《 11日 》 日留賀岳
小山宅 〜 日留賀岳 (往復)
冬型が緩み、関東北部の県境でも風の弱い好天の予報が出たので、5年前の同時期に登った日留賀岳に登ることにした。
前回と同じように塩原温泉街の無料駐車場に前泊し、翌朝そこから数キロ先の小山さん宅の駐車場に車を停めさせていただき6時過ぎに出発する。 まだ暗かったので、小山さんには声を掛けなかった。 家の脇の鳥居をくぐり、送電線の鉄塔がある林道へ上がる山道を歩き始める。 積雪は前回よりも明らかに多かったが、長靴のようなトレースに助けられ40分ほどで林道に出た。 トレースは林道に入ってから間もなく無くなり、新雪が10センチほど積もった林道を登山口に向かって歩く。 少し勾配が出てきたところで歩くスピードが落ちたのでスノーシューを履き、ほぼ予定どおり8時に林道の終点の登山口に着いた。
登山口付近にもトレースの名残は皆無で、少なくともここ半月くらいは入山者がいないことが分かった。 前回はここから登山道の取り付きが分からず難儀したが、入口の木には新しいピンクのテープが巻かれていた。 高度計を1030mに合わせ、前回の記憶と地形図を頼りに道型の全くない樹林帯の斜面を木々の間が空いている所を繋いで登っていく。 雪はそこそこ締まっていたので、スノーシューの沈み具合は10センチほどだった。 登山口から500mほど先の所にある平坦地の赤ペンキが印された木を目標に尾根を巻きながらトラバース気味に進んでいくが、平坦地が広すぎて目標の木が探し当てられず付近を徘徊してしまい、赤ペンキが印された木を見つけるまで登山口から1時間も掛かってしまった。
前回はここからさらに迷ったが、今回はその経験を活かして登山道よりも少し右の緩やかな斜面を木々の間を縫って直登する。 相変らず雪の状態は悪くなく、想定どおりの登高スピードで登れた。 登山口と同じ1030mの平坦地から1180mまで標高差で150m登ると、目の前に登山道を示す古いピンクのテープが見られた。 ここからは登山道どおりに右方向に折れ、やや急な斜面をトラバース気味に1514m峰に上がる尾根を目指して登る。 滑落しないよう慎重にスノーシューのデッキを斜面に打ち込んでいく。 ルーファンが上手くいき、1240mで顕著な尾根に乗ると、またまたドンピシャリ登山道を示す赤テープが見られた。 ここから1514m峰を経て山頂までは顕著な尾根を辿るのでルーファンは不要だが、登頂の有無はこれから先の雪の状態次第だ。 一息入れてから1514m峰へのやや急な尾根を登る。 途中から気温の上昇でスノーシューが下駄を履くようになってしまい、妻のペースが少し落ちたが、11時に1514m峰に着いた。 天気は予報以上に良く、ありがたいことに風は全く感じられなかった。
1514m峰からは尾根が90度近く右に折れ、緩やかな登り下りを繰り返した後、再び50mほど鞍部に向けて下る。 樹間から日留賀岳の山頂と、これから登る顕著な尾根が見えた。 尾根の右側に雪庇が大きく張り出しているので、冬道のルートはとても分かり易く記憶にも新しかった。 1470mの鞍部までは軽いラッセルで雪庇の上を歩けたが、鞍部からの登り返しからは新雪と気温の上昇で雪庇の上を積極的に歩くことが出来なくなり、雪の状態に合わせて尾根の左側の登山道、尾根上の藪、そして時には尾根の右側の雪庇の基部を状況に応じて選びながら登るようになった。 良く締まった雪庇の上をスムースに直登することが出来た前回に比べると煩わしいかぎりだが、逆にこれが本当の山登りだと思えてならなかった。 それでも傾斜の緩い尾根のお蔭で、12時半過ぎに山頂直下の僅かな平坦地まで登ることが出来た。
山頂直下の平坦地からは積雪と新雪の量が一気に増え、逆に雪庇の上しか歩けないようになってしまった。 ボリューム感のある雪庇の上に足を踏み入れる。 南斜面の雪庇は湿雪となっていたが、数メートルにも積もった下の雪はその重みで硬く締まり、雪は重たいが積雪に関係なくスノーシューの沈みは最大20センチほどで済んだ。 快適とまではいかないが、良い天気に恵まれた会心の登りだ。 困難に思えた山頂直下の雪庇を僅か30分ほどで登り終え、山頂の南端に着いた。 南端からはモンスターと化した木々の間を雪に足を取られながら僅かに進み、1時半前に三度目となる日留賀岳の山頂に着いた。 ここは毎度私達だけの静かな頂だ。 既に昼過ぎとなり、クリアーな展望は得られなかったが、南には高原山、北には鹿又山、男鹿岳、大佐飛山、そして裏那須の山々、西には荒海山、七ケ岳、会津駒ケ岳、三ツ岩岳などの南会津の山々が望まれた。 この時期にしては珍しく山頂は無風だったので、ラッセルで疲れた足を労りながら30分ほどゆっくり寛ぐことが出来た。
2時前に静かな山頂を後にしたが、先日の男体山とは違い、今日は周囲に人の気配は全く感じられなかった。 登りでは雪の状態が悪くて辿れなかった雪庇の尾根を下りではむしろ積極的に使ったので、妻が雪の亀裂に落ちるハプニングがあった。 1514m峰からは下るスピードが一段と速くなり、林道終点の登山口まで山頂からほぼコースタイムどおり2時間半で下れたので、まだ明るい5時半前に小山宅に着いた。