2  0  1  5  年    2  月  

《 28日 》    社山

  歌ケ浜 〜 阿世潟 〜 阿世潟峠 〜 社山 〜 1816m峰 〜 社山 〜 阿世潟峠 〜 半月山展望台 〜 阿世潟峠 〜 阿世潟 〜 歌ケ浜  (往復)

   相棒の妻が不在で久しぶりの単独行となったので、以前から気になっていた日光の大真名子山に行くことにした。 前日の夜に日光に向かうと、いろは坂の手前から予報にはなかった降雪があり、登山口とした三本松の駐車場はすでに20センチほどの新雪が積もり、車を乗り入れるのも大変だった。 しばらく様子を窺っていたが雪は降りやまず、元々ハードルの高い大真名子山への登頂が怪しくなってきたので、潔く計画を変更し、急遽社山へ登ることにした。 

   中禅寺湖まで引き返し、湖畔の歌ケ浜駐車場に前泊して翌朝5時過ぎに出発。 直前まで吹いていた風もようやく収まり、空には星が見えていた。 ゲートの閉まった湖岸の道を阿世潟方面に歩き始めると、意外にも10センチほど積もった新雪の上に新しい先行者のトレースがあった。 この時間帯から社山へ登る人がいるのかと不思議に思えたが、半月峠への分岐を過ぎて歌ケ浜から1時間ほど歩いた湖の岸辺で三脚を立てていたカメラマン氏と出会って謎が解けた。 トレースが無くなったので、ここからスノーシューを履いて歩く。 阿世潟へと続く湖岸の道は平坦なのが災いして道型がはっきりしなかったが、6時半過ぎに阿世潟峠への登山道が分岐する阿世潟に着いた。 

   阿世潟峠への登山道は積雪期に登られている割にはテープ類が殆ど無く、所々で雪から出ている階段の木の杭などを目印にルーファンしながら進む。 積雪は多い所で1m近くあった。 なるべく登山道を登るように心掛け、阿世潟から40分ほどで阿世潟峠に着いた。 陽当たりの良い稜線は新雪が20センチほど積もり、古いトレースは完全にリセットされていたが、その下の残雪は予想以上に締まっていたので、軽いラッセルで気持ち良く登ることが出来た。 予報どおり風は弱く、空の色もまずまずの青さで、絶好の登山日和だ。 出発前は大真名子山に行けなかったことをとても悔しく思っていたが、登っている社山も周囲の山々も数時間前に降り積もった新雪がとても綺麗で嬉しくなった。 逆に予定どおり大真名子山に行ってたとしたら、今頃はまだ志津乗越手前の展望の無い林道を黙々とラッセルしていただろうから、それを思うと昨夜の予期せぬ降雪に何か運命的なものを感じた。 

   まだ誰も登ってくる気配はなく、無木立の展望の良いピークで周囲の山々の展望を愛でながら遅い朝食を食べる。 日光の山らしく鹿の姿が多く見られた。 新雪のラッセルを楽しみがら、山頂手前からはやや急になった尾根を直登気味に登り、足取りも軽く9時半前に静かな社山(1826m)の山頂に着いた。 3年前の同時期に足尾の銅親水公園から南稜経由で登っているので、山頂の記憶は新しかった。 山頂の写真だけ撮って展望の良い南斜面に移動すると、無雪期に一度だけ縦走したことがある黒檜岳(1976m)が見えた。 地図もなく今からでは黒檜岳への縦走も往復も無理だが、縦走路の尾根は無木立で展望が良さそうだったので、正午になったら引き返すことにして先へ進んだ。


歌ケ浜駐車場からゲートの閉まった湖岸の道を阿世潟方面に歩き始める


狸窪付近から見た未明の社山


半月峠への分岐


中禅寺湖の岸辺から見た男体山


阿世潟


阿世潟峠への分岐


阿世潟峠への登山道を所々で雪から出ている階段の木の杭などを目印に進む


阿世潟峠


陽当たりの良い稜線は新雪が20センチほど積もり、古いトレースは完全にリセットされていた


無木立の展望の良いピークから見た社山の山頂


新雪のラッセルを楽しむ


稜線から見た男体山


稜線から見た半月山


山頂の手前からはやや急な尾根を直登する


山頂の手前の尾根


山頂直下の尾根


山頂直下から見た男体山


山頂直下から見た白根山


山頂直下から見た皇海山(右奥)と袈裟丸連山(左奥)


社山の山頂


社山の山頂


山頂の南斜面から見た黒檜岳


山頂の南斜面から見た白根山(遠景中央)と錫ケ岳(遠景左)


   山頂直下は雑木が積雪で藪と化して歩きにくかったが、そこを抜けると後は終始無木立の尾根となった。 山頂から標高差で100mほど下り、最初の1750m峰へ登り返す。 無雪期でも黒檜岳へ縦走する人が少ないこの尾根をこの時期に歩く人は稀だろう。 思わぬ珍客に驚いた鹿の群がそこら中で飛び跳ねていた。 尾根の傾斜は見た目よりも緩やかで、部分的に鹿のトレースを拾って歩く。 風が無い今日は正に稜線漫歩といった感じだ。 幅の広い1750m峰の山頂には『黒檜岳⇔社山』と記された道標が立ち、登山道が左方向へ90度折れていた。 岩が露出した山頂の西端からは次の1792m峰が指呼の間に望まれ、顕著な尾根が再び左方向へカーブして一旦下った後、鞍部からは右にカーブして1792m峰への登り返しとなった。 鞍部からは積雪が一段と増したが、陽当たりの良い斜面の雪は良く締まっていて、新雪の分しかスノーシューが沈まなかった。 相変らず周囲には鹿の姿が多い。 純白の1792m峰の山頂からは黒檜岳が大きく望まれ、この頂からの黒檜岳の展望が一番良いことが分かった。 男体山や太郎山はもちろん、順光となった白根山や錫ケ岳がすっきり見えた。 1792m峰からは緩やかに少し下り、次の1816m峰へ緩やかに登り返す。 左手にはようやく少し遠くなった社山が、阿世潟峠方面からとはまるで違う面持ちで見えた。 シュカブラの発達した幅の広い緩やかな尾根の登りはとても快適で、このまま休まずにどこまでも歩いて行けそうな感じがした。 

