《 15日 》 甲武信ケ岳 ・ 三宝山
西沢渓谷入口 〜 木賊山 〜 甲武信ケ岳 〜 三宝山 (往復)
三宝山は埼玉県の最高峰でありながら、冬季は埼玉県側の登山口からの登頂が難しい。 2年前の3月に甲武信ケ岳に登った時、幸か不幸か大雪の直後でないかぎり、昨今の登山ブームで山梨県側の西沢渓谷入口から甲武信ケ岳へのトレースが消えないことが分かったので、その先の三宝山へ久々に行ってみることにした。 甲武信小屋に泊まり、翌日は破風山から雁坂嶺方面へ縦走したかったが、なかなか春先は晴天が二日続かない。
雪の無くなった西沢渓谷入口の駐車場に前泊し、翌朝4時前に出発。 トレースが期待出来る甲武信ケ岳にこの時間帯から登る人はいない。 徳ちゃん新道の積雪は予想よりも少なく、近丸新道との分岐までアイゼンを着けずに登れたので、コースタイムよりも少し早く駐車場から2時間半で分岐に着いた。 分岐からは積雪が多くなったが、昨日の日帰りの人や甲武信小屋(テント)で泊っている人の新しいトレースのお蔭で、木賊山まで登山道のような感覚で歩けた。 標高が2000mを超えると傾斜が急になってきたので、6本爪のアイゼンを着ける。 昨日はこの辺りから新雪が数センチ降ったようだった。 間もなく甲武信小屋(テント)で泊った単独者とすれ違う。 積雪は一段と多くなり、トレースが溝のように掘れていた。 木賊山の山頂直下の雁坂嶺方面への縦走路には今回もトレースが無かった。 トレースがあり、かつ甲武信ケ岳方面の天気が悪ければ、雁坂嶺方面への周回ルートに変更することも考えていたが、天気は良いので迷わず先へ進んだ。
予定よりも少し早く9時前に木賊山(2468m)の地味な山頂に着くと、ちょうど甲武信小屋(テント)で泊っていた2パーティーと相次いですれ違った。 昨日は3パーティーが甲武信小屋(テント)で泊まったとのことだった。 山頂の積雪は標柱の高さと同じで、1mほどだった。 山頂の先のガレ場で視界が一気に開け、眼前に甲武信ケ岳と目標の三宝山が並んで見えた。 天気は予報以上に良く、金峰山・国師ケ岳・八ケ岳のみならず、その背後に北アルプス・南アルプス・中央アルプスの山々も一望された。 甲武信ケ岳の山頂手前に建つ甲武信小屋で一息入れる。 小屋の屋根の積雪は2年前よりも多く、避難小屋として開放されている小屋の入口はまだ雪で埋もれていた。 小屋から山頂へも踏み固められたトレースがあったので、労せずして10時に甲武信ケ岳の山頂に着いた。 相変らず甲信方面の展望は良かったが、予報どおり関東方面は雲が多く、富士山もやや霞んでいた。
高度計の標高を2475mに合わせ、アイゼンを外してスノーシュー(妻はワカン)を履いて今日のハイライトの三宝山に向かう。 地形図を見ると三宝山への登山道は尾根どおしにつけられているが、積雪が多いため木々の枝が藪と化して登山道が全く分からない。 とりあえず木々の間隔が空いている所を選びながら急斜面を下り、標高差で30mほど下った所から左方向にトラバースしていくと、登山道と思われる所に出た。 そこから三宝山の方向に下っていくと次第に道型が明瞭になり、それが登山道だという確信が持てた。 間もなく甲武信小屋への巻道の標識があり、現在地も分かった。 巻道との分岐からは登山道が一層明瞭になり、テープ類は一切見つけられなかったものの、ルーファンの必要は全く無かった。 後続のワカンの妻のために、なるべく歩幅を短くして歩くようにするが、予想以上に雪が締まっていたので、スノーシューは10センチほどしか沈まなかった。 尾根上は緩やかな起伏の登り下りとなっていて、三宝山寄りにある最低鞍部の標高は2395mだった。 最低鞍部から三宝山への登り返しは、今日一番の核心部だと思っていたが、気温の上昇でスノーシューが下駄を履くようになったくらいで、全く問題なく登ることが出来た。 雪の状態とルーファンで甲武信ケ岳から三宝山までどのくらい時間が掛かるか分からなかったが、11時半に16年ぶりとなる三宝山(2483m)の静かな山頂に着いた。
地味で展望に恵まれない不遇な三宝山の山頂が、積雪が一番多いこの時期はどうなっているのか楽しみにしていたが、純白の絨毯が敷かれた山頂は明るく、開放感に溢れた秘峰の雰囲気が漂っていた。 山頂の標識は頭だけが雪の上から出ていたので、積雪は1mほどだろう。 山頂直下の展望の良い三宝石で展望を愛でながらゆっくり寛ぎ、12時半前に三宝石から往路を戻る。 甲武信ケ岳の山頂にはもう誰もいなかった。 今日は何人ここを訪れたのだろうか。 日帰りの登山者とは出会うことなく、まだ陽の高い5時半に西沢渓谷入口の駐車場に着いた。