《 13日 〜 15日 》 笠ケ岳 ・ 双六岳 ・ 鷲羽岳
中尾高原口 〜 笠ケ岳 〜 笠ケ岳山荘(テント泊) 〜 抜戸岳 〜 弓折岳 〜 双六小屋 〜 双六岳 〜 三俣蓮華岳 〜 三俣山荘(テント泊) 〜 鷲羽岳 〜 三俣山荘 〜 双六小屋 〜 鏡平山荘 〜 新穂高温泉 ⇒ 中尾高原口 (周回)
秋の最初の三連休はどこへ行っても混雑は必至だが、しばらく天気の悪い週末が続いたので、なおさら混雑は酷いだろう。 天気予報では北アルプスの南部辺りが一番良さそうだったので、初日はその中でも一番マイナーな中尾高原口からクリヤ谷のルートで笠ケ岳に登り、笠ケ岳山荘の幕場に泊ることにした。 二日目は双六小屋を経由して三俣山荘の幕場に泊り、三日目に鷲羽岳を往復して鏡平山荘経由で新穂高温泉に下る予定だ。
長野道の梓川SAに前泊し、翌朝6時半前に中尾高原口の登山口(950m)を出発する。 30台ほど停められる登山口付近の駐車場はすでに満車で、その手前のトンネルの脇の側道に長い駐車の列が出来ていたが、その殆どが新穂高温泉から双六や槍・穂高に向かう登山者で、目論見どおりクリヤ谷のルートを登る人は少なかった。 このルートで笠ケ岳を登るのは12年ぶり2回目で、前回は双六小屋に泊まり、翌日は西鎌尾根から槍ケ岳を登って中尾高原口へ周回するという行程だった。
槍見温泉の脇から鬱蒼とした緑濃い登山道に入る。 しばらくやや急な斜面を登り、クリヤ谷の沢を飛石伝いに4回ほど渡ったが、いずれも水量は少なく靴を濡らすことはなかった。 12年前の記憶は不思議と全く無かった。 私達の前後には2〜3パーティーがほぼ同じようなペースで登っていたが、意外にも皆テント泊の装備だった。 登り始めは秋らしい爽やかな天気で、錫杖岳の岩峰群や逆光ながら槍や穂高が良く見えていたが、標高1950m付近の最後の水場を過ぎ、クリヤノ頭(2440m)を巻いた辺りから霧が湧き始め、周囲の展望を閉ざしてしまった。
ルート上の数少ない目印となる雷鳥岩を過ぎると登山道は一旦少し下りとなった。 森林限界は越えたものの、相変わらず霧が濃くて展望が得られない。 休憩時間も短くなり、ただ黙々と登り続ける。 笠ケ岳の山頂が近づいてきた所でようやく霧が少し薄くなり、山頂だけが朧げに見えた。 意外にも山頂直下には平らな大小の岩屑が堆積し、山頂まで途切れることなく続いていた。
途中から展望を楽しむことが出来なくなったので、幸か不幸か予定よりも早く2時前に笠ケ岳の山頂に着いた。 上空に青空は見え隠れしているものの、依然として期待していた大展望は得られず、写真だけ撮って幕場に下る。 幕場は笠ケ岳山荘よりもさらに下にあり、私達が到着した時には30張ほどのテントの花が咲いていたが、山小屋から離れた下の方のほど新しく整地された感じで状態が良かった。 山頂から下の幕場までの標高差は150mちょうどだった。 幕営料は@800円で、水は山小屋から無料で貰えた。
夕方になって少し天気が回復してきたので山頂に足を運んだが、霧は晴れることなく大展望や夕焼けショーは叶わなかった。 最終的にはテントの数は50張ほどとなったが、極端に窮屈という感じはしなかった。
翌朝は5時に幕場を出発。 放射冷却でテントの外張りに霜がびっしり付いていた。 朝焼けの始まった槍・穂の稜線のシルエットがとても美しい。 大半の人は笠ケ岳の山頂へご来光を見に行ったようで、抜戸岳方面への縦走路を歩いている人は少ない。 2年前の残雪期に辿った雪稜とは全く違う登山道の雰囲気が新鮮だ。 振り返れば朝陽を浴びて輝き始めた笠ケ岳が美しい。 6時前にようやく槍・穂の稜線からの力強いご来光となった。 縦走路の最初のピークの抜戸岳は9年前にスキーで登って以来の登頂だ。 山頂からは笠ケ岳はもちろん、黒部五郎岳と薬師岳の眺めが良い。 秩父岩は左から巻き、カールの底の秩父平へ下る。 秩父平付近の景観はヨーロッパアルプスを想い出させるようでユニークだった。 午後の天気に恵まれなかった昨日と違い、快晴の天気となった今朝は立ち止まってばかりで足が前に進まない。 秩父平を過ぎると双六方面からの縦走者と頻繁に出合うようになり、大ノマ岳と弓折岳の間でピークに達した。 弓折岳の山頂からは眼前の双六岳はもちろん、鷲羽岳もだいぶ近づいてきた。 鏡平を眼下に見下ろす弓折乗越の先では槍ケ岳も僅かに順光で見られるようになってきた。