   雪の状態が良かったので、予想よりも少し早く11時過ぎに1816m峰に着いた。 無雪期では知らぬ間に通り過ぎてしまいそうな何の特徴もない山頂には、数本の白樺の木々が唯一アクセントを付けていた。 引き返す目安とした正午にはまだ1時間ほど早かったが、ちょうどこの辺りが社山と黒檜岳の中間くらいで、展望的にも一番良さそうだったので、ここを折り返し地点とすることに迷いはなかった。 大真名子山のことはもうすっかり脳裏から消え、鹿の鳴き声だけが聞こえる静かな頂でコーヒーをすすりながら一人悦に入る。 新雪の恩恵で平凡な尾根や谷が美しく輝き、今日この瞬間にしか立ち会えない風景に心を奪われた。 唯一相棒の妻がいないことが玉にキズだ。


 

社山の山頂直下は雑木が積雪で藪と化して歩きにくかった


社山から標高差で100mほど下った鞍部から見た1750m峰


鹿のトレースを拾って歩く


『黒檜岳⇔社山』と記された道標が立つ幅の広い1750m峰の山頂


1750m峰の長い頂上稜線


岩が露出した山頂の西端から見た1792m峰


山頂の西端から見た社山


山頂の西端から見たから白根山(遠景中央)と錫ケ岳(遠景左)


1750m峰と1792m峰の鞍部から見た1792m峰


1750m峰と1792m峰の鞍部から見た1816m峰


1792m峰から見た黒檜岳


1792m峰から見た白根山


1792m峰から見た1816m峰


1792m峰から1816m峰へ


シュカブラの発達した幅の広い緩やかな尾根


1816m峰の手前から見た社山


1816m峰の手前から見た1792m峰と男体山


数本の白樺の木々が唯一アクセントを付けていた1816m峰の山頂


1816m峰の山頂から見た黒檜岳(右奥)


1816m峰の山頂から見た足尾の久蔵沢


1816m峰の山頂から見た中禅寺湖の西端


1816m峰の山頂から見た社山と半月山(右奥)


   時間が経つのも忘れ、すっかり根が生えてしまったが、正午前に重い腰を上げて往路を戻る。 明日の天気の崩れを示唆するかのように空の色が白く濁り始めた。 1時ちょうどに社山の山頂に着くと、下山している人達の姿が数人見えた。 拡幅されたトレースの幅から、今日社山を登った人が5〜6人いたことが分かった。 登りでは2時間ほど掛かった阿世潟峠から社山までの間は40分ほどしか掛からなかった。

   阿世潟峠から半月山方面へは誰も縦走しなかったようで、峠から先にはトレースが無かった。 青空が少し戻ってきたので、静かな半月山へも行ってみることにした。 積雪は峠を境に少なくなり、尾根は顕著でルーファンの必要は全くなく、1655m峰を越えて半月峠まではコースタイムどおり1時間で歩けた。 半月峠を交差するトレースもなく、再び積雪が多くなった明るい尾根を登る。 3時に半月山の山頂直下の展望台に着いた。 今日は誰もここを訪れなかったようで、ベンチは雪に埋もれていた。 展望台からは男体山の右にようやく女峰山が見えたが、大真名子山は終始男体山の陰で見えなかった。 天気はやや回復し、空の青さが少し戻ってきた。 社山や先ほどまでいた1816m峰はだいぶ遠くなった。 半月山(1753m)を経て車道を絡めながら歌ケ浜に下ることも出来たが、展望の良い静かな尾根に未練が残り、再び阿世潟峠まで鹿の鳴き声を聞きながら戻り、もう誰もいなくなった阿世潟への道を下った。 

   湖岸の道を時々岸辺に下っては湖越しの男体山や社山の写真を撮りながら歩く。 今日は朝から晩まで本当に一日中男体山や社山を眺めていた。 狸窪を過ぎた辺りで社山の向こうに力強い夕日が見え、まだ明るい5時半過ぎに新雪の溶けた歌ケ浜駐車場に着いた。 日は徐々に長くなり、明日からは待望の春だ。


1792m峰


1750m峰から見た男体山と太郎山(左)


社山の山頂から見た1816m峰(中央手前)


社山から阿世潟峠へは拡幅されたトレースを下る


阿世潟峠への下りから見た半月山


阿世潟峠への下りから見た半月山


阿世潟峠から半月山への尾根は顕著でルーファンの必要は全くなかった


半月山への登りから見た社山


半月峠から見た半月山


半月峠の案内板


半月山の山頂直下から見た社山


半月山の山頂直下の展望台


展望台から見た男体山と女峰山(右奥)


阿世潟峠付近から見た男体山


阿世潟付近から見た男体山


歌ケ浜付近から見た社山


新雪の溶けた歌ケ浜駐車場


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