《 25日 〜 26日 》 地蔵岳 ・ 飯豊本山 ・ 大日岳
大日杉小屋 〜 地蔵岳 〜 切合小屋 〜 本山小屋(泊) 〜 飯豊本山 〜 御西岳 〜 大日岳 (往復)
東北の山の稜線の紅葉は終わり、先週は初雪も降ったので、久々に飯豊のメインルートを歩くことにした。 大日杉小屋から飯豊本山へのルートは歩いたことがなかったので、今回はこれを辿って本山小屋に泊まり、最高峰の大日岳へ登る計画とした。 東北道の『吾妻PA』に前泊し、翌朝登山口の大日杉小屋に向かう。 途中の米沢市街からは深い霧の中となりヤキモキしたが、登山口に着く頃には上がってくれた。 『福島飯坂IC』から登山口までは2時間ほどで着いた。 意外にも大日杉小屋前の駐車場には地元のナンバーの車が4台停まっていたが、すでに皆出発しているようで、周囲に人影はなかった。
7時に登山口を出発。 まだ陽が当たらずに寒々しいが、登山口の標高が600mと低いため、周囲は紅葉の盛りで、得をしたような気分だ。 ブナの木々の間を縫ってジグザグに切られた登り易い道でじわじわと標高を稼ぎ、『ザンゲ坂』という鎖の付いた湿った粘土質の急坂を直登すると、最初のピークの地蔵岳(1538m)への長い顕著な尾根に乗り、強い陽射しで一気に暖かくなった。 急坂が続く尾根道は、標高1000m辺りまでは黄色いブナや赤いモミジが随所に見られ、地蔵岳中腹の山肌や眼下の谷筋の紅葉が色鮮やかだった。 1200mを過ぎると落葉している木々が多くなり、晩秋の雰囲気が漂い始めたが、頭上に地蔵岳が見えるようになると、再びその山肌に僅かばかりの紅葉が見られた。
天気は予報以上の快晴で、空には雲一つない絶好の登山日和となった。 ほぼ予定どおり10時前に地蔵岳の山頂に着いた。 眼前には飯豊本山(小屋のある方のピーク)が大きく望まれたが、先週降った雪は山肌には見られなかった。 気温は予報どおり高く、まるで1か月前に戻った感じだ。 静かな山頂でしばらく寛ぎ、種蒔山の直下に建つ切合小屋へと向かう。 縦走路は緩やかな登り下りの癒し系の道だ。 眼下の紅葉を愛でながら進むが、縦走路の近くにも所々に鮮やかな紅葉が残っていて足取りは軽い。 日帰りで大日杉小屋から五段山・三国岳を経由して時計回りに周回しているという地元の単独の男性とすれ違う。 大日杉小屋の駐車場に車があった理由が分かった。 落葉した白い大きなダケカンバが林立するようになると、御坪という看板の置かれた小さな祠があったので一息入れる。 飯豊本山が先ほどの地蔵岳の山頂からとは少し違った面持ちで望まれた。
切合小屋が前方に見えるようになると間もなく、種蒔山から流れ落ちる澄んだ小沢と登山道が交差し、冷たい水で喉を潤す。 小沢を渡るとすぐに三国岳方面からの主脈と合流し、1時前に切合小屋に着いた。 小屋の手前にあるホースからは水が出ていた。 昨今の登山ブームを反映するかのように、小屋の裏手には広いテント場が整備されていた。 小屋から見た大日岳にも全く雪は見られなかったので、担いできた軽アイゼンを小屋にデポした。 主脈上は少し風があって気持ち良い。 切合小屋からは“通い慣れた道”だ。 最近開削された『川入切合』という林道の終点から登ってきたという地元の単独の男性と相前後しながら、予定どおり3時過ぎに本山小屋(2102m)に着いた。 小屋にはまだ誰もおらず、二階の一番陽当たりの良いスペースに落ち着く。 水場は小屋の手前の水場の標識から2分ほど下った所にあり、この時期でも涸れることなく鉄パイプから出ていた。 水場付近で初めて初雪の名残が見られた。 小屋でラーメンを食べて寛いでいると、弥平四郎から登ってきたという女性の3人パーティーと先ほどの男性が相次いで到着したが、結局小屋に泊まったのはこのメンバーだけだった。
