《 12日 》 本名御神楽 ・ 御神楽岳
霧来沢登山口 〜 御神楽避難小屋 〜 本名御神楽 〜 御神楽岳 (往復)
御神楽岳に登るのは14年前の10月以来で、奇しくも前回と同じ時期になった。 7時前に福島県側の霧来沢登山口を出発する。 ちょうど同じ時間帯に2台の車が相次いで登山口に着いた。 地元ナンバーの車の方と雑談を交わすと、会津朝日岳が登山禁止になっていることはご存じで、震災の影響による人出不足で復旧工事が遅れているとのことだった。
登山口から杉林の中を歩き始めると間もなく八乙女の滝が見え、その先は緩やかなナメ状の霧来沢の左岸を絡めながら勾配のない道を1時間ほど歩く。 この辺りの標高はまだ600mほどだが、30mを超えるようなブナや棒葉の大木が多い。 天気予報では今日は良い天気とのことだったが、只見地方特有の朝霧が陽射しを遮っていてヤキモキする。 登山道が沢から離れるようになると、それまでと一変して急坂の尾根を登るようになった。 周囲にはまだ紅葉していない青々としたブナの木も見られたが、急坂の尾根を登るにつれて木々が色づき始め、足取りも軽くなった。 8時過ぎにようやく雲海から抜け出し、陽が当たるようになってきた。 尾根は次第に痩せて顕著になり、左手の樹間からは前ケ岳(1145m)の荒々しい岩壁が望まれた。 急坂の尾根をなおも登り続けると、尾根が左に屈曲する杉山ケ崎(948m)に着き、そこから先では紅葉が見頃になった。 天気は予報以上の快晴となり、上空には雲一つない澄みきった青空が広がっていた。 間もなく前方に屏風のように屹立する本名御神楽(1256m)の全容が望まれ、1200m台の低山とは思えないほどの迫力を感じた。 周囲の木々の背は次第に低くなり、展望の良い尾根道は気分爽快だ。
『熊打場』という標識の先から鎖の付いた岩場を登り、再び背丈の高い樹林帯の中に入ると間もなく御神楽避難小屋に着いた。 ちょうど下山してきた方と小屋の前で雑談すると、昨夜は小屋に泊まったが貸し切りだったとのことだった。 避難小屋から15分ほどで誰もいない静かな本名御神楽の山頂に着いた。 幸か不幸か、山頂の記憶は全く無かったが、山頂からの展望は素晴らしく、眼前には御神楽岳(1386m)が大きく鎮座し、飯豊や吾妻、磐梯、那須、日光、会津、越後の山々が一望された。 前回下山に使ったルートは廃道となってしまったらしく、ロープが張られていた。
御神楽岳の山肌の紅葉もまずまずで、歩きながら写真を撮るのに時間が掛かる。 山頂から東に延びるつばくろ尾根に乗ると、今度は湯沢ノ頭(1184m)の絶壁が見られ、その日本離れした景観に思わず歓声を上げる。 ようやく14年前の記憶が蘇ってきた。 10時半に御神楽岳の山頂に着くと、新潟方面の登山口から登ってきた数名の方が山頂からの大展望を楽しんでいた。 方位盤の置かれた御神楽岳の山頂からの展望は本名御神楽よりもより一段と素晴らしく、遠く佐渡島まで見渡すことが出来た。 山頂の向こう側の雨乞峰付近の紅葉が素晴らしかったので、一息入れてからそこまで足を延ばした。
山頂に戻り、大展望を肴に1時間近く寛いでから重い腰をあげて下山する。 快晴無風の天気は続き、下りでは誰とも出会うことなく紅葉狩りを堪能した。 当初計画した会津朝日岳には登れなかったが、図らずも三連休の中日に静かな山行が楽しめた。