展望を愛でながらゆっくり歩いてきたので、大勢の登山者で賑わう双六小屋には10時半過ぎに着いた。 昨日の双六小屋の宿泊者は300人ほどだったという情報を小耳にはさんだ。 小屋の前のベンチで昼食を食べながら休憩していると、昨日の午後と同じように霧が湧き始めてしまったが、予定どおり稜線ルートで双六岳へ向かう。 巻道ルートとの分岐までの間で双六小屋をベースに鷲羽岳を往復してきた人達と頻繁にすれ違った。 午後の槍ケ岳の展望に秀でる双六岳の山頂は残念ながら霧の中だった。 天気の回復を祈りながら今日の最後のピークとなる三俣蓮華岳へ霧の中を縦走する。 三俣蓮華岳で霧が晴れるのを少し待ってみたが、天気が良くなる兆しが無かったので三俣山荘へ下る。
2時半に三俣山荘の手前にある幕場に着くと、昨日の笠ケ岳山荘の幕場以上にテントの花が咲いていたが、幕場は広くまだ空いているスペースが結構あった。 笠ケ岳山荘と同様に幕営料は@800円で、水は山小屋から無料で貰えた。 天気は次第に回復してきたが、連休最終日の明日の天気が一番良いという予報だったので鷲羽岳へは登らず、山荘付近を散策して夕焼けショーを楽しんだ。
夜半から吹き始めた風が収まるのを待ち、4時半に幕場を出発して鷲羽岳を往復する。 入山前の予報とは違い、月は半分雲に隠されていた。 朝焼けやご来光も危ぶまれたが、登りながら朝焼けショーが始まり、山頂直下で燕岳方面からのご来光を拝むことが出来た。 5時半過ぎに山頂に着くと、数名のご来光目的の人は下ってしまったので図らずも山頂は静かになった。 鷲羽岳には5年前の残雪期に登っているが、妻はもう久しく登っていなかった。 昨日とは違う高曇りの天気で、順光となる黒部五郎岳や双六方面の山々の展望は冴えなかったが、今日のハイライトはこの山をおいて他にないので、山頂に30分ほど滞在してから三俣山荘に下った。
7時半前に三俣山荘の幕場に戻ると、意外にも周囲にテントは殆ど無く、皆すでに各方面に出発した後だった。 テントを撤収していると、県警のヘリが小屋の前のヘリポートに着陸し、急病人か怪我人を搬送していった。 8時に幕場を出発。 図らずも昨日までとは違って周囲の人影が薄くなり、普段の週末くらいの雰囲気となった。 昨日展望が得られなかった三俣蓮華岳から双六岳の間の稜線ルートを再度歩こうと思ったが、変わり易い天気になってしまったので、巻道ルートを辿って双六小屋に向かうことにした。 意外にも巻道ルートからの山々の展望はとても雄大で、花の時期や紅葉の時期に再訪したいと願わずにはいられなかった。
10時に双六小屋に着くと、ここも昨日とは違ってとても静かだった。 ベンチでゆっくり休憩してから先に進む。 残念ながら天気は回復せず、槍や穂高の展望は昨日と比べて全く冴えない。 前後を歩く人はさらに疎らになり、昨日までの喧噪が嘘のようだ。 弓折乗越から小池新道を下って鏡平を通るのは15年ぶりだ。 鏡平山荘のベンチでコーヒーを沸かして飲む。 鏡平から新穂高温泉に下る途中の秩父沢付近の登山道は以前と比べてとても良くなった感じがした。
左俣林道に降り立ってからは、1時間に1本ある路線バスの発車時間に合わせて歩く。 新穂高ロープウェイのバス停を3時55分に発つ高山行の路線バスに乗り、車を停めた中尾高原口で降りた。