2  0  1  4  年     3  月  

《 29日 》    平標山  <スキー>

平標山登山口 〜 平標山 〜 西ゼン 〜 毛渡橋  (縦走)

   残雪期の平標山は人気があって近寄りがたいが、以前から沢登りの名ルートとしても知られている西ゼンノ沢(西ゼン)を滑ってみたいという漠然とした思いがあった。 無積期には滝になっている狭隘部を除けば、ルーファンもあまり気にせず、山頂直下の広大な緩斜面から手軽に1000m以上の標高差を滑れるのは魅力だ。 

   縦走ルートなので前夜にゴールの毛渡橋付近に車を回収するための自転車を1台デポし、国道17号沿いに新しく出来た道の駅『みつまた』に前泊する。 翌朝平標山登山口の駐車場に向かうと、駐車場にはすでに10数台の車が並んでいた。 駐車場から10分ほど除雪された別荘地の車道を歩き、7時前にスキーを履いて別荘地の奥の林道に入ると、ちょうど樹間からのご来光となった。 スキーでここを辿るのは今回でもう5回目だ。 前回まではいずれも林道を1時間歩いて登山道(平元新道)を登っていたが、今日はスキーのシュプールを追ってヤカイ沢を登ることにした。 最初の橋を渡ってすぐに林道から外れて広いヤカイ沢の末端に入る。 しばらく雑木の密集した緩やかな斜面を登っていくと木々も疎らになり、右手にヤカイ沢のメインルートを登っているスキーヤーやボーダーの姿が見えた。 メインルートに合流すると、前後にスキーヤーやボーダーの姿が点々と見られ、ルーファンをする必要が無くなった。 スキーを履くのは1年ぶりなので、意識的にペースを落とし、休憩を長めにとって登る。 天気は予報どおりまずまずで、苗場のスキー場とその奥に白砂山、そして苗場山など見慣れた山々が見えた。 

   1600m付近のブナ林からは傾斜が急になり、迷わずアイゼンを着けてスキーを担ぐ。 ブナ林を抜けると視界が一気に開け、平元新道との合流点が近くなる。 傾斜が緩みシールでも登れるようになったが、面倒臭いのでスキーを担いだまま登り続ける。 風もなく春本番のように暖かいが、時々軟雪に足を取られる。 平元新道と合わさると傾斜はさらに緩んだので、一息入れながら再びスキーを履く。 意外にも平標山や仙ノ倉山の山頂付近の積雪は少なく、所々に雪の禿げた部分が見られた。 

   終始意識的にゆっくり登ったが、トレースに助けられ、予定よりも早く10時半過ぎにスキーヤーやボーダーで賑わう平標山の山頂に着いた。 360度の展望が得られる山頂からの展望は申し分ないが、まずは西ゼンの源頭部を覗き込む。 山頂直下には藪が少し出始めていたが、天気の良かった昨日のものと思われるシュプールが何本か見えた。 ドロップポイントを決め、腹ごしらえをしながら滑走の準備を始めると、登山口から相前後して登ってきた7人の山岳会のパーティーが先に滑っていった。 殆どのスキーヤーやボーダーは往復ルートでヤカイ沢を滑るので、縦走ルートの西ゼンを滑ったのは私達とこのパーティーだけだったようだ。

 

スキーを履いて別荘地の奥の林道に入ると、ちょうど樹間からのご来光となった


林道から外れてヤカイ沢に入る


雑木の密集した緩やかな斜面を登っていくと木々も疎らになった


ヤカイ沢のメインルートでは前後にスキーヤーやボーダーの姿が点々と見られた


ヤカイ沢から見た苗場山(右)


1600m付近のブナ林からは傾斜が急になり、迷わずアイゼンを着けてスキーを担ぐ


ブナ林を抜けると視界が一気に開けた


平元新道が近くなると傾斜が緩んだが、スキーを担いだまま登り続ける


平元新道からの稜線に上がる


平標山の山頂直下


スキーヤーやボーダーで賑わう平標山の山頂


平標山の山頂


山頂から見た西ゼンノ沢の源頭(背景は日白山)


山頂から見た仙ノ倉山


山頂から見た苗場山


山頂から見たヤカイ沢(背景は苗場スキー場)


   11時半前に山岳会のパーティーの姿が見えなくなってから滑り始める。 1年ぶりのスキーなので何となく動きがぎこちない。 山頂直下の藪を避けて平標新道への尾根を少し滑ってから右に大きくターンして沢の源頭の広い緩斜面に入る。 ザラメとなった雪の状態はとても良く、思わず万歳をしたくなるような極楽の滑りが楽しめた。 山頂から標高差で200mほど緩斜面を下ると、地形は沢らしくなってきたが、良い雪の状態はなおも続いた。 下るにつれて沢は細くなり傾斜も増したが、依然として快適に滑れたので、核心部の滝の部分も全く問題なくクリアー出来るのではないかとさえ思えた。

