《 30日 》 白根山 ・ 白根隠山 ・ 錫ケ岳
菅沼 〜 弥陀ケ池 〜 白根山 〜 五色沼避難小屋 〜 白根隠山 〜 白桧岳 〜 2296m峰 〜 錫ケ岳 〜 白根隠山 〜 五色沼 〜 弥陀ケ池 〜 菅沼 (往復/周回)
夏山シーズンとなり、北アルプスの山を予定していたが、天気予報に翻弄され、8年ぶりに奥日光の錫ケ岳(2388m)に日帰りで登った。 今回登山口とした菅沼の有料駐車場を5時半に出発。 標高が1740mと高いので、気温は8度と涼しくてありがたい。 駐車場にはすでに数台の車が停まっていたが、白根山だけなら3時間ほどで登れるので、まだ前後に登山者の影はない。 陽の当たらない北側斜面の登山道には残雪が予想よりも多く、2000mを越えてから弥陀ケ池まで途切れることはなかった。 7時過ぎに弥陀ケ池に着くと、眼前に鎮座する白根山の上空には秋のような澄みきった青空が見えた。 元々喧噪の白根山に登る予定は無かったが、滅多にない快晴の天気となったので急遽予定を変更し、白根山の山頂を踏んでから目的の錫ケ岳に行くことにした。 錫ケ岳の山頂は展望に恵まれないこともその伏線にあった。 予想どおり、登るにつれて会津や上越国境の山々が次々と見え始め、この山から見える山は全て見えるとさえ思えるほどの好展望となり、先日登った地味なネコブ山も見えて驚いた。
8時過ぎに6年ぶりの白根山(2578m)の山頂に着いたが、まだ時間も早いため、単独の男性が一人いただけだった。 山頂からは孤高の錫ケ岳が良く見えたが、ここからその頂はまだ遠かった。 展望の素晴らしい山頂でしばらく寛ぎ、8時半に錫ケ岳に背を向けて五色沼避難小屋に下る。 避難小屋への下りでは、湯元からの登山者と何人かすれ違った。 避難小屋に着くと、年配のご夫婦がいたので挨拶を交わすと、奇しくも錫ケ岳を目指しているとのことで話しが弾んだが、今日はまだ下見ということだった。 ご夫婦と情報交換しながら前白根山方面へ登り、白錫尾根に上がった分岐から南に折れ、白根隠山への明瞭な踏み跡に入る。 分岐には以前あった『錫ケ岳』と記された道標はなくなっていた。
踏み跡を辿って行くとすぐに小さな廃屋があり、その先の展望の良いピークでご夫婦に見送られて先に進む。 鹿沼市にお住いというご夫婦の話では、錫ケ岳は『栃木百名山』と『ぐんま百名山』の両方に選定されているので、是非登ってみたいとのことだった。 尾根上は無木立で展望が良く、右手には白根山が、正面にはこれから向かう白根隠山が指呼の間に望まれた。 10時過ぎにコースタイムの目安となる白根隠山(2410m)の山頂に着く。 山頂には立派な山名板があった。 360度の展望が利く山頂からは、隣の白桧岳(2394m)とその奥に錫ケ岳が見えた。
白桧岳との鞍部へガレた道を急降下すると、鞍部からは一変して膝丈の笹原の緩やかな登りとなった。 笹は殆ど抵抗感がなく、見た目よりもスムースに登れたので、白根隠山から僅か20分ほどで笹とシャクナゲに覆われた白桧岳の山頂に着いた。 錫ケ岳が大きく望まれるようになり、ようやく登頂が現実的になってきた。 一息入れてから先へ進もうとすると、意外にも反対方向から単独の若い男性が登ってきた。 ここまでの行程を尋ねると、昨日丸沼スキー場から林道を歩き、途中から目印に従って踏み跡を辿っていくと、錫ケ岳の山頂直下にある『錫ノ水場』と呼ばれる鞍部に着いたのでそこに泊まり、今日は錫ケ岳をピストンしてからこちらに縦走してこられたとのことだった。 錫ノ水場はまだ残雪の下だったが、水は何とか得られたとのことだった。 林道から錫ノ水場までの間の踏み跡には目印が多く、迷うことはなかったという貴重な情報を得た。
白桧山から先は膝上の笹原の道となったが、笹の下の踏み跡は依然として明瞭だった。 コースタイムの目安となる2296m峰に近づくと、踏み跡は雑木の茂った痩せ尾根の中へと続いていたが、木々に付けられた古い目印が多く、ルーファンに困ることはなかった。 三角点の置かれた2296m峰から錫ノ水場へは鬱蒼とした樹林帯の下りとなったが、間もなく残雪が登山道を覆い始めた。 残雪の上には先ほどすれ違った人のトレースが微かに残っていたが、目印を探し当てたり残雪が凸凹していたりして予想以上に時間が掛かった。 正午前にようやくコースタイムの目安となる錫ノ水場(2170m)に着いた。 錫ノ水場と呼ばれる鞍部には狭いながらも幕場として整地されたようなスペースがあり、下から沢の音が勢いよく聞こえた。
錫ノ水場で一息入れ、水やアイゼンをデポし、錫ケ岳の山頂に向かう。 相変らず目印が多くルーファンの必要はなかったが、残雪に覆われている所が多く歩きにくかった。 無雪期には小さな池がある場所から先に木々が切れていてる所があり、辿ってきた尾根や白根山が良く見えた。 1時ちょうどに人待ち顔の錫ケ岳の山頂に着く。 雑木に覆われた地味な山頂は展望に恵まれないが、この山の価値は何と言っても喧噪の無さにあるので不満はない。 山頂からなおも続く踏み跡を少し先に進むと、男体山や中禅寺湖が望まれ、尾根の先には皇海山がまだ遠く横たわっていた。
錫ケ岳から先の未踏の山々に思いを馳せながら、1時半前に山頂を発って往路を戻る。 残雪の上は凸凹で歩きにくいが、ひんやりとして気持ち良い。 帰路は少し天気が崩れ、上空には鉛色の雲も見られたが、涼しくてかえって都合が良かった。 コースタイムの目安となる白根隠山には4時前に着いた。 その先の登山道との分岐からは避難小屋へは下らず、前白根山の手前から直接五色沼へ下る。 すでに5時近くなり、周囲に人影は全く無い。 五色沼から弥陀ケ池までは再び残雪の登りとなった。 弥陀ケ池から菅沼の駐車場に下る途中から小雨がパラつき始めたが、まだ少しだけ明るさの残る6時半に駐車場に着いた。
車には途中でお会いしたご夫婦から、「錫ケ岳の情報提供をお願いしたい」というメモが置かれていたが、雨で濡れたメールアドレスの一部が分からず、先ほど得た新しい情報を伝えることが出来なくてもどかしかった。