見た二居俣ノ頭


   左手の平標沢からの支尾根が合わさる1582m地点を過ぎると、徐々に雪の状態が良くなり登り易くなってきた。 単独氏のトレースにも助けられ、1450mの最低コルから1650m付近から始まるユウガイヒト沢の源頭まで1時間ほどで登ることが出来たが、天気予報には無かった風が徐々に吹き始めた。 しばらくすれば止むだろうと思った風は上に行けば行くほど強くなり、せっかくの稜線漫歩に水を差された感じになってしまった。   

   6年前にスキーで平標山の山頂から滑った時は、松手山からの登山道がある尾根ではなく、その尾根を最短距離でトラバースしながらユウガイヒト沢の源頭に滑り込んだが、今日は積雪が少ないため単独氏のトレースどおり登山道がある尾根に向かって直登する。 風はますます強くなり、平標山をゴールにしたことが仇になってしまった。 強風に耐えながら登山道がある尾根に上がると、尾根には台風並みの爆風が吹き荒れていて立っていることもままならない状況だったので、たまらず一旦尾根から引き返して善後策を考えることにした。 唯一の救いは、期待してなかった松手山方面にトレースがあったことだ。 風は北西からこの尾根に向かって吹いているように思え、松手山方面へ下っても強風にさらされるので、とりあえず平標山の山頂方面へ向かい、風がさらに強まるようであれば(そうなれば本当に登れなくなるが)引き返して松手山方面へ登山道を駆け下りようと思った。 

   爆風の吹き荒れる登山道に戻り、足元のトレースを辿って平標山を目指す。 ありがたいことに横殴りの爆風はしばらくすると少し弱まり、強風程度になったので山頂まで登ることにしたが、妻の登高ペースは一段と遅くなりコースタイムの2倍くらいの時間を要した。 それでもほぼ予定どおり2時半前にもう誰もいなくなった平標山の山頂に着いた。


 

1582m地点から見た平標沢越しの茂倉岳(中央)


1582m地点を過ぎると、徐々に雪の状態が良くなり登り易くなってきた


1582m地点からユウガイヒト沢の源頭へ


1582m地点とユウガイヒト沢の源頭の間から見た平標山(中央)と仙ノ倉山(左)


ユウガイヒト沢の源頭付近から見た日白山(右奥) ・ 二居俣ノ頭(右手前) ・ 東谷山(左奥)


ユウガイヒト沢の源頭


1767m地点を過ぎると天気予報には無かった風が徐々に吹き始めた


松手山からの登山道には爆風が吹き荒れていた


平標山の山頂直下


平標山の山頂


平標山の山頂から見た辿ってきた山々


平標山の山頂から見た仙ノ倉山


   辿ってきた山々を眺めながらゆっくり寛ぎたいところだが、写真だけ撮って早々に強風の山頂を後にする。 山頂付近からヤカイ沢へ下るトレースはあったが、風の弱い平元新道の尾根を平標山ノ家に下る。 山小屋ではオーナーの女将さんが4月からのオープンに向けての準備をしていた。 先ほどまでの爆風が嘘のように無風で日溜りとなっている山小屋の前でゆっくり寛ぐ。 次回は静かな二居俣ノ頭の山頂に泊まり、ゆっくり時間を掛けて平標山から日白山・タカマタギを経て土樽へ縦走したいと思った。

   3時半前に山小屋を発ち、スノーシューを外して登山道を下る。 私のみ登山口付近の元橋のバス停を5時11分に出るバスに乗り、二居の除雪ステーションに置いた車を回収した。 ラジオの天気予報では、新潟は明日も昼過ぎまで天気の崩れはないと告げていたので、明日はここから登山口が近い金城山に登ることにした。 田代スキー場付近にある『宿場の湯』で汗を流し、越後湯沢で夕食を食べて塩沢石打I.C近くの道の駅『南魚沼』に向かった。


平標山から風の弱い平元新道の尾根を平標山ノ家に下る


平標山ノ家


平標山ノ家の冬期小屋


平標山ノ家から見た仙ノ倉山


スノーシューを外して登山道(平元新道)を下る


平元新道の登山口


2 0 1 6 年    ・    山 行 の 報 告    ・    T O P