《 21日 》 朝日岳 ・ 三本槍岳 ・ 茶臼岳
大丸温泉 〜 峰ノ茶屋 〜 剣ケ峰 〜 朝日岳 〜 三本槍岳 〜 峰ノ茶屋 〜 茶臼岳 〜 大丸温泉 (往復)
真冬は強風で悪名高い那須の山に、春の訪れを知らせるかのように風の弱い予報が出たので、久しぶりに峰の茶屋から三本槍岳まで表那須の稜線を歩くことにした。
除雪終了点となっている大丸温泉の駐車場に前泊し、翌朝6時前に駐車場を出発。 すでに3台の車の主が先行したようだった。 週末を中心に茶臼岳へは多くの人が登っているので、峰の茶屋まではトレースがしっかりついていた。 モルゲンロートに染まる茶臼岳の山肌や、朝日に輝く朝日岳を仰ぎ見ながら足取りも軽く峰の茶屋へ向かって登る。 予報どおり今のところ風は全くない。 トレースのお蔭で予定よりも早く7時半に峰の茶屋に着いた。 ありがたいことに稜線も無風だった。 峰の茶屋で風がないのは初めてだ。 峰の茶屋からは隠居倉や雪をたっぷり戴いた裏那須の山々が望まれ、茶臼岳と朝日岳方面に先行者の姿がそれぞれ見えた。
アイゼンを着けて7時半過ぎに峰の茶屋を発つ。 眼前の剣ケ峰(1799m)を右から巻く登山道は雪崩の危険があるので、剣ケ峰の山頂を踏んでいく冬道を登る。 見た目どおりの急斜面だが、先行者のトレースのお蔭で登り易かった。 剣ケ峰の山頂で三脚を立てていたカメラマン氏と、この時期に風のない那須は珍しいと喜びを分かち合った。 剣ケ峰からは鋭く尖った岩塔の基部の脇を通って登山道への急斜面を下る。 ここでも先行者のトレースに助けられた。 道型の明瞭な登山道に合流し、核心部となる朝日岳への登りに入るが、意外にも登山道は雪から露出している部分が多く、滑落防止の鎖も見えていたので、ロープやピッケルを使うことなくスムースに朝日岳の肩に着いた。 指呼の間の朝日岳の山頂には先行者の人影が見え、肩から5分ほどで労せずして8時半過ぎに朝日岳(1896m)の山頂に着いた。 山頂に居合わせた二人の方との会話も先ほどと全く同じだ。
天気は良い方に安定し、少しでも悪くなりそうな気配は全く感じられなかった。 年に何度かしかない待望の“THE・DAY”だ。 ここから三本槍岳までラッセルを強いられたとしても、正午までには余裕で着くだろう。 剣ケ峰と同様に360度の大展望を愛でながら一息入れ、9時前に山頂を発って三本槍岳方面へ縦走を続ける。 朝日岳の肩から先の縦走路では予想どおり数日前の降雪で古いトレースはリセットされ、今日の新しいトレースから先行者が1名いることが分かった。 熊見曽根の分岐からは積雪が一気に増したが、先行者のトレースのお蔭でその先の1900m峰までスノーシューを履かずに歩けた。 1900m峰の山頂も展望が素晴らしく、目標の三本槍岳が眼前に大きく望まれた。
1900m峰で先行者と同じようにアイゼンを外してスノーシューを履く。 先行者のトレースは理想的なラインで清水平に向かって下り、その先の北温泉への分岐へと続いていた。 元々朝日岳の肩から先ではトレースを期待していなかったので、図らずもルーファンもラッセルもせずに拍子抜けするほど楽に歩くことになった。 相変らず風は全くなく、ここが本当に真冬の表那須の稜線かと疑いたくなるほどだった。 清水平付近で先行者の姿が見えた。 先行者に追いつきラッセルを交代することも出来たが、妻のペースを考えて自重した。 北温泉や赤面山方面から登ってくる人影もなく、北温泉への分岐付近から三本槍岳への登りに入る。 スキーで滑るには最高の幅の広いスロープだ。 那須連峰の北の要とも言える旭岳(1835m)も見えた。
これ以上望めない絶好の天気と先行者のトレースのお蔭で予定よりもだいぶ早く10時半前に三本槍岳(1916m)の山頂に着き、トレースの主にラッセルのお礼を言う。 トレースの主は那須の山だけで年間50日ほど通っているという地元の白河の方だった。 冬期は主に茶臼岳、朝日岳、旭岳のヴァリエーションルートを登っているが、今日は風が弱そうだったので主脈を縦走したとのこと。 地元氏も真冬に今日のような風の全くない日は珍しいと驚いていた。 地元氏は那須の山々の登山道の整備もしているとのことで、色々な話しを伺うことが出来た。 地元氏に山頂から見えた会津や越後の山々を教えていただき、360度の大展望にいつまでも歓喜しながら40分ほど山頂で寛いだ。
快晴無風の頂にすっかり根が生えてしまったが、先ほど朝日岳の山頂に居合わせた方と入れ違いに11時過ぎに山頂を発つ。 4人がスノーシューとワカンでつけたトレースは登山道のように歩き易くなり、登り返しとなる1900m峰まで1時間掛からなかった。 先ほどと反対に1900m峰を少し下った所でスノーシューからアイゼンに替え、剣ケ峰の山頂を再度踏んで峰の茶屋へ下る。 今日は朝日岳に登った人が結構いたようだった。
1時に朝日岳や茶臼岳を登った人で賑わう峰の茶屋に着いた。 まだ下山するには早く、天気も安定していたので予定にはなかった茶臼岳にも登ることにした。 山の東側から噴煙が勢いよく噴出していたが、先ほどの地元氏の話しでは、御嶽山の噴火後も茶臼岳への登山者は変わらないとのことだった。 昼過ぎになったので、これから茶臼岳へ登る人はいなかった。 茶臼岳はいつも風が強いためか積雪は少なく、峰の茶屋からは踏み固められたトレースを辿り、労せずして40分ほどで山頂に着いた。 朝日岳の眺めが良い山頂で一息入れ、2時半前にもう誰もいなくなった山頂を発ち、まだ陽の高い3時半過ぎに大丸温泉の駐車場に戻った。