2  0  1  4  年     3  月  

《 22日 〜 23日 》    三角点ピーク ・ 角兵衛沢ノ頭

釜無川ゲート 〜 林道終点 〜 富士川の水源 〜 横岳峠 〜 三角点ピーク 〜 角兵衛沢ノ頭  (往復)

   4年前の秋に山仲間のkana−catさんと釜無川ルートで鋸岳(第一高点)に登った時に、登山口の砂防工事用の林道の通行止めのゲートから、林道の終点までの長さ(9キロ)を体感し、今後もしこのルートを辿ることがあるとすれば、入笠山から釜無山、白岩岳を縦走して横岳峠から下山する時しかないと思っていた。 ようやく春の陽射しとなり、今シーズン初めての泊まりの山行は3連休の喧噪を避けることを念頭に計画した結果、再び前回と同じルートで鋸岳(第一高点)に登ることに落ち着いた。 この時期の鋸岳なら、戸台から角兵衛沢や熊ノ穴沢を経由して登るのが一般的で、地味な釜無川ルートを登る人はいないだろう。 

   道の駅『蔦木宿』に前泊し、翌朝通行止めの林道のゲートの手前の広い路肩に車を停めて8時前に出発。 連休の中日のこの時間で他に車は無かったので、予想どおり入山者はいない。 ゲートから林道の終点にある飯場用の小屋まで、距離は9キロ、標高差は600mほどある。 釜無川の河原はまるで雪国の川のように一面真っ白だったが、ありがたいことに釜無川の左岸の林道は除雪されていた。 林道にはゲートから500mおきに標識があり、それを目安にして進む。 林道上や路肩には、大雪で命を落とした鹿(カモシカも1頭あり)の死骸が何頭も見られ、少し異様な光景だった。 

   ゲートから4.5キロほどの所にある工事現場で除雪は終わり、その先の林道は50センチほどの雪で覆われていた。 雪面には一週間ほど前に単独者が往復したトレースが唯一あった。 昨日の強風の影響か、林道の雪は良く締まっていたので、アプローチ用のスノーシューは履かずに歩く。 7.5キロの標識の先で雪崩が林道を塞いでいた。 トレースの主はここで引き返したようで、その先でトレースは消えていた。 雪の状態がとても良かったので、予想よりも早くゲートから3時間半ほどで林道の終点にある赤い屋根の飯場用の小屋に着いた。 愚かにも、最後に休憩した場所にフリースの上着を忘れてしまったが、取りに戻る気力はなかった。

   小屋のテラスで一息入れ、正午に今日の幕営地の横岳峠に向けて出発する。 標高2000mほどの横岳峠へは、ここから標高差で500mほどだ。 小屋の周囲も依然として雪は良く締まっていたので、スノーシューはデポし、ワカンを一つだけ持っていくことにした。 小屋から先は水流の細くなった釜無川の河原を歩くが、雪で埋もれた河原は飛び石伝いの渡渉が一度しかなく、無雪期よりも歩き易いくらいだった。 沢の上流で水を汲み、傾斜が少し急になってきた所でアイゼンを着ける。 横岳峠までの唯一の目印となる『富士川の水源』と記された道標まではテープ類もそこそこあり、予想していたよりもスムースに登れた。 

   富士川の水源からは傾斜が一段と急になり、鬱蒼とした樹林帯の中の単調な登りが続く。 テープ類は意外と多く、ルーファンで困ることは無かったが、途中から積雪が増えて膝上まで潜るようになったばかりか、雪で潰された雑木の枝が藪と化し、登高が捗らなくなった。 身軽な妻に先行してもらい、だましだまし登っていくと、ダケカンバの疎林となった所から再び雪が締まってきた。 植生の違いが雪の締まり具合に影響することを学んだ。 

   予定よりも少し早く、2時半過ぎに人待ち顔の横岳峠に着いた。 雪を均してテントを設営し、明日のルートの下見とトレースを付けに行く。 峠からは再び鬱蒼とした樹林帯の中の単調な登りとなり、高度計の標高差で130mほど登った木々が僅かに切れている所までトレースを付けた。 午後に入り気温も高くなっているが、膝下の軽いラッセルでそれほど負荷を感じることなく登れた。 テープ類もそこそこあり、明るくなればルーファンは問題ないように思えた。 私達の後から峠に登ってくる人はなく、幕場は3連休の喧噪とは無縁だった。


通行止めの林道のゲート


釜無川の河原はまるで雪国の川のように一面真っ白だった


ゲートから4.5キロほどの所にある工事現場で除雪は終わっていた


林道は50センチほどの雪で覆われていた


林道の雪は良く締まっていたので、スノーシューは履かずに歩く


ゲートから8キロほどの所から見た八ケ岳


林道の終点にある赤い屋根の飯場用の小屋


雪で埋もれた河原は無雪期よりも歩き易かった(帰路の撮影)


傾斜が少し急になってきた所でアイゼンを着ける


横岳峠までの唯一の目印となる『富士川の水源』と記された道標


富士川の水源からは傾斜が一段と急になり、鬱蒼とした樹林帯の中の単調な登りが続いた


積雪が増えて膝上まで潜るようになったので、身軽な妻に先行してもらう


人待ち顔の横岳峠


幕場とした横岳峠は3連休の喧噪とは無縁だった


横岳峠から明日のルートの下見とトレースを付けに行く


トレースの終了点から見た仙丈ケ岳(右奥)と北岳(左)


