《 30日 》 地蔵岳 ・ 赤抜沢ノ頭 ・ 高嶺
御座石鉱泉 〜 鳳凰小屋 〜 地蔵岳 〜 赤抜沢ノ頭 〜 高嶺 (往復)
スーパー林道の通行規制や昨今の登山ブームで何度となく行く機会を逸していた早川尾根の高嶺(2778m)に21年ぶりに再訪することが出来た。 登山口の御座石鉱泉の駐車場に前泊し、翌朝3時半過ぎに出発。 三連休の次の週末なので、予想どおり駐車場に他の車は停まっていなかった。 満天の星空で風はなく、この時期にしては暖かい。 途中の西ノ平付近では大規模な土留め工事が行われていた。 鹿も鳴かない静かな燕頭山(2105m)への急坂を黙々と登る。 樹間から見える甲府の町の夜景が宝石箱のように綺麗だ。 日の出は遅く、6時前にようやく燃えるような朝焼けが始まった。 昨夜と数日前に2回の降雪(雨)があったので、山にどの程度雪があるのかは登ってみないと分からない。 5年前の同時期に鳳凰三山に登った時は、燕頭山のだいぶ手前から新雪があったが、今回は雪が全くなかったので、予想よりも早く6時半に燕頭山に着いた。
燕頭山の山頂でご来光を拝みながら朝食を食べる。 天気は予想以上に良さそうだ。 燕頭山の先で甲斐駒や地蔵岳が望まれるようになり、標高2200m付近からようやく登山道に雪が見られるようになったが、昨日はこの辺りの高さでは雨だったようで、数日前の雪が溶けてコチコチに凍っていた。 しばらく北側斜面の登りが続くので、アイゼンを着けて登ることにした。 積雪は登るにつれて多くなり、鳳凰小屋の前では20センチ近くになったが、意外にも一昨日のものと思われるトレースがあった。 予期せぬトレースのお蔭で予定よりも早く8時半に鳳凰小屋に着いた。 シーズン中は賑やかな鳳凰小屋もひっそりと静まり返り、頼もしい冬季小屋の受け入れ体制は整っていた。
日溜りとなっていた暖かい小屋の前のベンチでゆっくり休み、9時前に地蔵岳を登り始める。 まだこの辺りでも昨日は雨だったようで、トレースの上には新雪が見られなかった。 空は青く、予報以上の登山日和となり足取りは軽い。 トレースは地蔵岳まで続いていたが、軟雪で登りにくかったので、自分でトレースを付けながら登る。 オベリスクを頭上に仰ぎ見ながら、鳳凰小屋から労せずして1時間で地蔵岳の基部に着いた。 眼前には甲斐駒、アサヨ峰、仙丈ケ岳が並び、目標の高嶺も僅かに見えた。 北アルプスの山々も遠望され、振り返れば観音岳が大きい。 いつもは風が強い場所だが、今日は風が弱くてホッとする。
オベリスクには登らず、展望の良い基部で一息入れてから指呼の間の赤抜沢ノ頭に向かう。 トレースは無くなったが雪の状態は良く、15分ほどで稜線上の赤抜沢ノ頭(2750m)に着く。 さすがに稜線上には風がありジャケットを着こむが、眼前には北岳が大きく迫り、毎度のことながら白峰三山の眺めが圧巻だ。 目標の高嶺の山頂は手が届きそうなほど近くに見えたが、予想どおり稜線にはトレースはなく、辿り着けるかどうかは、まだ予測がつかなかった。 残雪期も含め積雪期に早川尾根を歩く人は今でも少ないだろうが、要所要所の雑木の枝には古いながらもテープがあり、積雪もそれほど多くなかったので、軽いラッセルで登山道の上を歩くことが出来た。 高嶺の山頂直下からは積雪が急に増え、一部で膝下のラッセルとなったが、赤抜沢ノ頭からコースタイムの2倍の1時間20分で、正午前に待望の高嶺の山頂に辿り着いた。 21年ぶりに迎えてくれた高嶺の頂は快晴無風の天気に恵まれ、ここから見える山は全て見える一方、稜線を歩く人影は皆無だった。 特異な気象状態なのか、南の方向はこの時間帯でも雲海となっていて、富士山の周りには雲海が二重になっていた。
貸し切りの好展望の頂で30分ほどゆっくり寛ぎ、後ろ髪を引かれる思いで往路を戻る。 赤抜沢ノ頭までは1時間で戻れた。 地蔵岳の基部から鳳凰小屋の間で新しい単独者のアイゼンの爪跡を見たが、往路も登山者の姿を見ることはなかった。 2時過ぎに鳳凰小屋を発ったが、秋の日は短く、西ノ平を過ぎたところで日没となり、5時過ぎに登山口の御座石鉱泉に着いた。