   滝の上部にさしかかると、眼下に山岳会のパーティーの姿が見えたが、動きがとても遅かったので、雪の状態が悪いことが想像できた。 滝の前後は急斜面で幅も非常に狭いため、スキーを横滑りさせながら慎重に下っていくと、滝が雪を割って少し出ているのが見えた。 滝の近くは非常に危険なので、左方向の藪に向きを変えて滝を回避しようと思ったところ、湿雪でスキーが曲がらず、こともあろうに一番危ない滝の真上で転倒し、そのまま滝に向かって背中から滑り始めてしまった。 運が悪かったのか良かったのか、急斜面で勢いがついていたので、滝に落ちることなく幅1mほどのシュルントを滑落しながら飛び越え、その下の崩れた雪の上にスキーが刺さって奇跡的に無傷で止まった。 谷底まで滑落しないように落ち着いて体勢を立て直し、足元の雪が崩れないようにゆっくりトラバースして滝から離れたが、正に九死に一生を得た感じだった。 

   滝から下では再び沢の幅が広くなり傾斜もやや緩んだが、それまでと一変して雪が重くなり、スキーが刺さらないよう慎重に滑る。 デブリも次第に多くなり、残念ながら今回はベストの状態から一週間ほど遅かったようだ。 修行のような滑りで谷底に下っていくと、ここ数日の新しい大規模なデブリが沢を埋め、まともに滑ることが出来なくなり、先行していた山岳会のパーティーに追いついた。 デブリ地獄を回避するため、左岸を高巻きながら斜滑降していくが、足元の雪が表層雪崩となり、山岳会のパーティーがいる沢床に次々と落ちていく始末だ。   デブリ地獄を過ぎると、明るく開けた沢の末端で休憩に入った山岳会のパーティーを追い越して先に進む。 傾斜は緩いがスキーを漕ぐほどではなく、意外と快適な消化試合となった。 雪に埋もれた沢の左岸をキープしながらシュプールを辿っていくと、まだ半分雪に埋もれた群大ヒュッテに着いた。 群大ヒュッテから先では毛渡沢からのシュプールが合流し、“通い慣れた道”となった。 再び山岳会のパーティーと抜きつ抜かれつしながらゴールの毛渡橋を目指す。 毛渡橋への林道が除雪されていなかったことが幸いし、スキーを履いたまま予定よりも早く2時前に毛渡橋に着いた。 意外にも毛渡橋付近には車が10台ほど停まっていた。 

   少し離れた場所にデポした自転車を取りにいっている間に、後から滑ってきた男性二人のパーティーから、平標山登山口までタクシーで行きませんかというお誘いがあったので、ありがたく同乗させてもらうことにした。 お二人は仙ノ倉山からシッケイ沢を滑り、少し登り返してイイ沢を滑ってきたという猛者で、昨日西ゼンを滑った人からの情報でデブリが酷いことが分かったので、急遽予定を変更したとのことだった。 車中で山スキーの情報交換をしていると、あっという間に平標山登山口に着いた。 タクシー料金は8000円だった。 3時前に平標山登山口の駐車場に戻れたので、春休みの関越道の渋滞に巻き込まれずに済んだ。


山頂直下の藪を避けて平標新道への尾根を少し滑る


西ゼンの源頭から見た巻機山


西ゼンの源頭から見た平標山の山頂


沢の源頭の広い緩斜面の雪の状態はとても良かった


地形は沢らしくなってきたが、良い雪の状態はなおも続いた


下るにつれて沢は細くなり傾斜も増したが、依然として快適に滑れた


滝の前後は急斜面で幅も非常に狭かった


幅1mほどのシュルントの上を滑落しながら飛び越えた


足元の雪が崩れないようにゆっくりトラバースして滝から離れた


滝から下ではそれまでと一変して雪が重くなった


沢の中間部からはデブリが次第に多くなった


新しい大規模なデブリが沢を埋め、まともに滑ることが出来なくなった


デブリ地帯から見た沢の中間部


デブリ地帯から見た沢の末端


明るく開けた西ゼンの末端


仙ノ倉谷の傾斜は緩いが、スキーを漕ぐほどではなかった


雪に埋もれた沢の左岸をキープしながらシュプールを辿る


半分雪に埋もれた群大ヒュッテ


群大ヒュッテから見た万太郎山


群大ヒュッテから毛渡橋へは“通い慣れた道”となる


毛渡橋への林道は除雪されていなかった


スキーを履いたまま毛渡橋まで滑れた


平標山登山口までタクシーに同乗させていただく


2 0 1 4 年    ・    山 行 の 報 告    ・    T O P