夕方近くになったので、指呼の間の山頂に夕焼けショーを見に行く。 あいにく風が急に強くなってしまい、山頂には30分ほどしかいられなかったが、5時ちょうどに日本海に浮かぶ雲に沈む太陽を見送った。
翌朝は4時半前に小屋を出発し、大日岳へと向かう。 満天の星空で天気は良いが、昨夜からの強い風が収まらず落ち着かない。 風が一段と強い本山の山頂は写真だけ撮って早々に通過し、御西岳方面の縦走路に入る。 新月のため周囲は暗く、目標の大日岳のシルエットは見えない。 駒形山を過ぎてしばらくすると道は平らになり、とても歩き易くなった。 太平洋側から朝焼けが始まり、本山のシルエットが暗闇から浮かび上がってくる。 標識がなければ気が付かないような御西岳の山頂を過ぎるとようやく風は収まり、予定よりも少し早く5時半に御西小屋に着いた。 22年前に濃霧のため停滞を余儀なくされた懐かしい小屋は新しく建て替わっていた。 小屋にいた地元の方と雑談を交わすと、昨夜は飯豊山荘から大ー尾根を登った3人の方が小屋に泊まったようだ。
不要な荷物を小屋にデポし、眼前に鎮座する大日岳(2128m)へ向かう。 右手には北股岳も良く見えるようになった。 6時ちょうどに吾妻山からのご来光となり、モルゲンロートに染まる大日岳や牛首山が神々しい。 登るにつれて勾配は急になっていくが、足取りは軽く疲れは全く感じない。 御西小屋から1時間少々で待望の大日岳の山頂に着いた。 飯豊最高峰の山頂からの展望は申し分なく、新潟県下の山々や朝日連峰などが良く見えた。 大日岳へは13年ぶり2回目の登頂だが、今回も前回と同じ御西小屋からの往復で、未だ残雪期の蒜場山からの登頂や、オンベ松尾根から牛首山を経て登ることは叶っていない。
快晴の天気だが、あいにく山頂は先ほどよりもさらに風が強くなってしまったので、山頂直下の風の当たらない場所で朝食を食べながら寛ぐ。 意外にも予報にはなかった寒気が流れ込み、空は一瞬にして灰色の雲に覆われ、その天気の変わり方の速さに驚かされた。 明日は全国的に雨模様なので、予報よりも早く天気が下り坂に入ったと思われたが、御西小屋へ下り本山の山頂に戻ってくると再び嘘のように青空が広がり始め、その後は天気が安定し夕方まで快晴無風の天気が続いた。 本山の山頂では日帰りの若い方と出会ったが、その後も3〜4人のいずれも単独の男性とすれ違った。
9時半に本山小屋に戻り、荷物の整理をして10時過ぎに小屋を出発して下山する。 未明の寒さが嘘のように昨日以上に暖かくなり、まるで初秋のような陽気だ。 時間的には切合小屋から三国岳、牛ケ岩山、五段山などのピークを踏んで大日杉小屋へ下ることもできたが、往路と同じ地蔵岳経由の方が紅葉狩りを楽しめそうだったので、予定どおり登りと同じルートで下ることにした。 切合小屋から先ではもう誰とも出会うことはなかった。 昼過ぎになっても強い陽射しに恵まれ、地蔵岳からの下りでは10月の下旬としては申し分のない紅葉を愛でながら、3時半過ぎに大日杉小屋に着いた。 小屋は冬支度のため今日で供用を終了するようで、窓には板が被せられていた。