   風のない穏やかな一夜を過ごし、アイゼンを着けて5時過ぎに出発する。 相変わらず風がなくてありがたい。 最初のピークの三角点ピーク(2606m)には8時、目標の第一高点(2685m)には10時に着く予定だ。 昨日のトレースの終了点まで登ると周囲が明るくなり、ヘッドランプなしでも登れるようになったが、気温や降雪量とは関係なしに雪が柔らかく、イメージどおりの快適な登高は出来なかった。 膝下のラッセルで急斜面を直登気味に登るが、30分ほどでワカンに履き替えることにした。 ワカンを履いても軟雪の急斜面では登高スピードはあまり上がらない。 焦っても仕方が無いが、結果的に昨日の下見が仇になり、出発時間を見誤ったことが悔やまれる。 

   8時過ぎにようやく樹間からのご来光となり、間もなく鬱蒼とした樹林帯を抜けて三角点ピーク直下の展望が利く場所に出た。 眼前には無雪期よりも一段と荒々しい第一高点の頂が天を突くように聳え、その姿は威圧的にすら感じられた。 ようやく雪が締まってきたので、ワカンを外してアイゼンを着ける。 三角点ピークの頂稜部は積雪が非常に多く、山頂を覆っている雑木は全て雪で埋もれ、無雪期とはまるで違う様相を呈していた。 指呼の間となった第一高点の山頂に人影が見えた。

   予定よりもだいぶ遅れ、9時前にようやく三角点ピークの山頂に着いた。 鋸岳の前衛峰の地味な頂は、大雪に見舞われた今シーズンの山梨県の山を象徴するかのように、360度の展望が得られる純白の展望台となっていた。 ユニークな景観の三角点ピークにいつまでも佇んでいたい気分だったが、すでに1時間ほど予定よりも遅れているので、写真を数枚撮っただけで休まずに第一高点に向かう。 

   急斜面の痩せた稜線を慎重に下り、雪庇や岩がミックスした小さなアップダウンが連続する変化のある稜線を辿っていく。 高度感や展望は申し分ない。 予想よりも少し早く、1時間足らずで第一高点を間近に仰ぎ見る角兵衛沢の頭に着いた。 眼下の角兵衛沢は雪で綺麗に埋まっていたが、落石や雪崩の程度はここからでは全く推測出来なかった。 時間はすでに第一高点へ着く予定の10時近くになっていたので、登るか引き返すかの判断に迫られた。 角兵衛沢のコルから山頂へのルートを観察すると、意外にも急斜面にトレースが印されているのが見えたが、支点に使える立木が雪に埋もれて乏しく、登りはともかく気温の上昇で雪がさらに緩む下りではロープを使っても100%安全に下れるか不安を感じた。 しばらく進退について悩んだが、時間を気にしながら不安要素を抱えて先に進むのは嫌なので、無理をせずここを最終到達点とすることにした。

   第一高点まで行かなくなったことで逆に時間に余裕が出来たので、角兵衛沢の頭からそれまでおろそかになっていた周囲の山々の展望をのんびりと満喫する。 風が少し出てきたので、10時過ぎに重い腰を上げて三角点ピークに戻る。 三角点ピークでも最後の展望を充分満喫して横岳峠に下る。 もう二度とこのユニークな山頂の景観を見ることは出来ないだろう。 目標の第一高点には届かなかったが、それほど悔いが残らないほど三角点ピークの印象は良かった。

   登りではラッセルに苦労した三角点ピークからの下りは早く、12時半過ぎに横岳峠の幕場に着いた。 テントを撤収し、1時半に横岳峠を発って林道の終点へ下る。 林道の雪は昨日と同じように良く締まっていたので助かった。 林道の終点から3時間弱歩き、5時半過ぎにようやく通行止めの林道のゲートに着いた。


アイゼンを着けて5時過ぎに横岳峠の幕場を出発


トレースの終了点付近から見た北岳


三角点ピークへの登りは雪が柔らかく、イメージどおりの快適な登高は出来なかった


樹間から見た中央アルプス


8時過ぎにようやく樹間からのご来光となった


鬱蒼とした樹林帯を抜けた三角点ピークの山頂直下


三角点ピークの山頂直下を登る


地味な三角点ピークの山頂は360度の展望が得られる純白の展望台となっていた


三角点ピークの山頂付近から見た第一高点


急斜面の痩せた稜線を慎重に下る


雪庇や岩がミックスした小さなアップダウンが連続する変化のある稜線を辿る


角兵衛沢の頭への登り


角兵衛沢の頭の手前から見た三角点ピーク


角兵衛沢の頭から見た第一高点


角兵衛沢の頭から見た角兵衛沢のコル


角兵衛沢の頭から見た仙丈ケ岳


角兵衛沢の頭から見た八ケ岳


角兵衛沢の頭から往路を戻る    中央アルプスと御嶽山(右端)


細長い三角点ピークの山頂


三角点ピークから見た第一高点と甲斐駒ケ岳(中央左奥)


三角点ピークから見た北岳 ・ 間ノ岳 ・ 仙丈ケ岳(左から)


三角点ピークから見た白岩岳(中央手前)と北アルプス(遠景)


三角点ピークから横岳峠へ下る


横岳峠から林道の終点へ下る


釜無川の上流での唯一の渡渉ポイント


林道の雪は昨日と同じように良く締まっていた


2 0 1 4 年    ・    山 行 の 報 告    ・    T O P